日本でもテレビ番組でワクチンパス導入の是非が論じられるなど、その存在が徐々に浸透しているようですね。提示により優待や割引が受けられるといったワクチンパスが、民間主導でも導入されつつあると聞きますし、これからますます身近な存在になっていくのでしょう。しかし色々と情報を集めるなかで、筆者が住むヨーロッパとは随分と状況が異なるように感じられました。  

 

厳格を極めるヨーロッパのワクチンパス

こちらヨーロッパでは、コロナ禍での経済活動を再生させるべく、今年の夏ごろからワクチンパス制度が開始されました。そしてそれに伴い、国境移動や特定の施設利用時にパスの提示を義務化した国も増えています。

例えばフランスでは、「衛生パス」と呼ばれるQRコード付き証明書が導入されました。現在このパスには、

(1)ワクチン接種証明書
(2)72時間以内の陰性証明書
(3)72時間以内の自己検査キットに基づく陰性証明書(医療専門家の監督下)
(4)過去6カ月間における、新型コロナウイルス感染の証明書

の4種類があり、12歳以上はパスの提示なしではレストラン・カフェ・バー(テラス含む)、百貨店やショッピングセンター(2万平方メートル以上)、長距離列車・バス・国内線航空便、病院や高齢者施設(救急搬送は除く)、屋外施設(動物園、遊園地)、スポーツ施設(スタジアム、プール、ジム)、屋内文化施設(映画館、劇場、美術館、図書館)、宗教施設などが立入禁止となります。

ドイツでも、「接種済、罹患済み、検査済み(geimpft, genesen, getestet)」の頭文字を取った3Gポリシーが掲げられており、フランスとほぼ同じ状況です。イギリスこそ導入が当面見送られたものの、イタリア、オーストリア、スイスなどでも、おおむね同様の措置が見られます。
 

欧州各国で繰り広げられる“ワクパス”騒動

スイスではこの秋学期から、多くの大学においてキャンパス内でのワクチンパスが義務化されています。これに対して、学問の自由や教育へのバリアフリーなアクセスを求める学生たちの抗議デモ活動が起こり、ニュースとなりました。

また、フランスでは7月に医療従事者のワクチン接種義務を、イタリアでは9月に全労働者のワクチンパス保持(いずれも違反者は停職)を決定するなど、かなり厳しい政策が打ち出されており、こちらに対しても反対派による抗議デモ活動が続いています。

更にドイツの人気テーマパークでは、来場者がワクチン接種を受けているかどうかを簡単に確認するために、独自のルールを実施。ゲストに対し、「ワクチン接種者には青いブレスレット、陰性証明を持つ未接種者には白いブレスレット」の着用義務を課したところ、「こんなファシストパークは二度と訪れない」、「プライバシーの侵害だ」、「個人データ保護の違反」などと猛抗議が殺到したようで、開始早々に取りやめる騒ぎも起こっています。
 

ワクチンを“打てない人”はどうする?

ワクチンを問題なく打てる人がいる反面、体質や宗教、信条といった理由から、ワクチンを打てない人々が一定数存在するのも事実。重度の薬物アレルギー疾患やアナフィラキシー既往歴なども、多くの国においてほとんど考慮されていません。

そういった人々は、ワクチンパスをあきらめざるを得ないため、不自由かつ非文化的な生活を余儀なくされています。PCRもしくは簡易検査を受ければ、24~48時間程度(国や施設規定に準ずる)はワクチン接種者と同様の行動の自由が認められるものの、その都度コスト(※)と手間が掛かるため、日常生活を営む上で、個人で継続的に検査を受け続けるのは、かなり非現実的といえるでしょう。

本来、この上なく自由を尊重するはずの現代ヨーロッパで、いや、むしろ自由を謳歌しすぎたゆえのしわ寄せなのか、大多数の自由を確保するための犠牲の一部なのか、この一件に関しては、一部住民の社会生活における自由が大幅に制限されているようです。

※スイスの場合、PCR検査が約2万円、簡易検査が約6000円程度
 

日本の行きつく先は?

日本でも10月から、「ワクチン・検査パッケージ」という政府の実証調査が始まりました。ワクチン接種証明や検査の陰性証明を持つ人の行動制限を緩和するのが目的で、Jリーグなどの観戦イベントやパッケージ旅行などにおいて、ワクパス保持者の専用枠が設けられるようです。

その一方、石川、長野、岐阜、三重、和歌山、鳥取、徳島、高知の8県が条例で未接種者への差別を禁止し、政府も接種を入学や雇用の条件にすることなどは差別に当たると公表したとも聞きます。

まだまだコロナとの共存は手探り状態のようですが、今後、日本がヨーロッパのような道を歩むのか、日本独自の道を編み出すのか、一人一人が考え始める段階に来ているのかもしれませんね。