「地名」と水害の関係
「経験したことのない大雨」ということばをよく聞くようになりました。近年はこれまでの記録を上回る大雨により大きな水害が頻発しています。先日も停滞する前線の影響で西日本や東日本を中心に各地で河川の氾濫や土砂災害が発生しました。こうした大雨が続くと「自分の住む地域は大丈夫だろうか」と不安になる人も多いのではないでしょうか?たとえば、イケやクボなど水に関連した言葉が地名に含まれる場合、かつて湿地や川が流れていた場所だった可能性があります。大雨の時に水がたまりやすく、地震の際に揺れや液状化の被害を受けるリスクがあると考えられます。
そのほかアクツやウキ、カモ、ソネは湿地や氾濫原を表す地名、アイ・エダは川の合流地点を表す地名だといわれています。
「安全な地名」は存在しない? 合併などにより改名の可能性も
しかし、現在は市町村の合併や土地の区画整理などにより新しい地名が付けられ、土地の特徴とは関係のない名前に変わっていることがあります。たとえば、埼玉県の南東部は、かつて「新田村」という地名でしたが、昭和30年の町村合併で「草加市」に改名されています。田を表す地名が付いているところは、洪水時に水につかりやすく、旧新田村も大部分が氾濫平野でしたが、現在の地名からは読み取れません。また、地名は同じ読みの漢字に変わる場合もあります。たとえば、先ほど挙げた水がたまりやすい場所を示す「クボ」は「窪」のほか、「久保」と表現されることがあります。このため地名のみから防災上のリスクを知ることは大変難しいのです。
経験したことのない大雨が多発! 水害リスクの小さかった場所も油断大敵
さらに、最近はこれまでの記録を更新する大雨が相次いで起きています。地球温暖化等の影響により、このまま地球の平均気温が上昇すると、雨雲のもとになる水蒸気の供給が増えるため今後も記録的な大雨は次々に起こるおそれがあります。2021年も8月11日からの長雨の影響で、九州では佐賀県嬉野市など降り始めからの雨の量が1000ミリを超えた地点がいくつもありました。たった数日間で平年の1年間の降水量の半分ほどの雨が降るなど過去の経験からは考えられないような現象が起きています。以前は水害の危険性が小さかった場所でも被害が発生する可能性は十分に考えられます。
すぐわかる!「ハザードマップ」の活用で災害のリスクを知ろう
そこでぜひ活用してほしいのが自分の住む土地の災害リスクを知れる「ハザードマップ」です。ハザードマップでは土砂災害や河川の洪水、浸水のほか、高潮や津波の危険性についても調べることができます。土砂災害のおそれのある地区は「土砂災害警戒区域」や「土砂災害危険個所」、大雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域は「洪水浸水想定区域」とされています。お住まいの地域がこうした区域に該当する場合は、大雨や台風の接近が予想された際、早め早めに気象情報を入手し、自治体からの避難情報に注意する必要があります。
参考:国土交通省 国土地理院 コラム「地名と水害 土地のもつ性質を探る手がかり」
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