ハイブリッド型総合書店のhontoが、2020年の書籍販売冊数が前年度に比べて約20%アップしたことを発表。コロナ禍における巣ごもり需要の影響が感じられる結果となりました。
ゲーム本は「あつ森」、漫画本は集英社が牽引
書籍ジャンルの中でも、特に販売冊数の伸び率が高かったのはゲーム本でした。前年比はなんと147%。『あつまれ どうぶつの森』関連本が1位を含めてトップ10に3冊ランクインしました。
人気シリーズ待望の新作というだけでなく、巣ごもりで打ち込める時間ができたこと、外出自粛の状況でもゲーム上では友だちとコミュニケーションできたことも人気の理由と考えられます。
漫画本ジャンルも好調で、2019年からヒットが続く『鬼滅の刃』がトップ10を独占。前年比122%の販売増を牽引しました。
さらに『SPY×FAMILY』『呪術廻戦』なども人気を伸ばし、上位50位中48作品を集英社作品が占めるという圧倒的な人気を見せつけました。
また、漫画本ジャンル全体の電子書籍の伸び率を年代別に見ると、10〜30代では前年と同じか下回った一方で、逆に40~60代では前年よりも上回るという結果に。
これは『鬼滅の刃』が社会現象ともいえる大ヒットを記録して書店でも売り切れが続いたことで、普段電子書籍を読まない世代が読むきっかけになったとも考えられます。
『ペスト』や手作りマスク本がコロナ禍の流行に
文庫/一般本ジャンルは、前年比115%。本屋大賞受賞作や人気著者を抑えて、コロナ禍を想起させるカミュの不条理小説『ペスト』が第1位に。2位に1.5倍の差をつける販売数で、まさに2020年を象徴する一冊となりました。
コロナ禍ならではの流行は、工作・手芸・クラフト本ジャンルでも見られました。前年比131%でトップ10に「手作りマスク」関連本が3冊ランクイン。マスク不足をきっかけに、自宅で簡単に作れる型紙のついたムック本などが人気を集めました。
ソロキャンプ本が人気でも「旅行本」は不振
趣味・ホビー本ジャンルは、前年比122%。外出自粛の中でも自宅で楽しめる記憶力ドリル本やスケッチ関連本などが上位にランクイン。
また、カメラやソロキャンプ関連本も人気で、複数人で出かけられない状況で一人で楽しめる趣味を求める人が増えたことが読み取れます。
一方で、旅行・地図本ジャンルでは販売冊数が前年比70%まで落ち込みました。特に「海外旅行ガイド」と「旅行会話」の低下が著しく、緊急事態宣言下での渡航制限の影響が見られます。
しかし、その中でも「国内旅行ガイド」は前年比86%と健闘。これはGoToトラベルキャンペーンで国内旅行の需要が高まったためでしょう。
巣ごもりが生んだ「読書トレンド」は今後も持続?
このようにコロナ禍で打撃を受けたジャンルもありますが、全体の販売冊数としては前年度比で約20%アップ。前年度比100%と横ばい成長だった2019年に比べるとかなりの伸び率です。
巣ごもりで時間ができたからといって、スマホや動画などと可処分時間を取り合う状況は同じはず。にもかかわらずこの結果は、読書離れや出版不況が取り沙汰される昨今でも「時間があれば本を読む人はいる」ということを示唆しているともいえます。
巣ごもりが生んだこの「読書トレンド」を持続できるかが、出版業界の今後の課題かもしれません。
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