コロナ禍で懸念される依存症の増加……実態はまだ明らかにならず
コロナ禍で、アルコール依存やスマホ依存、ネットゲーム依存などが増加したという報道を目にします。現時点では依存症の増加を示した信頼できる調査やデータは見当たらず、実体は明らかではありませんが、皆さんそれぞれ思い当たる節があるのでしょう。
「仕事がなくなり、家での飲酒機会が増えた」「家族がいつも一緒にいるのがストレスで飲むようになった」などの理由で、アルコール依存になってしまったかもと心配されている方もいるかもしれません。私自身も、リモートワーク中心の生活を余儀なくされ、明らかにパソコンやスマホに向かう時間が増えました。多かれ少なかれ、コロナ禍は私たちの生活に悪影響を与えているようです。
しかし、このような状況にあっても、私はあえて「依存症をコロナ禍のせいにしないで」と言いたいです。コロナのせいにしても何も解決しませんし、そのような考え方こそが依存症を助長するとも言えるからです。そもそも依存症とは何で、どのように起きるのかを解説します。
依存症とは何か……きっかけの多くは欲求不満から
厚生労働省のホームページでは、依存症は「日々の生活や健康、大切な人間関係や仕事などに悪影響を及ぼしているにも関わらず、特定の物質や行動をやめたくてもやめられない(コントロールできない)状態」と記されています。そして、依存症には、アルコールやタバコ、薬物などに関連したものと、ギャンブルや買い物、スマホ、ゲーム等の行動や習慣に関連したものがあります。どちらのタイプもいくらかの性質の違いはあるものの、続けることによって脳に変化が起きて症状が引き起こされる点は同じです。
依存症になったかどうかを知る1つの目安は、頼っている物がなくなったり、行動ができなくなったりしたときに、心や体がどう反応するかです。もしイライラしたり抑えきれない不安に襲われたりするようであれば、依存症になっている可能性が高いです。
依存症のきっかけになるのは、ほとんどの場合が欲求不満です。やりたいことがうまくいかない、願いがかなわない、どうにも解決できない、そんな不満やプレッシャーからくる閉塞感に苦しんだ末に、現実から逃げようとして、アルコールやスマホなどへ誘われてしまうのです。現実逃避している間は救われたような錯覚に陥るものの、現実に戻ると何も問題は解決しないまま残っており、どうにもならない失望感が増幅され、耐え難い不快感が襲ってきます。そして、その不快感を解消しようとして、再び非現実的な物や行動にはまってしまいます。これを延々と繰り返すことで、「やめたくてもやめられない」という負のスパイラルにはまってしまうのです。
依存症リスクを回避するために……問題は物や行動ではなく「心の状態」
それでは、依存症はどうすれば予防、解決できるのでしょうか。その糸口となるヒントは、同じ状況に置かれても、依存症になる人とならない人がいるという点です。
アルコール依存症になるのは、必ずしもお酒が悪いわけではありません。お酒は上手に飲めば、私たちの暮らしを楽しくしてくれるものです。スマホやゲームも同じです。物や行動がいけないのではなく、どういう気持ちでそれをしているか、それぞれの人の「心の状態」が問題であることにまず気付く必要があります。
そもそも依存症は、困ったときやうまくいかないときに誰にも頼らず、無理をして1人で「頑張ろう」としてしまうタイプの人に多い傾向があります。その頑張りが自らを追い込んでしまうのです。そうならないためには、自分を強くしようとするのではなく、むしろ自分は弱い存在だと認め、自分の気持ちを素直に他人と分かち合うことが大切です。依存症リスクを回避するためには、「物」に頼るのではなく、「人」に頼るべきなのです。
少し厳しい言い方かもしれませんが、コロナ禍で苦しいのは、みんな同じです。だからこそ、1人で「コロナのせい」と悲観的に考えるのはやめた方がいいと私は思います。むしろ、苦しいときこそ、人と人とのつながりを大切にし、絆を深め合うチャンスと考えてはどうでしょうか。人に遠慮しすぎてしまう人は、適度に「人」依存することも覚えて、健康的に支え合える人間関係をつくっていきましょう!
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