正義感が強い子どもが「マスク警察」に…街で、学校で、マスク未着用の人を厳しく取り締まった結果

コロナ禍で続くマスク生活は、思わぬところで知らぬ間に、幼い子どもたちの心を傷つけているようです。今回は、子どもたちのマスクが原因でトラブルに発展してしまったという経験談をご紹介。

終わりの見えないコロナ禍、長引くマスク生活。マスクをつけると顔の表情が分かりにくくなり、老若男女を問わずコミュニケーションの壁になることは多くの専門家から指摘されているところですが、このマスク生活は思わぬところで幼い子どもたちの心を傷つけているようです。

そこで今回は、子どもたちのマスクが原因でトラブルに発展してしまったという経験談をご紹介。大人である私たちに、新たな課題が突きつけられました――
 
 

正義感が強い息子がいじめの対象に

小学校に通う6年間は、子どもが社会性を身につける期間ともいわれています。家族や友達とコミュニケーションを交わす中、相手の顔の表情や動きを見て、悲しんでいるのか、楽しんでいるのか、うれしいのか、感情を読み取り、相手の立場で考えることを覚えていくのです。しかし昨年3月から続くコロナ禍で、そうした感情を読み取ることができなくなってしまった子どもたちが続出しているといいます。

小学校2年生男児の母である葉子さん(仮名・38歳)は、お子さんの夏休みを前にして、混乱を隠せずにいるといいます。原因は息子さんのこと。学校でいじめを受けているようで、学校の先生から「指導に悩んでいる」と打ち明けられたことが発端でした。

「今年の春、私が住んでいるエリアは『まん防(=まん延防止等重点措置)』適用エリアになっていました。息子には、安全のために体育の授業中もできるだけマスクをつけるよう伝えていて、息子は言いつけを守ってくれていたんです。でも、クラスの別の男子が、体育の時間や休み時間にドッジボールをする際、まったくマスクをつけていなかったようで……息子はそれが気になって、何度もしつこく注意してしまったようなんです」

身体を激しく動かす際は、マスクをしなくてもいい。学校側はそう指導していたので、担任教諭は息子さんに対し「こういう場合、マスクの着用は個人の自由なんだよ」と指導。しかし息子さんは『もしも感染してたらどうするの? 僕は病気になりたくない。だからマスクは絶対につけるべき!』と譲らなかったといいます。そのやり取りを見ていたクラスメイトから怒りを買ってしまい、無視されたり、遊びに誘われなくなってしまったり。

葉子さんも、何度も息子さんと話し合いをしましたが「お父さんとお母さんが、マスクをつけるのはルールだって言った。テレビでもそう言ってる。僕はルールを守らない人に注意しただけで、悪いことはしてない!」と頑ななまま。夏休みに一緒に遊びに行くはずだったクラスメイトの母親から「ごめんなさい。『アイツとはもう遊ばない』『一緒にいたくない』と言われたので、夏休みの計画はナシで」と告げられ、葉子さんは頭を抱えてしまいました。

「もともと息子は正義感が強く、ダメなものはダメ、とキッチリ線を引くタイプ。まさかその性格が裏目に出るとは思ってもみませんでした。夏休みの間に根気よく、こういうことには様々な考え方があり、根本的にはマスクの着脱は個人の自由であることを教えていかなければ!と思っているのですが、夫がすでに息子の肩を持ってしまっていて……。修正するのは厳しいかもしれません……」
 

子どものまさかの発言で、場が凍った!?

葉子さん同様に小学生のお子さんを抱える友奈さん(仮名・40歳)もまた、お子さんが「マスク警察」状態になってしまい悩んでいるといいます。ことの発端は、最寄りの商店街に買い物に出かけたときのこと。近所に住む男性高齢者がマスクをつけずに買い物をしているのを見て、友奈さんのお子さん(小6女児)は「おじさん、マスクしなよ! 汚い!」と、強く注意をしてしまいました。

「とっさの出来事で、私自身もびっくりしてしまいました。慌てて娘の頭を掴み、一緒に頭を下げ、相手の方に謝罪をしました。でも男性は怒りが収まらないようで『あっちいけ、クソガキ! 他人に対して“汚い”なんて、親は一体全体どんな教育してんだよ?』とヒートアップ。怖かったので再度謝ろうとしたのですが、娘が『うっせぇわ! クソジジィ!』とやり返してしまって」

買い物を諦め、娘さんとともに自宅へ。高齢の方はすでにワクチンをすでに打っている可能性があるし、呼吸器や肌などにトラブルがある場合はマスクをしないこともある。人を一面だけ見て決めつけてはならないし、ましてや「汚い」「クソジジィ」などと罵るのは絶対にいけないことだ――そう娘さんを諭しました。けれども娘さんは「みんな嫌そうな顔してあのジジィのことを見てた。私は代弁しただけ! クソガキって言ったのはアッチが先!」と自己弁護をするばかり。それでもなんとか説得を続け、娘さんも「二度と言わない」と約束してくれたといいます。

「娘に対してはそれで済んだのですが、商店街の中でやらかしてしまったため、私たち親子はすっかり悪者になってしまって……。商店街で店を営む義父母からも厳しくお叱りを受けてしまいました。私自身、まさか娘があんな汚い言葉を使うとは思っていなくて。最近流行ったあの歌の影響なのでしょうけど……。怒りのやり場がなく、今ではもう、マスクが憎くて憎くて仕方ありません」

このようにマスクが子どもたちに害を与える可能性があることを、我々大人がしっかり受け止めて行動しなければ、日本の未来を支える子どもたちの心に、修復不可能な溝を作ってしまうかもしれません。1年以上にわたる閉塞的な暮らしはおもしろみに欠けるかもしれませんが、これ以上感染者を増やさないよう外飲みを止めるなど自粛ルールを守ることが「子どもたちの未来を守る」ことを忘れずにいたいものです。
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