「女がメニューを開いたら“はしたない”だろ?」って、理不尽すぎる。私の家族の謎ルール

東京都下にある女性だけのweb制作会社が、社員に「素手でトイレを掃除させる」動画をSNSで公開し、「花嫁修業」と表現して炎上したのは記憶に新しいところ。「ジェンダー平等」への足かせとなる悪しき習慣は、この日本にまだまだたくさんあるようです。

2016年に国連が定めた「SDGs」の目標のひとつに「ジェンダー平等を実現しよう」と掲げられて早5年。日本における男女格差は、ご存知のように、令和の時代に入ってもまだまだ目標とは程遠い位置にあります。東京都下にある女性だけのweb制作会社が、社員に「素手でトイレを掃除させる」動画をSNSで公開し、「花嫁修業」と表現して炎上したのも記憶に新しいところ。この日本には、世界が目指す「ジェンダー平等」と逆行するような慣習が存在しているようです。

女がメニューを開いたらダメ? 意味不明だった家族のルール

鹿児島県で高校生までを過ごし、現在は千葉県にお住まいの羽菜さん(仮名・33歳)は、実家での生活を振り返り「実に理不尽」と吐き出しました。
 

両親、兄、弟の5人家族。父親はいわゆる九州男児で、何か気に食わないことがあると鉄拳が飛び交うことが当たり前の生活でした。母親は暴力を止めることなく傍観するのみ。羽菜さん兄弟は、常に体のあちこちにアザができていたといいます。
 

「自分が悪いことをしたから殴られている。そう思っていたから、父親の暴力は許せました。でも、両親の異様なまでの男尊女卑な感覚だけは、どうしても許せませんでした」
 

お兄さんが高校生に、羽菜さんが中学生になった春のある日。入学祝いを兼ねて、いつもより少し高級なレストランに行くことになりました。席に着くと、ひとりひとりにメニューが配られ、羽菜さんは気分が高揚しました。
 

それまで羽菜さんの家庭では、父親だけがメニューを見て家族の注文を勝手に決めていたため「やった! 今日は自分の好きなものが食べられる!」と嬉しくなったからだというのです。さっそくメニューを見ようとすると、母親が「メニューを開いちゃダメ」と一喝。父親からは「女のクセに(メニューを見るなんて)はしたない! そんなことじゃ、将来、嫁の貰い手がなくなるぞ!」と、罵られる始末。
 

「頭の中に疑問符が湧き出すのを感じつつも、その時は仕方なくメニューを閉じ、両親の言うことに従いました。でも、何も悪いことなんてしていないのに『嫁の貰い手がなくなる』ってどういう意味なんだ!?と。同時に、理不尽な父親に従うだけで何も自分で決めようとせず、子どもも自分の感覚に従わせようとする母親に対し、じわじわ怒りがこみ上げてきたのを覚えています」
 

その後も、掃除、洗濯、炊事、買い物、来客時のお茶出し、庭掃除――そうした家事を「女だから」と自分だけが手伝わされることに、疑問しか抱けなかったという羽菜さん。高校卒業とともに奨学金で関東の大学へ進学し、そのまま就職。以来、実家に帰るのは数年に1度程度に抑え、できるだけ家族とは距離を置いているといいます。
 

「5年前に結婚しましたが、入籍と写真撮影だけで済ませ、両親には事後報告しました。電話の向こうで母が何か叫んでいたようけどすぐに電話を切っちゃったし、以後、実家には一度も帰っていないので知りません(笑)。

夫は、私を対等な人間として扱ってくれる人。何気なく家族のことを愚痴ったときに彼が言った『あなたの両親、変わってるね。僕なら、自分から食べたい物、したいことを言ってくれる女性の方が好きだけどな』という言葉に惚れて猛アピールしたんですよ。あの男尊女卑の呪縛から解き放たれて本当によかったです」
 

バイト先で言われた衝撃のひと言。イマドキそんなことある!?

東京都在住の大学生・安祐美さん(仮名・20歳)は、先日、1年間働いてきた雑貨店のアルバイトを辞めました。オーナーも店長もスタッフも基本的には良い人たちばかり。わいわいと楽しく働けていたので辞めることに多少の後悔はありましたが、「このままこの店にいたら、洗脳されそうな気がする」と思ったのだそう。
 

「オーナーも店長もスタッフもみんな中高年の女性で、若い人は私しかいない店だったんですが……なんていうか、全員が『良妻賢母教』にハマっている感じで、それがだんだん恐怖に変わっていったんです」
 

初めて違和感を覚えたのは、休憩中に雑談をしていたときのこと。安祐美さんが都内の有名大学に通っていることを何気なく話すと、店長(60代女性)が「女が学なんか身につけても、いいことなんてないわよ~」と、諭すようにして話しかけてきました。
 

「意味が分かりませんでした。でも、こういう感覚を持つ世代なのかな? そう思って、笑ってスルーしたんです」
 

しかしその後、店長をはじめスタッフたちから「勉強なんかするより、料理を覚えるべき」「学をつけるより、裁縫のひとつもできるようになるべき」「もう20歳なの? ちゃんと花嫁修業はしているの?」などと、ことあるごとに言われるようになり、だんだんと閉塞感を覚えるようになったという安祐美さん。
 

「この人たちのそばに長くいたら、価値観が古臭くなってしまうと思って辞めることにしました。オーナーから理由を聞かれたので素直に話すと『これだから学のある女はイヤなのよね』って言われて、ああ、オーナーも同類だったんだなって(笑)」
 

なるほど、これぞまさに『女の敵は女』。花嫁修業と称して旧来の型にはめようとしたり、女は男の言うことを聞くものだという価値観を植え付けようとしたり、先進国の中でも最低レベルのジェンダー格差は女性側の考え方によるところも少なからず影響している模様です。
 

今回ご紹介したエピソードを“悪しき”慣習と捉えるか否かは人それぞれながら、こうした過去の常識に立ち向かっていかないことにはジェンダー平等はかな~り厳しいかもしれません。

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