将棋の藤井聡太竜王は、将棋にPC(以下、パソコン)を活用していることで知られています。将棋研究に有利な、コア数の多いAMD製CPUを使ったハイエンドパソコンを自分でパーツを選んで組み立てていることから、日本AMDのブランド広告にも出演、さらに先日は同社から最新のハイエンドパソコンが贈られました。
このパソコンはどのような性能があるのか、将棋ソフトとパソコンの関係も含めて解説します。
藤井竜王とパソコン
藤井竜王は以前からインタビューなどで、将棋にパソコンを活用していると語っています。
2017年の記事(朝日新聞デジタル)で、2016年に千田翔太六段(当時)から勧められて使い始めたことが語られています。2019年のインタビュー(ライブドアニュース)では2017年にパソコンを新しくする際に、局面の計算に有利なCPUのコア数が多く、マルチスレッド性能の高い8コア16スレッドのAMD Ryzen(Ryzen 7 1800X)を選んだことが語られています。
さらに2020年のインタビュー(西日本新聞)では、64コア128スレッドのAMDのZen 2アーキテクチャを使ったRyzen Threadripper 3990X、メモリ256GBのパソコンを自作したことを明らかにしています。
これらの内容からは、パソコンを自作していることはもちろんですが、CPU自体の性能、今後の製品の発売予定のロードマップまでもしっかり理解した上で、CPUを選んでいることが分かります。藤井竜王は、パソコンについてもかなり研究し、将棋に活用していることが推測されます。
なぜ藤井竜王はAMDのCPUを選んだのか
CPUといえばインテルの方が有名だと思っている人も多いと思いますが、なぜAMDなのでしょうか。
2017年のAMD Ryzen発売時点で、当時の第7世代インテルCore i7プロセッサーは4コア8スレッドが最大でした。2023年に出荷予定のデータセンター向けのXeon Max(Sapphire Rapids)でも56コア、Xeon W-3375が38コアなど、AMD Ryzen Threadripperに比べるとインテル製CPUはコア数が少ないのです。
普通の用途では、ここまでコア数の多いCPUは使い道がないですが、将棋の局面計算などの特殊な用途では非常に有用になるため、藤井竜王はAMD製品の愛用者となっています。
一般的なパソコンの将棋ソフトでは、1秒当たり数百万や数千万手先まで計算できます。将棋では形勢判断が重要で、一般的に1秒当たりに計算できる数が多ければ多いほど、さまざまな局面に向けた研究ができるようになります。
単純計算すると、例えば1手で100通りあった場合、2手先で1万、4手先で1億、6手先で1兆パターンの指し方があります。1秒間に100万回の計算ができる場合、3手先までの最適なパターンの計算は1秒ですが、4手先を読むのには100秒かかり、5手先はその100倍の1万秒(2.8時間)かかります。
これが1秒間に1000万回計算ができれば、4手先の計算が10秒、5手先が1000秒(17分)になり、より先の有利な手が、現実的な時間内に計算できるようになります。
将棋ソフトは、一般の将棋ファン相手では、数手先まで読まれたら勝ち目がないくらい強いですが、パソコンを活用しているプロ棋士は、さらに先までの指し手を活用して日々研究しているようです。
そのためには、ソフトウェアも重要になりますが、計算が速く、より多くの局面を短時間で読める、高性能パソコンを選ぶのが最善の手になるわけです。