読書習慣はどう身につけた? 本が好きになったきっかけ
難関校に合格した子たちは、どうやって読書習慣を身につけていったのでしょうか。今回お話を聞いたのは2人。1人目は、偏差値65(四谷大塚)の進学校に合格したAくん。受験当日の朝も本を読んでいたというツワモノです。2人目は、いわゆる男子御三家に進学したBくん。幼児期から一貫して大の読書好き。国語の成績は安定していたそうです。
「幼少期から本は身近にありました。子どもが好きそうな本はもちろん、読んでおくとよさそうな本を借りてきて、さりげなく目につく場所に置いておく感じでしたね。未読の本があると勝手に読破していく状態。小学生時代の放課後、習い事がない日はほとんどの時間を読書に費やしていて……。当時は、たまには外遊びをしてほしくて悩んでいました」(Aくんのお母さん ※以下Aさん)
「うちは小さい頃から読み聞かせを積極的にしていました。図書館には週1~2回の頻度で通い、家には図書館で借りた本が常に10冊ほどあったと思います。『読み聞かせの会』などのイベントにもよく参加していました」(Bくんのお母さん ※以下Bさん)
2家庭に共通していたのは、幼少期から絵本の読み聞かせを習慣にしてきたこと、図書館に頻繁に通ったこと。最初のうちは、親が選ぶ本が多ジャンルに及んでいたものの、成長とともに子ども自身が好みの本を選ぶようになったというステップも共通点。
Aさん、Bさん自身も、もともと読書習慣があったことから、大人も子どもも家で読書をするのが当たり前のような環境だったといえそうです。
また、ゲーム類の導入が小学校高学年と遅かったことも影響している可能性はありそうです。
いつどんな本を読んできた? 気になる読書歴は……
では具体的にどんな本を読んできたのでしょうか。Aくんの読書歴ついて聞いてみました。
「1人読みのスタートは小学校入学の頃『かいけつゾロリシリーズ』(ポプラ社)でした。その後『世界文学の森シリーズ』(集英社)、2~3年生頃は『ずっこけ3人組シリーズ』(ポプラ社)や学研の『ひみつシリーズ』や『ふしぎシリーズ』。
3~4年生頃から学習漫画『実験対決・発明対決シリーズ』、『サバイバルシリーズ』(ともに朝日新聞出版)にハマり、歴史漫画を全巻一括購入したのも同時期です。小説では『江戸川乱歩シリーズ』から始まり、4~5年生の頃には角川つばさ文庫や講談社青い鳥文庫の小説が多くなりました」(Aさん)
読書歴ではAくんと共通する部分が多かったBくん。そのほかのお気に入りを聞いてみると……
「電車が好きなので、『電車で行こう!シリーズ』(集英社)が大好き。電車で旅行をする鉄道小説には、地名や特産物などもたくさん出てくるので自然と社会の勉強にもなった気がします。受験終了後のご褒美として、息子が好きな寝台列車で実際に旅行もしました。
『都会のトム&ソーヤ』(講談社)や『怪盗レッド』(KADOKAWA)もお気に入りで、いずれもシリーズ全巻を読破しています。『進撃の巨人』(講談社)や『美味しんぼ』(小学館)など漫画も好きですね。受験が終わった春休みには『万能鑑定士Qの事件簿』(KADOKAWA)をずっと読んでいました」(Bさん)
小学生の読書量が30年前の3分の1にまで減少(「小学生白書Web版」2020年8月、学研教育総合研究所調べ)するなど読書離れが顕著な昨今、おふたりの本棚は圧巻のひとこと。Aさんによれば、
「漢字の勉強はほとんどしていなかった気がします。読書の中で自然に覚えていったのかも。理科や社会の知識として役に立ったのかなと思うのは学習漫画でしょうか。セリフを暗記するまで繰り返して読み込んでいたので、「実験対決〇巻に書いてあったから答えられた」という話もよくしていました。『ドラえもんの学習シリーズ』(小学館)なども同様に役立っていたイメージです」(Aさん)
文字が好きすぎて生活に支障!? 読書家ならではの驚愕エピソードも
誕生日もクリスマスも本を希望することが多かったというAくん。ほかにもこんな驚きのエピソードが…!
「毎年、4月の新学期、小学校で国語の教科書が配られると、その日のうちに全部読んでしまうのが恒例。国語の授業中はほかの本を読んでいて先生にときどき怒られていたようです。いわゆる活字中毒なのでしょうか、食事中でも食卓の上に置いてある調味料の成分を熟読していることがあって怖いですね(笑)」(Aさん)
ちなみにAさん宅は新聞の購読をやめたそうで、その理由が「子どもが新聞ばかり読んで困るから」。新聞は文字数が多いので、隅々まで読むとかなりの時間を要します。しかも毎日届くのでエンドレス。新聞ばかり読んでほかのことをしなくなって困る、とのこと。代わりに毎月のニュースがまとめられた雑誌を購読することにして、時事ネタ対策として『ジュニアエラ』(朝日新聞出版)を定期購読していたそうです。
本をおかずにご飯を食べる!?……というのはBくん。
「食事のときも本を手放さないので困っています。マナー面で考えるとやめさせたいのですが、もはや習慣化してしまっていて。左手に本を持って読みながら、右手で食事をするというパターンがすっかり定着してしまいました」(Bさん)
共通点は「受験のための読書ではなかった」こと
話を聞いていると、「受験に役立てる」ことが目的の読書ではなかったというのが2人の共通点でした。
「純文学などの名作を読んでほしいと思うこともあり提案したことはありましたが、あえて大人目線で読んでほしい本をしつこく勧めることはなかったですね。小説でも漫画でも、好きな本を自由に楽しんでくれたらいいなと。受験に役立たせようという視点で本を選ぶこともなかったです」(Bさん)
「役に立つかどうか」の基準で考えてしまうと、ライトノベルより名作文学、漫画より文字の本を……とつい欲がでてしまいがちですが、やはり子どもは強制されると反発したくなるもの。幼い頃から自然に本に親しめる環境を整えつつも、子ども自身が興味のある本を開拓していくのを見守る姿勢が理想的といえそうです。
AさんとBさんのように子どもをうまく読書に導ければ理想的ですが、実際にはなかなかうまくいかないという悩みも多いかもしれません。最後に、偏差値65(四谷大塚)の進学校に合格したCさんのお母さんのお話をご紹介。
「うちの子は小さい頃から、まったくと言っていいほど本は読みませんでした。いろいろな本を図書館で借りたり書店で購入して与えてきましたが、読むのは漫画だけ……。文字の本には見向きもしないので徐々に諦め、本をすすめることはやめました。絵本の読み聞かせもはやくに断念しましたが、そのかわり積み木や知育玩具を中心に、子どもが夢中になる遊びにはとことん付き合いました」(Cさん)
中学受験生にとって読書が少なからず役に立つことはわかりましたが、一方で読書習慣がなくても、第一志望の難関校に進学したCさんのようなケースもあります。読書習慣にこだわりすぎず、本以外に向いている子どもの興味を見逃さないことも大切かもしれませんね。