韓国の節句で食べる料理をみてみよう
韓国にも二十四節気に基づいた名節(ミョンジョル)と呼ばれる数多くの節句があり、そのほとんどが今でも陰暦で行われています。各節句を祝う日が毎年違うため、年初にそれぞれの日付をカレンダーで確認することが一般的です。
ここでは、現代の一般家庭でも祝う節句や、選日に食べる節食(ジョルシク)といわれる歳時節食をご紹介します。
ソルラル(설날)
韓国で正月というと、一般的には陰暦の1月1日、ソルラルと呼ばれる旧正月。毎年この日の朝は祖先をまつる法事、茶礼(チャレ)が行われます。地域や各家庭により多少違いはありますが、以下のような食べ物が祭壇いっぱいに並べられます。
- ほうれん草、もやし、わらび、トラジ(キキョウ根)などのナムル
- ジョン(肉や魚、豆腐、串焼きなどに小麦粉と卵をつけた焼き物)
- チョギ(イシモチ)
- 肉炙(焼き牛肉)
- 梨、柿、りんごなどの果物
- ナツメ、栗
- 水キムチ
- 干しスケトウダラ
- たこ
- 蒸した豚肉や鶏肉
- 肉湯(牛肉入りの汁物)、素湯(大根などの汁物)、魚湯(小エビなどの汁物)のスープ
- 酒と米
- トックッ(餅のスープ。後述)
- シッケ(お米の発酵飲料)
料理の品数も多いうえ、肉、魚、果物、野菜、乾物、堅果などあらゆる食材が必要となるため、買い出しも大変なら、つくるのも大変。
以前は各家庭で女性が手づくりするのが当たり前でしたが、最近はインターネットや市場で出来合いのものを購入する家庭も増えました。祭祀の後は、皆そろって新年最初の食事として、これらの料理を食べます。
ソルラルに必ず食べる料理であるトックッ(餅のスープ)は、牛骨でだしをとったスープに、薄く楕円形に切った餅と、錦糸卵やネギ、海苔が入ったもの。この料理に使われる餅は、もとは長い円形をしており、食べると長生きするといわれています。つまり、トックッは長寿を祈願する意味でソルラルには欠かせない食べ物なのです。
韓国では一般的に数え年が使われているため、ソルラルに皆1つ歳をとります。そのため、韓国語の「トックッを食べる」という表現には、歳をとるという意味もあります。
チュソク(秋夕/추석)
チュソクは旧暦8月15日で、この日も祖先祭祀の茶礼(チャレ)を行います。準備する料理はソルラルとほぼ同じ。故人が好きだった食べ物を加えることもあり、家庭によって少しずつ祭壇の様子は違います。
調理法や食材によっても味は全然変わってくるので、名節の時期になると聞かれるのは「○○の家の茶礼の料理は本当においしい」「○○市場の○○という店はジョンが絶品だ」という会話です。
また、チュソクには、トックッではなく、松葉と一緒に蒸してつくる松餅(ソンピョン)という餅が祭壇に加わります。中に餡が入った半月型をした餅です。記念日やおめでたいことがあったときなどにも食べます。
最近ではソンピョンを手づくりする家庭は減り、餅専門店で購入するのが一般的に。ただ、幼稚園や保育園では、季節のイベントとしてソンピョンづくりを定番行事とするところが多くあります。
端午(タノ/단오)
韓国でも、子どもの日は陽暦の5月5日が祝日となっていますが、祭事としての端午は陰暦で行います。
この日に食べるのは、うるち米とヤマボクチという野草でつくったチャリュンビョン(車輪餅)。車輪模様を型押しした平たい餅です。全国各地で端午のイベントが行われ、この餅をつくったり、来場客に振舞われたりします。
三伏(サムボッ/삼복)
陰陽五行説では、夏季の庚(かのえ)の日を凶と考えます。そのため、夏のもっとも暑い時期の庚の3日を初伏(チョボッ)、中伏(チュンボッ)、末伏(マルボッ)の三伏(サムボッ)としており、韓国では夏バテ防止にサムゲタンやユッケジャンを食べて暑気払いをします。
特に滋養食としても知られるサムゲタンを食べる人が多く、三伏の日は全国のサムゲタン専門レストランが大繁盛。スーパーでもレトルトサムゲタンが飛ぶように売れます。三伏すべてでなくても、いずれか1日はサムゲタンを食べるという人は多く、韓国では生活に浸透した選日です。
サムゲタンというと冬の食べ物と考える人が多いようですが、韓国では夏の代表的なメニュー。熱々の鶏肉とスープを汗を流しながら食べることで、体内にこもった熱がすっきり発散できるといわれています。
冬至(トンジ/동지)
冬至には、日本ではカボチャを食べますが、韓国ではパッジュク(小豆粥)を食べます。小豆は厄除けの効果があると信じられており、引っ越しの際に新居に撒くことも。ですから、悪鬼除けの意味もこめて小豆粥を食べるというわけです。
さらに、歳の数だけ餅団子を入れて食べると、1年間、健康で暮らせるという言い伝えもあります。この日は韓国中の小豆粥専門店で、パッジュクの売り上げがアップ。幼稚園や学校の給食で出されることもあります。