織田信長の長女・徳姫(おごとく)は、姑(徳川家康の嫡男である松平信康の母)との関係悪化が原因で夫と不仲になってしまったことを記した手紙を信長に送ったといいます(その後、夫と姑は信長の命により殺害されたという伝承も!)。いつとも分からぬ昔から、「嫁vs姑」間バトルは行われてきましたが、その陰で見逃されがちなのが「嫁母vs姑」間に勃発する闘いの数々。今回は、自分の母親と姑の間に火花が散った瞬間を見た女性の、どこか切ないような怖いような体験談をお届けします。
義実家と実家。ともに良好な関係を築いていた
東京都在住の和葉さん(仮名・42歳)は、20代で結婚した同い年のご主人とふたり暮らし。同郷のふたりは学生時代から付き合って結婚した、現代では珍しい「初恋を実らせた夫婦」だといいます。お子さんはいませんが、その分夫婦仲はよく、40歳を越えた今でもいわゆる“ラブラブな生活”を送っているのだとか。
「義実家とはつかず離れずの適度な距離を保っていて、子どもがいなくても『孫はまだ?』攻撃もなし。おかげで関係はとても良好。ああ夫と結婚できて本当によかったと毎日感謝しています。義実家に対して敢えて不満をあげるとしたら、義母がとてもおしゃべりで、話相手をしていると小一時間で疲れてしまうくらいなものでしょうか(笑)。年金でつつましく暮らしてくださっているので、私たち夫婦が仕送りする必要もないし、あれこれ呼び出されて難題を吹っ掛けられることもありません。本当に素晴らしい義両親だなあと思っていました」
同時に、実家の母親はとても面倒見の良い性格で、言葉足らず・コミュニケーション足らずな和葉さんに代わって、義実家に贈り物をしてくれたり、マメに電話してくれたり。義両親も和葉さんのお母さまと打ち解けた様子だったそう。
それが昨年、コロナ禍で里帰りを自粛していた和葉さんご夫婦は、入院している父親の見舞いを兼ねて、短期間で里帰りすることになりました。その際、和葉さんの実家に義両親を呼んで食事会を開くことになったといいます。
「料理好きな義母は、私たちが義実家に伺う際には野菜たっぷりの煮物や、きんぴら、サラダ、炊き込みごはんなどヘルシーな料理をたくさん作って待っていてくれるんです。お味はいわゆる家庭料理のレベルですが、それでも、作ってくださる気持ちがうれしくて、いつもありがたくいただいていました」
とはいえ、毎回甘えてしまうのは心苦しいもの。たまにはお義母さんがラクできるように食事会の日はお寿司でも取ろうか?と、ご主人と話し合った和葉さん。その旨をあらかじめ伝えていたにもかかわらず、大量の手料理を抱えて待ち合わせの1時間以上も前に義父母が現れたのです。
「母と私が慌てて食器を用意しようとすると、義母は『コロナ禍で感染が怖いから、コレ、持ってきたのよ』と、カバンから割り箸や紙皿、紙コップを取り出したんです。さすがに、お客様に出すのに紙皿は……と思っていると、母も同じことを感じていたようでした。落としどころをどうしようか思案していたところ、母が『じゃぁ、取り皿はありがたく紙皿を使わせてもらいますね。でもお茶くらいは、湯飲みを使いましょうよ』と提案してくれたんです」
しかし義母は頑なに湯飲みの使用を嫌がり、結果、和葉さんのお母様と義父のふたりが湯飲みを、気を遣った和葉さんと義母さんのふたりが紙コップを使ってお茶を飲むことになりました。そこに、用事で出ていた和葉さんのご主人が戻ってきたといいます。
「義母が夫に紙コップを差し出すと、夫は怪訝な顔で『なんで紙コップ?』とひとこと。義母が感染を気遣って持ってきてくれたことを説明しようと口を開きかけた瞬間、義母は、『だって、さっきからずっと待っているのに、湯飲みが出てこないんだもの!』と……信じられない言葉を発したんです」
その瞬間、隣に座っていた実母に、緊張にも似たピリリとした感情が走るのを感じたという和葉さん。その後、ご主人は自分で湯飲みを取りに行き、その場は何もなかったかのように取り繕われたといいますが、今後、義母vs実母のバトルが勃発するのでは……!?と、和葉さんはやきもきしているそう。
「義母の言葉を聞いた瞬間、ビキッと音を立てたように、母の笑顔が凍り付いたのを見てしまいました。私の母……外面は良いのですが、実は気性が荒いんですよ。義母がなぜあんなことを言ったのかは、理解に苦しみます。頑なに紙コップを離さなかったのは自分のほうなのに。しかも……私の母は攻撃してくる相手には手を緩めることのない、いわゆる『敵にしてはならない人』なので……今後のことを考えると気が重いです」
思わぬ義母のひとことが、これまで良好だった関係にいらぬ風穴を開けてしまったかも!?と、コロナ禍とはまた別の不安を抱えてしまったという和葉さん。実は「嫁vs姑」以上に根深いかもしれない「嫁母vs姑」問題。触らぬ神に祟りなしという言葉に従い、コロナが収束するまで里帰りせず、火に油を注がないようにするしかないかもしれません。