【マニアックな業界用語】パン用語編
今や日本の食卓に欠かせない「パン」。毎朝食べているという人も多いと思いますが、「食パンの1本と1斤、どっちが大きいか」など、わかっていない人は意外と多いのではないでしょうか。
今回は「知ってるようで知らないパン用語」を紹介します!
食パンの「1本」と「1斤」どっちが大きい?
食パンの1本とは、でき立ての食パンを焼き型から取り出してまだ切っていない、そのまま1個のこと。
一方、食パンの1斤とは「340g以上の1かたまり」のこと。日本で一般的に使われている「尺貫法の1斤(600g)」とは違います。
切っていない「1本」の方が大きいと思いきや、ホームベーカリーなどでは0.8斤など小さいサイズの焼き型もあるため、必ずしもそうとは限りません。
なので、どっちが大きいかの答えは「どちらともいえない」になります。
また、なぜ「1斤=340g以上」という、尺貫法とは異なる定義なのかというと、その理由は食パンの歴史にあります。
食パンが一般的に流通し始めた明治初期は、アメリカやイギリスから輸入した、焼き上がりが1ポンド(英斤:約450g)以上になる焼き型を使用。そのため、だいたいそれくらいの重さの1まとまりを「1斤」と呼ぶようになりました。
以来、長らく具体的な定義がないままでしたが、2000年に「包装食パンの表示に関する公正競争規約」で、包装食パン1個の重量が340g以上のものを1斤と表示することが定められました。
「イースト」と「天然酵母」何が違う?
パン作りにはかかせない「イースト」ですが、最近では「天然酵母」を使っていることを売りにする商品も増えています。なんとなく健康的なイメージがありますが、イーストと天然酵母は何が違うのでしょうか。
答えは「同じ」です。イースト(パン酵母)は、様々な微生物が生息している自然界から最も製パンに適したものを選別して培養したもの。いうなれば「天然酵母」だからです。
日本イースト工業会も「生き物である酵母に「天然」や「人工」という区別はありません」「『天然酵母』の対極にあるのがイースト(天然マダイと養殖マダイの関係)というのではなく、同じ天然物(イースト=酵母)」と見解を発表。
そもそも、パン業界における「天然酵母パン」とは、市販のイーストではなく、果物や穀物に付着している酵母を自家製で発酵させる「種起こし」によって作られたパンのことでした。
手間がかかる一方で、酵母以外の乳酸菌などの作用により、酸味のある複雑なおいしさが味わえます。
しかし、この「天然酵母」という響きに健康的・安全であるというイメージがあるため、定義が曖昧なのをいいことに、従来のイーストを使って風味も特に変わらないものまで「天然酵母パン」を名乗っている商品も……。
日本パン技術研究所も「パン業界が今後益々消費者の信頼を得て行くためには、現状の天然酵母表示には何らかの改善が必要である」と警鐘を鳴らしています。
「あんぱん」と「カレーパン」どっちが先に生まれた?
日本のパン屋の定番メニューである菓子パンと総菜パンですが、菓子パンの元祖であるあんぱんと、総菜パンの元祖であるカレーパン、どちらが先に生まれたのかご存じでしょうか。
答えは「あんぱん」です。明治初期の1874年、現・木村屋總本店の創業者である木村安兵衛さんと2代目である次男の木村英三郎さんが、日本人に合うパンとして酒種酵母による酒種あんぱんを発明。瞬く間に人気となり、翌年には明治天皇にも献上されました。
一方のカレーパンは、諸説ありますが、現・カトレアの2代目である中田豊治さんが1927年に実用新案に登録した「洋食パン」が元祖といわれています。「具の入ったパンをカツレツのように揚げる」として、洋食の2トップであるカレーとカツレツを取り入れたとのこと。
いくつかある他の諸説も、あんぱん誕生よりは後。洋+洋のカレーパンより、和+洋のあんぱんの方が先なのが、和洋折衷の日本らしいですね。
ちなみに、ジャムパンが1900年、クリームパンが1904年、コロッケパンが1927年、やきそばパンが1950年代に発売されたとされています。菓子パン強し……!
知っているようで知らないパン用語。パン屋さんでのお買い物のときなどに、ぜひ参考にしてみてください。
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