政府が2022年6月7日に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」の「資産所得倍増プラン」では、「つみたてNISA」の活用が前提になってきそうです。
そこで気になるのは、年齢制限。現在つみたてNISAが使えるのは20歳以上なのです。子どもはどうすれば良い?と思ってしまいますよね。資産運用や経済に詳しいセゾン投信の中野晴啓会長に話を伺いました。
Q:2023年に制度終了の「ジュニアNISA」。それ以降子どもはどうすれば良いのでしょう?
川崎さちえ(以下、川崎):岸田総理が掲げる「資産所得倍増プラン」は当然未成年者も対象になるはずですが、ジュニアNISAは2023年末で制度が終わってしまいます。ジュニアNISAに代わる制度はあるのでしょうか?
セゾン投信の中野晴啓会長(以下、中野会長):ジュニアNISAに代わる制度は、現在決まっていません。可能性としては、つみたてNISAの対象年齢を引き下げること。そうしないと、国民全員が参加できる資産所得倍増プランになりませんから。
ただ、2022年4月1日から成年年齢が18歳になりましたので、それに伴い2023年1月1日からは18歳になれば「つみたてNISA」に参加できます。今までは20歳以上が条件だったので、2年ほど早まりました。でも、例えば生まれたての赤ちゃんは18年間非課税制度を使えないことになってしまうので、やはりつみたてNISAの年齢制限の撤廃が一番の理想でしょう。
Q:現預金1000兆円が動くことの意味は?
川崎:岸田総理は国民が持っている金融資産2000兆円のうち、現預金1000兆円を動かしたいとのことですよね。資産所得倍増することとどう関係してくるのでしょう。
中野会長:現預金であれば減るリスクもないので安心と思いがちですが、そこから富が生まれるかというと疑問です。一方1000兆円が資産運用に回れば、そこでリターンを得る、つまり資産所得を得る可能性が高まります。
そもそも資産所得ではなく勤労所得を上げれば良いのでは?という話もありますが、日本の経済は20年以上成長していません。通常、経済が拡大しないと勤労所得は上がりません。それなら違う形で所得を上げようということで、「1000兆円ある現預金を動かして所得を増やしてもらおう」。これが政府の考えなのだと思います。
Q:資産所得を増やし、消費を増やし、経済の底上げを狙っている?
川崎:資産所得倍増プランを深堀していくと、経済の底上げなどがあって、ずいぶんと長いスパンで考えられていることのようですね。
中野会長:資産所得倍増は数年でできることではなく、結構な時間がかかります。でも僕たちは次の世代に向けて産業界の底上げをしなければなりません。そのために投資を使って国民が持っている1000兆円を動かしましょうということですから、この考え自体には僕は賛成です。
ただ資産所得が倍増になっても、それを再び現預金にしてしまったら意味がありません。再投資や消費に回るような仕組み作りも課題になるでしょう。資産所得倍増と掲げたからには、明確なビジョンを持って進めてほしいですね。
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岸田総理の「資産所得倍増プラン」について、セゾン投信の中野晴啓会長に話を伺いました。投資はリスクがあるので、やりたくない人もいるでしょう。でも、このプランをきっかけに自分や家族の資産形成を考えたのであれば、まずは始めてみると良いのではないでしょうか。
日本経済の底上げという大きな命題はありそうですが、もっと小さな目的でも良いですし、そもそもスタートは「自分のため」で良いのではないかと筆者は考えます。1人1人が始めることで、日本の未来は変わっていくのかもしれません。
【プロフィール】
中野 晴啓(なかの はるひろ)
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO
1987年、現在の株式会社クレディセゾンへ入社。株式会社クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信株式会社を設立、2007年4月代表取締役社長就任。2020年6月より現職。一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事、公益社団法人経済同友会幹事。現在、複数のファンドアワードを連続受賞している国際分散型長期投資ファンド2本と特化型運用の日本株ファンド1本を設定、運用、販売。顧客数約16万人、預かり資産額は5,000億円を超える。著書は『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい。』(ダイヤモンド社)、『今すぐできる! iDeCoとつみたてNISA超入門』(扶桑社)他多数。
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