まるで呪い。入浴後、23時以降でないと寝てはいけない「マイルール」を疑いもなく守ってきたけど…

「マイルール」を作り、それに縛られている人を多く見かける今日このごろ。良かれと思って作っていたであろう「マイルール」にハマってしまい、辛い思いをした!という方からお話を伺いました。

まじめな日本人気質のなせるわざか、コロナ禍で精神的に追い込まれているためか、はたまたコスパや効率重視のためか、「マイルール」を作り、自らそれに縛られている人を多く見かける今日このごろ。

そんななか、料理研究家の土井善晴さんが、煮物ができあがるまでの時間に、副菜作りなど他の“仕事”をするのではなく「手紙を書いたりしてもいい」と発言したことから「料理以外のことをしてもいいんだ!」「もっとゆっくりしていいんだ!」と、目から鱗をぼろぼろと落とす人が続出しました。

そこで今回は、良かれと思って作っていたであろう「マイルール」にハマってしまい、辛い思いをした!という方からお話を伺いました。
 

布団に入るのは23時以後! コレ、おかしかったの!?

昨秋、遠距離恋愛を経て結婚した乃利子さん(仮名・33歳)は、ご主人との生活が苦痛で仕方ありませんでした。その理由は日常生活におけるルールの違い。ご主人はよく言えばおおらか、悪く言えばおおざっぱ。乃利子さんは「私はA型気質」とご自身が言うように、テレビのリモコンはここ、エアコンのリモコンはこっち、というように、決めた場所に決めたものが収まっていないと気になって仕方がないといいます。

「なかでもイライラしたのは、夫の昼寝でした。私の実家では、布団に入るのは寝るときだけと決まっていて、23時を過ぎるまで誰も布団に入ることはなく、お風呂に入って体をきれいにし、寝間着に着替えてから布団に入るのが当たり前だったんです。でも、夫は『眠い!』と言っては部屋着のまま布団へ。朝の10時から布団に入ったのを見たときは、卒倒するかと思いました」

数カ月は我慢したものの、耐えきれなくなった乃利子さんがご主人に苦言を呈すると、ご主人は逆にキョトン顔。「なんで? そんなこと誰が決めたの? どうして23時まで布団に入っちゃいけないの? 好きな時に好きに寝て何が悪いの?」と反論され、乃利子さんは何も言えなくなってしまったといいます。

「あれ? もしかしてこれ、私たち家族のほうがおかしかったんじゃ……? そんな疑念が湧いてきましたが、一朝一夕には受け入れられず、悶々とした日々を送っていました。ある日、仕事でものすごく疲れたことがあって、夫に『すごい顔してるよ。少し寝てくれば?』と言われ、仕方なく午後2時くらいに布団に入ったんです。着替えるのも億劫だったので、夫に促されるまま部屋着のまま横になったのですが……そしたら、なんだかすごくホッとしたんです。

小さい頃、親から『昼間に寝たら夜眠れなくなる! 夜寝ないとお化けが来るぞ!』って脅されていたのですが、夜は夜で普通に眠れたし、身体がスーッとラクになりました。それ以後は『23時』にこだわることなく、疲れたら布団に倒れ込む生活になり、最近では部屋着のままでも、お風呂に入らずに寝ても、苦にならなくなりました。なんであんなことにこだわっていたんだろうと、今ではすっかり笑い話になっていますが……こういう意味不明なマイルールって、親から引き継いだ『呪い』みたいなものですよね」
 

完成したのは理想とかけ離れた「白い部屋」

栃木県在住の佳澄さん(仮名・29歳)は、3年前に同じ会社に勤めるご主人と結婚。妊娠を機に退職し、1歳になる娘さんを抱えて専業主婦生活を送っています。ご主人の実家のすぐ近くに新居を建て、義実家との関係も良く、生活は順風満帆でした。そんな時にハマったのが、整理収納アドバイザーの資格を持つインフルエンサーのインスタグラム。無印良品や100円均一のアイテムを駆使した無駄のない美しい収納に魅力を感じ、キッチン、リビング、トイレ、自室のクローゼット……と、あらゆる場所を整理整頓していきました。

「整理整頓を行っていくうちに、夫の残業が増えました。それまで遅くとも20時には帰ってきたのに、21時、22時になっても帰ってこない日が増えたんです。部屋をきれいにしたから運気が上がって夫の仕事が増えたんだ!と思い、とてもうれしくなりました。部屋の中は無駄を省いて常に整理整頓。不必要なものを買わなくなり、良いことずくめだったんです」

あれ? そういえば残業代ってどうなったんだろう。生活費を少し多くしてもらえるかも?と、ご主人の給与明細を見てびっくり。1円たりとも残業代はついておらず、慌てた佳澄さんが帰宅したご主人に詰め寄ると、ご主人は少し怒ったような顔で「だって、家に帰ってきても、全然くつろげないんだもん。仕方ないから、ずっと車にいたんだよ。残業なんて嘘だったんだよ」と吐き出したといいます。

「夫曰く、病院みたいに味気ない白い部屋が嫌だった。服を買ってくると、いらない服を1枚捨てろと強制されるのが嫌だった。漫画を買ってきても、読み終わったら勝手に売られてしまうのが嫌だった。服もいつの間にかベージュや紺、白、黒ばかりにされた。キッチンだけなら許せたけど、カーテンや家具までいつの間にか真っ白。こんな気持ち悪い家にいたくなかったと……。そう言われて部屋を見まわすと、確かに白いんです。冷蔵庫の中も白いし、クローゼットの中も白いんです。整然としていて写真映えする美しさなのですが、面白みというか、個性がまるでなくて……」

それ以後、整理整頓はキッチンだけにとどめ、リビングや部屋にほどよく雑多な生活感を取り戻したことで、ご主人も普通に家に帰ってくるようになりました。

「整理整頓って、宗教みたいなものなんですよね。きれいじゃなければいけない、整頓されていなければならない、そういう強迫観念に取り込まれてしまうというか。あのままでは子どもの情操教育にも良くなかったかも?と、気付かせてくれた夫に感謝しています。どんなに映える!と思っても、やりすぎちゃダメですね」

無意識のうちに陥ってしまうマイルールという呪い。今回お話を聞かせていただいたおふたりは、マイルールを外して生活に余裕を持たせたことで、円満解決を見ることになりました。

「こうするべき」と決めつけるのではなく、自由に気楽に過ごすことが、毎日のストレス解消には欠かせないこと。マイルールを持ちすぎているそこのあなた! 自分自身にかけられた「呪い」を外し、余裕のある生活にシフトチェンジしてみては?
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