岸田総理の「資産所得倍増プラン」で本当に資産は増える? 「つみたてNISA」の活用がメインか

政府が発表した「資産所得倍増プラン」で実際に資産は増えるのでしょうか。資産運用や経済に詳しいセゾン投信の中野晴啓会長に話を伺います。

資産所得倍増プランで、本当に資産は増えるのか?

政府が2022年6月7日に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」の中にある「資産所得倍増プラン」。実際に資産は増えるのかと疑問を感じるのは筆者だけではないはず。資産運用や経済に詳しいセゾン投信の中野晴啓会長に話を伺いました、
 

Q:いつまでに資産所得が倍増するのだろう

川崎さちえ(以下、川崎):岸田総理は「資産所得を倍増する」との方針ですが、実は「いつまでに倍増する」とは言っていないですよね? 国民としては「じゃ、いつまでに倍増するの?」と思ってしまいます。
 

セゾン投信の中野晴啓会長(以下、中野会長):確かに、岸田総理は「いつまでに」という期限を明確にはしていません。
 

ただ、数年で資産所得が倍増するかというと、それは非常に考えにくいです。例えば「つみたてNISA」を使って20年、30年かけてしっかり資産形成をしていくことで資産が増えていきますと説明してほしいですね。
 

Q:「つみたてNISA」の活用がメインになってくる?

川崎:資産所得を倍増させるためには、非課税制度を使うのが妥当な方法だと思います。数年で資産所得の倍増が難しい以上、非課税期間が5年のNISAでは対応できなくなりますよね?
 

中野会長:現在のNISAは非課税期間が5年なので、資産所得が倍増するのは難しいかもしれません。となると非課税期間20年の「つみたてNISA」なのだろうなと思います。ただ、つみたてNISAも現行で投資できる期限が2042年まで、各年の非課税で運用できる期間は20年と決まっています。
 

例えば2018年に20歳で始めた人は、44歳まではつみたてNISAを使えますが、そこで投資ができる期限がきてしまうのです。この年齢でつみたてNISAに投資する機会がなくなってしまうのは、実に惜しいですよ。
 

でも、これに関しては、期限がなくなるのでは? という期待もあります。NISAはイギリスの「ISA」をモデルにしていますが、ISAは1999年の導入時から非課税期間は無制限で、2008年には口座開設期間も恒久化され、その後も限度額の引き上げなど改善がなされています。NISAもこの流れを受けて、非課税期間を無制限に、口座開設期間も無期限に!という声は多いと思いますよ。

参考:日本証券業協会 |「英国における個人の中長期的・自助努力による資産形成のための投資優遇税制等の実態調査」報告書
 

Q:つみたてNISAの投資枠は増える?

川崎:現在、つみたてNISAの投資枠は年間で40万円。12カ月で割り切れないんですよね。それに一般NISAの投資120万円と比較すると3分の1です。もっと投資枠が増えたらいいと思いますし、そうなるのでは?との噂もちらほら聞きます。
 

中野会長:現時点では、噂に過ぎません。でも恒久化にしろ投資枠にしろ、長期的な視点で安心して資産形成できる制度への拡充は、僕も含めて、多くの人が期待していることだと思います。資産所得倍増プランをつみたてNISAを使って行うならば、投資枠を広げるのは最初に考えることでしょう。12カ月で割り切れる金額で、例えば60万円とかいっそのこと120万円とか。
 

現在の一般NISAやつみたてNISAには「投資枠が少ないこと」「期限があること」、この2つの問題があります。岸田総理が「資産所得倍増」というのであれば、投資枠を増やし、期限を無制限にすることは避けて通れないのでは?と僕は思います。そのくらい重要なことなんです。
 

資産所得を倍増させるには「NISA」「つみたてNISA」の活用が前提になってきそうです。しかしこれらの非課税制度の場合、20歳以上という年齢制限があります(2022年8月現在)。子どもには「ジュニアNISA」がありますが、2023年末で制度は終了。子どもはどうすれば良いのか?という問題もあります。これに関して、次回お話をうかがっていきます。


【回答者プロフィール】

話をうかがったセゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野晴啓さん

中野 晴啓(なかの はるひろ)
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 
1987年、現在の株式会社クレディセゾンへ入社。株式会社クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信株式会社を設立、2007年4月代表取締役社長就任。2020年6月より現職。一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事、公益社団法人経済同友会幹事。現在、複数のファンドアワードを連続受賞している国際分散型長期投資ファンド2本と特化型運用の日本株ファンド1本を設定、運用、販売。顧客数約16万人、預かり資産額は5,000億円を超える。著書は『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい。』(ダイヤモンド社)、『今すぐできる! iDeCoとつみたてNISA超入門』(扶桑社)他多数。



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