日本の保育園や幼稚園に通う園児にとって、6月や7月といえば、やっと新生活に慣れてきた頃だろう。しかし9月入学、進学となる台湾では、6月、7月は卒園の季節。また、公立幼稚園の応募、抽選の時期でもある。
台湾に親子留学をして2年になる筆者も、この機会に息子を公立幼稚園に通わせることを検討し始めた。そして実際に応募してみたところ、日本の形式とは大きく違ったので、ここで紹介したいと思う。
台湾には保育園がない。その代わり“公立幼稚園”が高倍率に
日本では一般的に、母親が働いている家庭は保育園に子供を預け、母親が働いていない家庭は幼稚園に子供を通わせることが多い。よって幼稚園は専業主婦家庭のものという印象が強い。しかし台湾では、ほとんどの母親が働いているため、幼稚園は保育園の役割も果たし、当然のように夕方まで子供を預かる。
そのためか、学費は全体的に日本より高い。台北市に限って言えば、私立年少小の1年間の学費は15万元〜25万元(日本円で約60万円〜100万円 ※1)ほどかかり、筆者がみた限り30万元(約120万円 ※1)などというところもある。公立の場合は年間4万元〜5万元(日本円で約16万円〜20万円 ※1)と、大幅に安いのだが、その数は私立幼稚園よりはるかに少ない。※2
“IT大国”台湾の公立幼稚園の応募、抽選方式の利便性に驚き!
全てがネット上で行われ、応募開始から抽選、本登録までに要する期間はたったの3日。必要な書類はほとんどなく、日本のマイナンバーにあたる中華民国国民身分証か、外国人であれば居留証やパスポートの番号、写メがあればあっという間だった。
さらに応募期間中は、その幼稚園に対して何人が希望を出しているのかが、3分ごとに更新され、リアルタイムに近い状態で見られるようになっている。それをもとに、比較的倍率が高くない園を選ぶこともできるだろう。もちろん抽選方式はコンピュータシステムを使って公正に行われ、決してくじ引きやガラガラポンではない。
筆者が東京にいた時は、公立の保育園に入園希望を出すためには、個人事業主という特性上、気が遠くなるほどの書類を集め、それを区役所に手で持ち込むか郵送しなければならなかった。しかも応募期間は1ヶ月程あり、さらに2ヶ月の選考期間を経て、やっと結果がわかる。勤務状況や所得が絡むため、厳密な審査が必要とはいえ、どの園に決まるのか、そもそも保育園に入れるのかが3ヶ月間わからないというのは、先の計画を立てる上でとても不便だったことを記憶している。
幼稚園の場合、手続きはそれほど煩雑ではないにしろ、応募書類を現場かネットで入手して記入し、住民票を取得し、書類は手で希望幼稚園に持ち込み、抽選があればそれまで日にちを要し、という形で、スムーズというにはなかなか難しい。
そういった経験があるため、台湾の合理性には驚いた。特にコロナ禍では、ネットで全てが完結するというのは非常にありがたい。応募から3日後、抽選の結果、息子は競争率3.5倍の中、公立幼稚園に当選した。
公立の抽選に漏れた場合にもあせる必要なし。台湾の幼稚園選びは忙しい子育て中にも効率的
9月から、完全ローカルな幼稚園生活が始まる。今の私立幼稚園(日本人と台湾人が半々)との別れはとても寂しく、親としては制服や制作物に対しても愛着があるのだが、これもきっと親子の成長の機会だ。戸惑う場面もあるかもしれないが、得るものも大きいだろう。ちなみに、公立の抽選に漏れた際、私立幼稚園の検討をするのにも、教育部(日本でいう文部科学省)が運営するサイトが役立つ。ここでは就学前教育に対する政策や各種補助などの情報が一般公開されている他、台湾全土の幼稚園の学費、住所などが検索できるようになっている。※3
つくづく、台湾の幼稚園選びは効率的なのだ。時間は無限にあるわけではない。特に子育てをしていると、矢のように日々が過ぎていく。日本でも親に優しい幼稚園、学校選びができるようになることを切に願っている。
※1 2021年6月27日のレート、1元=3.97円で換算
※2 今日幼教:公私立幼兒園收費參考 https://today100.co/kgtuition.html
※3 全國教保資訊網:https://www.ece.moe.edu.tw/ch/
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