vol.1「彼女さん」…特に若者の間で多用される「さん付け」の新種
若者のあいだで、おもに「目上の人のパートナー」を指すとき(※時おりタメ、目下のパートナーを指すときですら)に多用される「さん」付け。彼氏だと「彼氏さん」。
用例
「◯◯先輩の彼女さんって、めっちゃ素敵じゃないですか〜!」「オマエの彼女さん、めっちゃかわいいじゃん!」
類語
・まっちゃんさん(=松本人志)・さかなクンさん
・Mr.Childrenさん(ミスチルさん)
・(エグ)ザイルさん
・キンキ(キッズ)さん
・ジャンポケさん
・エピックさん(=『フォートナイト』で有名なゲーム会社)
・YouTuberさん
本日の考察
最近の若者はとかく、なんでもかんでも「さん」付けしてしまう兆候が見てとれる。2021年にMステこと『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、女優兼歌手の上白石萌歌が敬愛するバンド・スピッツと共演した際、最後まで「スピッツさん」ではなく「スピッツ」と呼び捨てしたことが、
「Mステで上白石萌歌がサン付けしてなかったの草」
「尊敬しているなら『さん』くらいつけようよ」
「デビュー30周年の大先輩やで。失礼すぎん?」
……などとプチ炎上。しかし、スピッツの草野マサムネ“さん”は「バンド(名)にさん付けするのはおかしい」と公言している……らしいし、グループ名やコンビ名に「さん」を付けるのは「ビートルズさん」……ひいては「株式会社オールアバウト御中 山田様」と同様の過剰な丁寧語でしかなく、そうやらかしてしまいがちな心情は痛いほど理解できるが、敬称の使用法としては誤り。(※念のため、正解は「株式会社オールアバウト 山田様」。株式会社オールアバウト全社に向けてメッセージを送る場合のみ「オールアバウト御中」となる)
これは、おそらく「正しい敬語の使い方」が年々おざなりになってしまっているという実状から生じる一種の逆転現象、つまり、
「とりあえず、さん付けしといたら丁寧っぽく聞こえるだろ」
「さん付けさえすれば、年輩やあまり親交が深くない……あるいは面識のない人との関係も無難にやりすごせるから安心」
……といった、安易な事なかれ主義的発想によるものなのではないか、と筆者は推測する。
前出の実例「◯◯先輩の彼女さんって〜」とのくだりも、「先輩」と呼んでいる時点で謙譲の意味合いは成立しているゆえ、本来だと「◯◯先輩の彼女って〜」で充分……なのだが、たしかに「彼女さん」が醸す語感の響きの京都弁風(?)な“やわらかさ”と慇懃なニュアンスが魅惑的であることは否定できなくもない。
ただ、個人的には、そんな余計な気を配っているヒマがあるなら、ツイッターや○○コメにコメントを書き込んだりするときの著名人の名前の誤記や誤字脱字を再チェックする作業を怠らないでいただきたい……と思うのだが?
※補足:筆者が執筆するコラムでは、原則として芸能人は年齢問わず呼び捨て(すでにお亡くなりになった芸能人は除く)、その他の職業に就く著名人は「さん」もしくは肩書きを名前の後に付けるよう統一しているのだが(例:村上春樹さん・蓮舫参院議員)、林修氏・堀江貴文氏あたりの扱いにはいつも悩んでしまう。
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