1:『あのこは貴族』(岨手由貴子監督作品)
山内マリコの同名原作を映画化。都心に暮らす箱入り娘の華子(門脇麦)と地方出身で都会で自分の人生を自力で切り開いてきた美紀(水原希子)が出会い、お互いの人生に影響を与えて、新たな一歩を踏み出す物語。完全に女性目線で描かれた、格差社会で生きる女性たちの物語です。
世間知らずのお嬢様の華子と社会的な階級差に苦しんできた美紀ですが、思うようにならない人生を環境のせいにせず、悩みながらも自力で人生の扉を開く姿がすがすがしい! 華子の夫を演じた高良健吾は好演しているものの、男性陣は完全に脇役。門脇麦、水原希子、2人の友人を演じる石橋静河など、女性俳優陣がとても輝いています。
(監督:岨手由貴子 出演:門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河ほか)
2:『ひらいて』(首藤凜監督作品)
綿矢りさの同名原作の映画化。高校生の愛(山田杏奈)は、同級生の男子、たとえ(作間龍斗)に片思い。でも彼に秘密の恋人・美雪(芋生悠)がいると知るや、愛は美雪に近づいていく。2人の手紙を盗み読みしたり、美雪に近づき、たとえとの関係に探りを入れたり、愛の暴走に目が釘付けになります。
愛は激しい性格だけれど、「好きな人のことを知りたい」と踏み込んでいく気持ちそのものは分からなくはない。キラキラ青春映画では絶対に描かないネガティブな感情が渦巻く作品ですが、きれいごと一切なしの危なっかしくハードな三角関係が面白い。原作の綿矢りさ、首藤監督による、女性ならではの視点だと思います。
(監督:首藤凜 出演:山田杏奈、作間龍斗、芋生悠ほか)
3:『PASSING -白い黒人-』(レベッカ・ホール監督作品)
俳優のレベッカ・ホール(映画『ゴジラvsコング』など)が初監督した作品で、1920年代のニューヨークが舞台。肌の色が薄いため、白人のフリができる黒人女性2人。アイリーン(テッサ・トンプソン)は黒人社会で生きる決心をし、クレア(ルース・ネッガ)は黒人であることを隠して白人男性と結婚。しかし、白人のフリに疲れたクレアは黒人社会に戻りたいと、友人アイリーンの生活に踏み込んでくるのです。
人種問題を含んだシビアな作品ですが、それ以上に、美しいクレアが夫や友人たちを魅了していくたびに高まるアイリーンの不安、女性同士の緊張感ある関係性のリアルさがズシンと心に突き刺さる。静かにドロドロと濁っていくアイリーンとクレアの感情が交差するさまは、女性監督ならではの演出で見応えあり。
(監督:レベッカ・ホール 出演:テッサ・トンプソン、ルース・ネッガほか)
男性が描く女性像にどこか違和感を描いている人こそ必見。女性監督は容赦なく女性の芯を貫いていきます。ほかにも日本映画界には、西川美和監督、大九明子監督、タナダユキ監督、荻上直子監督、河瀬直美監督などの優秀な映画監督がいますが、今後もっと増えていきそうな予感! 映画で男性目線と女性目線を比べてみるのも楽しいと思います。
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