世界29の国と地域で認められている同性婚。日本では未だに認められていません。2019年に行われた全国意識調査では、回答者の約6割が、20〜30代に絞ると8割以上の人々が同性婚の法制化に賛成しています。
世論は賛成の割合が高い一方で、なかなか国は動きません。そこで2019年2月以降、複数の同性カップルらが国を相手取り提訴。2021年3月17日に札幌地裁で初の判決が下され、法律上同性のカップルが結婚できないことは「違憲」だとする歴史的な判決を勝ち取りました。
しかし、これですぐに同性婚ができるようになるわけではありません。はたして、日本ではいつ法制化されるのでしょうか。
「結婚の自由をすべての人に」訴訟では何を訴えているか
「法律上同性のカップルが結婚できないことは違憲だ」として、2019年2月14日以降、札幌・東京・大阪・名古屋・福岡の5つの地裁で提訴された「結婚の自由をすべての人に」訴訟。
原告側は、同性カップルが結婚できないことは「婚姻の自由」を保障する憲法24条や、「法の下の平等」を定める憲法14条に違反し、同性婚を法制化していない国は、職務を怠っている状態であり、原告の同性カップルらは精神的な損害を受けているとして国に損害賠償を求めています。
もちろん本当に求めているのはお金ではなく、同性カップルが結婚できないことは「憲法違反」だという判決です。
新型コロナウイルスの影響もあり、各地の訴訟スケジュールがずれ込む中、札幌地裁では裁判長の積極的な訴訟指揮もあり、他の地裁より早く、2021年3月17日に初の判決が下されました。
歴史的な「違憲判決」
判決では、法律上同性のカップルが結婚できないことは「憲法14条に違反する」という歴史的な判断がなされました。このニュースは国内外の新聞やテレビ、Webメディア等でも大きく報じられています。
原告の主張が全て認められたわけではなく、判決では、憲法24条は「異性婚」を想定しているため、同性婚を禁止はしていないが、保障しているとまではいえない。つまり、同性婚を認めていない現行の法律は、憲法24条に違反するとまではいえないとされました。
一方で、同性カップルへの婚姻を認めないことは「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反するという画期的な判決が下されました。
判決のなかで、「婚姻」の目的は、必ずしも子どもを産み育てるためだけでなく、永続的な共同生活の保障が本質であるということが示されました。
その点において、異性愛者と同性愛者の違いは「性的指向」のみであり、かつ、性的指向は性別や人種と同じように、自分の意思で変更することができない属性なので、圧倒的多数派である異性愛者の理解や許容がない限り、同性愛者が婚姻による法的利益を一切受けられないというのは、保護があまりに欠ける――これは、合理的根拠を欠く差別的取り扱いだという判断がされました。
しかし、国がこれまで同性婚を法制化しなかったことについては職務の怠慢とまではいえず、原告らへの慰謝料の支払いまでは認められないとして、判決は「請求棄却」、原告の敗訴となりました。
繰り返しますが、原告らが求めているのはお金ではありません。形式的には敗訴ですが、「実質的勝訴」判決となったのです。
冷静な判決、より踏み込んでほしかった点
今回の判決に対し、専門家も「法解釈のあり方としても極めて論理的で順当な判決」「現段階での最善のロジック」と評価しています。
判決では、同性婚反対派の意見も考慮する必要があるとしつつも、あくまで「限定的」で良いという点が示され、同性カップルをどのような法律によって保障するかは国会に立法の裁量があるとしつつ、異性愛者と同性愛者を区別して扱うのは「真にやむを得ない場合のみ」に許されるということが指摘されています。
法律婚をすると、相続や配偶者控除など、さまざまな法的な利益を受けることができますが、判決では、婚姻というのは法的な利益“だけ”ではなく「身分行為」であることも示されました。必ずしも「パートナーシップ法」など、婚姻とは別の法律で認めたらそれでOKといっているわけではない、ということがわかります。
反対派も含め、各所に気を配った冷静かつ正当な判決だという評価の一方で、もっと踏み込んだ判断があってもよかったのではという声も上がっています。
例えば、憲法14条は、すべての“国民”は法の下の平等だと定められていますが、最高裁は「外国人」にも適用されると判断していることから、憲法24条の「婚姻の自由」が同性カップルにも類推適用が可能ではという指摘がされています。
他にも、同性婚に関する議論は、ごく最近にはじまったことではなく、これまで十分に議論の時間があったにもかかわらず国は法制化しなかったことは「職務怠慢」だとして、国家賠償が認められてもよかったのではないかという指摘もありました。