6月28日頃、Twitterで「結婚式の加害性」がトレンド入りし、話題を呼んだ。発端のツイートは、同性愛者を招待客に呼ぶことへの議論について、配慮の欠如を指摘しつつ、派生して「さまざまな不幸に見舞われている人も含めて招待し、ご祝儀を払わせ、強制的に祝わせる『結婚式』のシステム自体に加害性があるのではないか」といった意見を主張するものであった。
しかし、現在では「結婚式の加害性」というキーワードが独り歩きし、Twitterにはさまざまな意見が寄せられている。「思いやりを感じる」などの共感が上がる一方で、「自分と友人の幸せは別」「出席するかどうかを決めるのは自分」といった否定的な意見も多く寄せられた。
「他人の幸せを祝えない」心理状況は、誰にでも生じ得る
筆者がこの議論を目にしたとき、まずは「祝えない状況なら欠席すればいい」という感想を持ったが、Twitter上には「今後も友人でいたいのに、欠席することで関係にヒビがはいるかもしれない」という意見もあった。そんなことに気を遣い合う仲を友人というのか、そもそも結婚式への参加は、強制ではないはずでは……と感じる部分もあるが、結婚式に対する価値観は多種多様。なかなかセンシティブな問題だ。「友達だったら素直におめでとうって思う」
同投稿を見た同性愛者の友人は、結婚式に招待されることについて、特にネガティブな感情は抱かないと語った。ただ、自身の置かれた状況により「他人の幸せを祝えない」と思ってしまった経験は、誰にでもあるのではないだろうか。
たとえば、自身の恋愛がうまくいっていないときに飛び込んできた、知人のSNSでの「(結婚)ご報告」投稿。仕事がうまくいっていないときの同僚の昇進。「自分と他人は別」だと思っていても、嫉妬心から、素直に他人の幸せを祝えない状況が生まれることもある。ちなみに先ほどの友人は、自身の恋愛も仕事も充実している。
「私は3万円払ったのに、あの子は1万5000円」根深い“ご祝儀問題”
ただの知人ではなく、友人であれば、どんな状況であれ素直に祝福できるはず……と個人的には思うが、大切な友人たちを招いた結婚式でさえ、トラブルは起こるようだ。ご祝儀にまつわるこんな話を聞いた。「今だから言えるけどさ、A子からのご祝儀1万5000円だったんだよね」
ポロっと漏らしたのはCさん(27歳/主婦)。Cさんは27歳で結婚し、高校の同級生のA子さんを、九州から東京の挙式に招いた。わざわざ遠方から参加してくれることもあり、CさんはA子さんに、お車代として1万円を渡したという。
「A子の結婚式の時は、3万円渡したのに」
A子さんは、食品会社に勤めていて、特にお金に困っている様子はなかったという。CさんはこれをきっかけにA子さんに対し「常識がない人」との印象を抱いたという。この後、A子さんとCさんは自然と疎遠になってしまった。
台風直撃も「タクシー代を出すから来て欲しい」と招待され……
もう1つは「結婚式に行きたかったけれど行けなかった」と語るTさんのケースだ。数年前、Rさんの結婚式に招かれたTさん(27歳/OL)。Tさんは前日に東京を出て、前泊し、四国で行われるRさんの挙式に参加しようと計画を立てていたのだが……。ちょうど挙式の当日に四国に台風が直撃するとの天気予報が出た。この影響で前日から新幹線は運転を見合わせた。
Tさんは、Rさんに「出席は難しいかも」と連絡を入れたそうだ。Rさんはこう言った。
「飛行機で来られないかな?」
飛行機を確認してみると、飛んでいる便があり、空席もある。しかし、行くのは正直怖かったという。挙式をする予定の隣町で、洪水が起こったとニュースで流れていたのだ。あらためて、Rさんに断わりと謝罪を入れると、次は「タクシー代も飛行機代も出すから来て」と言われたそうだ。
それも断ると「そっか……分かった」と言って、Rさんは肩を落とした。
その後、TさんはRさん宛に結婚祝いを送ったが、お返しに引き出物が送られてきただけで特に連絡はなく、関係は途絶えてしまった。
後日、式に出席していた別の友人から「Tは来なかったけれど、H君は、飛行機で来たよ」と聞いたという。H君は、新幹線をキャンセルし、急きょ飛行機で式に向かったようだ。
どうやらこれがRさんの「Tは来られたはずなのに前日ドタキャンした」という印象につながったようだ。2人はそのまま疎遠になった。
結婚式とは、一体誰のためのものか?
結婚式とはなんだろうか。個人的には、結婚をきっかけに、今までお世話になった人に感謝を伝える儀式……だと思っている。決して「ドレスお披露目会」ではない。
しかし、結婚に対する価値観は人それぞれだ。「一生の愛を誓い合う儀式」だという人もいるかもしれないし、「さぁ祝って! 私が主役よ!」と考えている人もいるかもしれない。
自分が幸せなときほど、その“幸せ”に加害性があることに気づきにくいものだ。改めて、“結婚式は誰のためのものか”を考え直してみる必要があるのではないだろうか。
※回答者のコメントは原文ママです
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