このほどJR東日本では2020年度の駅別乗車人員データを公開した。毎年公開されているもので、そのランキングを昨年までのものと見比べてみると、大変興味深い。
駅別乗車人員ランキングの上位10位であるが、トップは「新宿駅」、2位は「池袋駅」で、この順位は数年変わることがない。ところが例年3位だった「東京駅」と4位の「横浜駅」が入れ替わった。さらに2016年以来5位だった「品川駅」が6位の「渋谷駅」と入れ替わり、加えて、7位の常連である「新橋駅」が8位の「大宮駅」と逆になっている。
東京駅、品川駅、新橋駅の利用者が減った要因はやはり……
つまり、サラリーマンの利用が顕著な東京駅、品川駅、新橋駅がいずれも順位を落としているのだ。別段、順位を上げた横浜駅、渋谷駅、大宮駅の利用者が増えたわけではない。この1年のコロナ禍でどの駅も前年比はマイナスになっているのだが、上記3駅が大幅に減少しているのである。
新橋駅前のSL広場も
やはり、首都圏を中心にテレワーク人口が増えて通勤者の数が減っているためであり、大企業のホワイトカラーが多いと思われる都心の3駅から利用者がごっそりいなくなったのだ。
また、東京駅は新幹線の利用者も激減したことが順位を下げる要因であろう。前年比41.4%という下落率はそのことを物語っている。品川駅も東海道新幹線からの乗り換え客(出張客の常連はエクスプレスカードを利用するであろうから品川駅での乗車人員に加算される)や羽田空港から京急線経由でやってきて品川駅からJR線を利用していた出張帰りの客が激減したのも東京駅を上回る41.5%という減少率に現れている。
利用者が少ない駅にも異変が
一方、23区内で利用者が少ない駅にも異変があった。ワースト3は、不動の最下位である京葉線の「越中島駅」と、このところワースト2位が定着した京浜東北線の「上中里駅」は変わらずだった。ところが、ワースト3位に順位を上げ乗車人員が1万人超えを果たした「尾久駅」(東北本線、通称「上野東京ライン」)の名前が消えてしまったのだ。
代わりにランクインを果たしたのが、2020年3月に開業したばかりの「高輪ゲートウェイ駅」である。開業初日こそ入場券を買い求める多数の鉄道ファンや野次馬でごった返したが、開業人気は緊急事態宣言下ではあっという間に下火となった。駅周辺の再開発事業はコロナ禍と高輪築堤の発掘調査で遅れていることもあり、この駅に用のある利用者はまだまだ少ない。そんなこともあって、当分は乗車人員が少ない状況は続くと思われる。
23区内で利用者が1万人に満たない駅が増加
ところで、コロナ禍の影響で23区内にあって利用者が1万人に満たない駅は2駅から一気に6駅に増えている。ワースト3位から浮上したとは言っても尾久駅は4位であり、他には三河島駅(常磐線)、葛西臨海公園駅(京葉線)がランクインした。葛西臨海公園はコロナ下での閉園期間や再開後の施設一部休止などの措置が大きく影響しているようだ。
以上のデータは2020年度特有のものなのか、2021年度以降もこうした状況が続いていくのか、社会の状況と合わせて見守っていかなければならないであろう。
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