「個別株」を買う場合には、リスクとリターンの関係性をしっかりと理解する必要がありそうです。投資素人の高校生の娘が、個別株についてセゾン投信 代表取締役会長CEOの中野晴啓さんに聞いてみます。
個別株を買うメリットはその会社への愛情。そして大きなリターンを期待できること
筆者の高校生の娘(以下M):個別株に投資をするメリットは何ですか?
中野さん:個別株に投資をするメリットは、その会社に自分の愛情を注ぎ込めること。株価なんて関係ない!という気持ちで会社の株主になるのだから、思い入れがありますよね。そういう人は個別株でもいいと思います。当然ながら、1つの銘柄にお金を集中して使うので、株価が上がった時のリターンは大きいです。投資した金額が大きければ大きいほど、利益の金額も増えてきます。
前回、個別株と投資信託の違いをお寿司に例えて説明しましたが、全部が同じネタでも「これは最高においしい!」と思えるなら、好きなネタをたくさん食べられて、その分満足感も高いという感じです。
「損は嫌、でも儲けたい」はムシが良すぎる
M:逆にデメリットはありますか?
中野さん:個別株に投資をするメリットとデメリットは表裏一体で、大きなリターンを期待できる分、大きなリスクも背負っています。株価が急激に下がったら、その分マイナスになる金額も大きいですよね。だから極めて投機的で博打的と言ってもいいかもしれません。例えば、おいしそうと思って集中して1つの寿司ネタで注文したけれど、それが口に合わなかったらどうします?
M:せっかく頼んだのに……と思うと、損した気分になっちゃいますね。だったら違うネタを注文したのにって。
中野さん:1つの寿司ネタに集中する場合、おいしく食べたい。でも、ハズレは嫌というのは、ちょっとムシが良すぎます。株も同じで、損をしたくないけれど儲けたいというのは、しょせん無理な話なんですよ。
個別株は難しい。自身の経験からわかること
M:中野さんは、これまで個別株を買ったことはないんですか?
中野さん:ありますよ。もう30年くらい前になりますけれど。その時は、周りの人がみんな株を買って儲けていて、僕も儲けたいと思っていました。その時に買った株の株価が短期間で2倍になって儲かったと言えば儲かったんですが、その前に散々損をしていましたからね。その利益で損失を埋める形になりましたよ。
M:その時は、長く持つことは考えてなかったのですか?
中野さん:とにかく株価の値動きが激しい銘柄を選びましたからね。一発当ててやろう、みたいに。でも今も思いますが、それは偶然株価が上がっただけだったんです。タイミングが悪ければ、大損をしていたでしょうし、株価が上がる銘柄を見つけていくのは本当に難しいと感じました。そもそもマーケットにはプロがたくさんいて、みんなでしのぎを削っているわけですよ。そこに素人が入っていって、勝ち続けるのは無理なんです。
M:でももし私が1回でも儲かったら、「私、天才じゃん?」って思っちゃうかもしれません。
中野さん:偶然は偶然です。それを自分の実力だと思ってしまうのは危険です。調子に乗ってしまうと、後で大きく損をしてしまうものですよ。これまでの利益が全部吹っ飛ぶくらいにね。
M:それは、かなりへこみますね(苦笑)。
個別株がある一方で、投資信託も投資先として有効です。次回は投資信託のメリットやデメリットを見ていきます。
教えてくれたのは……
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野 晴啓(なかの はるひろ)
1987年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信株式会社を設立。2020年6月より現職。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売しており、顧客数は約15万人、預かり資産は4300億円を超える。一般社団法人投資信託協会理事。公益財団法人セゾン文化財団理事。著書に『預金バカ』(講談社+α新書)、『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』(ダイヤモンド社)など。
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