球界を代表するエースたちが海を越える
プロ野球界にとって激動の年となった2020年シーズンもようやく終了。ストーブリーグに突入しました。各チームとも戦力強化に余念がありませんが、その中で注目を集めているのがメジャーリーグへの移籍を狙う選手たちの動向です。
今年は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた年ですが、それはアメリカのメジャーリーグでも同様。本来なら162試合行うレギュラーシーズンは半分以下の60試合に短縮されるなど、日本以上に影響を受けたといっても過言ではありません。
それだけに今オフは日本からメジャーへ挑戦する選手が少ないと予想されましたが……それでも夢を叶えたいということで、日本ハムからエースの有原航平、リードオフマンの西川遥輝がそれぞれポスティングシステムを申請。さらに巨人をリーグ優勝に導いた菅野智之もポスティングシステムを申請してメジャー移籍を目論んでいるという報道が出ました。
球界を代表する選手たちのメジャーリーグ挑戦となるだけに気になるのはその移籍先。いったいどのチームがベストなのでしょうか……?
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まずはポスティングシステムの申請を出した2選手の直近3年の成績を見てみましょう。
▼有原航平と西川遥輝の直近成績
年 | 有原航平 | 西川遥輝 |
---|---|---|
2018年 | 20試合登板8勝5敗2S 防御率4.55 | 140試合 打率.278 10本塁打 48打点 44盗塁 |
2019年 | 24試合登板15勝8敗 防御率2.46 | 142試合 打率.288 5本塁打 41打点 19盗塁 |
2020年 | 20試合登板8勝9敗 防御率3.46 | 115試合 打率.306 5本塁打 39打点 42盗塁 |
通算成績 | 129試合登板60勝50敗2S 防御率3.74 | 1097試合 打率.286 5本塁打 346打点 287盗塁 |
2014年からレギュラーに定着し、3度の盗塁王に輝いた西川と比べると、有原は在籍6年で60勝とコンスタントに2桁勝利を挙げた一方、エースとして大活躍を収めたのは2019年のみ。それだけにメジャーは少々時期尚早にも感じられますが、実はメジャーリーグの各チームからしたら、西川よりも有原の方が高く評価されています。
というのも、毎年のようにFA選手が大量に市場に出てくるメジャーリーグでは、試合を作れる先発投手は喉から手が出るほど欲しい存在。故障とも無縁ならばなおさらです。それだけにシーズン平均10勝を挙げられる有原のような安定感のある投手なら人気になることが予想されます。
さて、気になるのが有原の移籍先。有力とされているのがテキサス・レンジャーズ、そしてサンディエゴ・パドレスです。
レンジャーズはエースのランス・リン、ジョナサン・ヘルナンデスがローテーションを守りましたが、3番手以下の投手が不在。サイヤング賞2度の実績を誇るコリー・クルーバーを昨季はトレードで獲得しましたが、故障のため1イニング投げただけでシーズンを終えて、FAで退団が濃厚とまともに先発ローテーションが組めないため、有原の存在は魅力的に映っていることでしょう。
そしてサンディエゴ・パドレスは今季14年ぶりにポストシーズンに進出するなどチームは上り調子で、先発投手陣も今季7勝を挙げた27歳のザック・デビースをはじめ、20代の先発投手が3人もローテーションに名を連ねている状況です。
有原が先発ローテーションに定着するならば、レンジャーズの方がよさそうですが、チームの戦力を考えるとワールドチャンピオンはおろか、地区優勝すら怪しい状況。ワールドチャンピオンを目指すのであれば、今が旬とも言えるパドレスがオススメ。本来ならエースクラスの活躍が期待されていたマット・クレビンジャーが今オフにトミー・ジョン手術を受けて来季は絶望となっただけに、先発ローテーションの枠も1つ開いて追い風が吹いています。
スピードスター・西川遥輝の移籍先は……
有原とともにポスティングシステムを申請してメジャー移籍を目指すのが西川遥輝。俊足で出塁率も高い選手なので需要は高そうに映りますが……投手ならいざ知らず、日本人野手は近年不振の傾向。昨オフにメジャーへ移籍した筒香嘉智、秋山翔吾らがレギュラーに定着できず、打率も.250すら超えないという成績に終わったことを考えると、日本人野手の需要が減ってきていることは必至と言わざるを得ないでしょう。
さらに筒香や秋山はNPB時代に打撃タイトルを獲得した経験がありますが、西川はキャリアハイの打率でも.314(2016年)止まり。打撃面がどうしても物足りなく映るだけに、西川は現地ではユーティリティプレーヤーとしての起用が濃厚とされ、メジャー契約がもらえれば御の字という声もあるほどです。
そんな西川に興味を示しているのが現在、ダルビッシュ有が在籍しているシカゴ・カブス。左打ちの外野手という点ではカイル・シュバ―ワー、ジェイソン・ヘイワードらがいるので西川の出番はかなり限定的になりそうですが、俊足で好出塁率の選手をサブにできるのはチームにとって魅力的と考えている様子。さらに有原と比べると比較的廉価での獲得が可能という点も、コロナ禍で補強費用があまり多くない今季のフトコロ事情にもマッチしているでしょう。
菅野智之は動向次第では大型契約可能!?
ここまではポスティングシステムをすでに申請した2選手を中心に解説してきましたが、今オフにはもう1人、ポスティングシステムを申請して海を渡ろうとしている大物投手がいます。巨人のエース、菅野智之です。
▼菅野智之の直近成績
年 | 菅野智之 |
---|---|
2018年 | 28試合登板15勝8敗 防御率2.14 |
2019年 | 22試合登板11勝6敗 防御率3.89 |
2020年 | 20試合登板14勝2敗 防御率1.97 |
通算成績 | 196試合登板101勝49敗 防御率2.32 |
最多勝、最優秀防御率をともに3回ずつ獲得し、沢村賞も2度受賞と球界を代表する投手となった菅野。かねてからメジャーで投げたいという思いがあったとのことですが、原稿執筆時点(12/7現在)ではまだポスティングシステムの申請はなし。巨人としては残留を希望していることもあり、かなり揺れてはいますが……仮にポスティングシステムを申請した場合、菅野ならば大型契約が望めるうえ、強豪チームからのオファーも殺到することでしょう。
その筆頭格となっているのが、ニューヨーク・ヤンキースです。
田中将大が在籍していることで日本の野球ファンにもお馴染みのヤンキースですが、先発投手陣はゲリット・コール以外、今オフでFAに。田中将大は残留予定とされていますが、それでも心もとないということで市場に出てくれば菅野にも食指を伸ばしてくることでしょう。
また、先発投手が足りていないという理由で先述のレンジャーズも候補となりますが、「菅野ならば」ということで参戦しそうなのがオークランド・アスレチックスとサンフランシスコ・ジャイアンツです。
アスレチックスはビリー・ビーンGMが提唱する「マネーボール理論」によってチームを編成してきたため、高額な選手には縁のないチームでしたが、ここ2年連続でプレーオフ敗退という現状を重く見たチームは今オフ、大型補強も辞さない構えとされています。アスレチックスの本拠地であるオークランド・コロシアムは投手に有利な球場なので、菅野には追い風となりそうです。
そしてアメリカのジャイアンツも有力候補。ジョニー・クエイトら有力な先発投手を多くそろえていましたが、今オフは先発投手陣が3人もFAで流失濃厚という状況。日本人選手をあまり獲得してこなかったチームですが、現在のGM、ファーハン・ザイディは日本はもちろん、アジア球界の有望選手の獲得を示唆しているため、菅野がアメリカでもジャイアンツのエースになる可能性があります。
今オフも彼らの動向が見逃せない!
いかがでしたか? 日本の球界を代表する選手たちだけに引く手あまたとなりそうで、今オフは彼らの動向から目が離せなくなりそうです。
果たして2021年の開幕日、彼らはどこのユニフォームを着ているのでしょうか?