「出場機会を求めて」遠藤保仁がJ2ジュビロへ移籍
J1リーグのガンバ大阪に在籍する遠藤保仁が、10月5日にJ2リーグのジュビロ磐田へ移籍することを発表した。来年1月31日までの期限付きの移籍だが、実に20年にもわたって所属したクラブを離れることとなった。
プロ23年目で40歳の遠藤は、J1通算歴代1位の641試合出場を誇るミッドフィールダー(MF)である。日本代表としても2006年、10年、14年と3度のW杯に出場してきた。
10月3日までに20試合を消化したJ1リーグでは、11試合に出場。しかし、先発出場はわずかに3試合にとどまっていた。
一方のジュビロは、1シーズンでのJ1復帰を目標に今シーズンを戦ってきたが、10月4日の第24節終了時点で13位に甘んじている。J2は22チームで争われているので、中位に低迷している状況だ。
今シーズンのJ2は、上位2チームがJ1へ自動昇格する。これまでは3位から6位による昇格プレーオフも開催されてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大で日程が詰まったため、今シーズンは行なわれない。J1昇格は例年以上に難しいのだ。
そこで、残り18試合で2位以内へ食い込むために、ジュビロは経験豊富な遠藤にオファーを出した。「試合にたくさん出場したかった」という遠藤は、「簡単な決断ではない」なかで新天地を求めることを選んだのだった。
Jリーグをめざして刺激しあった「黄金世代」
1979年4月から80年3月生まれの学年は、サッカー界で「黄金世代」と呼ばれる。中学1年生時にJリーグが開幕した彼らは、プロ選手になることを現実的な目標として育ち、中学・高校生年代から体系化された指導を受けてきた。日本サッカーがアジアの強豪の仲間入りを果たし、W杯に出場することが当たり前となったJリーグ開幕以降の歴史は、その大部分が彼らの世代によって作られてきたと言ってもいい。
同時期に出現した素晴らしい才能は、互いを刺激し合いながらキャリアを築いていった。99年のワールドユース(20歳以下世界選手権)で準優勝を飾ったメンバーでは、ゴールキーパー(GK)南雄太(横浜FC)がJ1で、MF小野伸二(FC琉球)がJ2で、MF稲本潤一(SC相模原)がJ3で、それぞれプレーしている。
また、フォワード(FW)の高原直泰と永井雄一郎も、J3より下のカテゴリーで現役を続けている。ワールドユースのメンバーではないが、J1の鹿島アントラーズでプレーする曽ヶ端準も「黄金世代」のひとりだ。曽ヶ端らと鹿島でプレーした本山雅志は、昨シーズン限りで現役を退いているものの、来シーズンの復帰を目ざしてコンディションを整えている。
「サッカーが好き」という真っすぐな気持ちを支えに
ベテラン以上と言っていい年齢で現役を続けているのは、「黄金世代」だけではない。J1リーグ横浜FCのカズこと三浦知良は、9月のリーグ戦で53歳6か月のJ1リーグ最年長出場記録をマークした。チームメイトの中村俊輔も、同じ試合で歴代4位となる42歳2か月でのリーグ戦出場を記録している。
今シーズンのJリーグで言えば、J1、J2、J3を問わずに日程が過密になっている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う中断があったためで、総力戦の色合いが例年以上に強い。ベテランや若手の力が必要な場面もまた、いつも以上に多いと言うことができる。
選手寿命が延びていることについては、スポーツ医療の進歩が欠かせない。Jリーグ開幕当時は原因不明だった痛みのメカニズムで、現在は解明されているものは数多い。
選手個々のコンディションに対する意識も高い。
飲酒や喫煙をしないのは言うまでもなく、食事なら「何を、いつ、どれぐらい食べるのか」を考えるのは当然の自己管理だ。睡眠なら時間を確保するのは大前提で、リラックス効果を高めるための空間作りや寝具などにこだわる選手もいる。
そのうえで、ベテラン選手が現役を続ける原動力とするのは「飢え」だろう。「もっとうまくなりたい」とか「サッカーが好きだ」といった思いは、シンプルゆえに揺らぎがない。
「うまくなりたい」から時代の変化を受け入れ、過去の自分に固執しない。ピッチに立てば経験や実績を脇に置いて、チームの一員としての役割を全うする。53歳のカズは、自らが得点を奪えなくても味方のために身体を張る。芸術家肌のMFである42歳の中村は、攻撃だけでなく守備にも懸命に汗を流すのだ。
そのなかで、自分らしさを忘れない。チームが勝つために必要なプレーを心がけながら、ファンが求めるプレー、自分が輝けるプレーも見せようとする。
カズや中村、遠藤らがピッチ上で見せる輝きは、熟成されたワインのような深い味わいがある。シーズン終盤の重要な局面で向かっていくJリーグで、彼らの名前を耳にする機会が増えていくに違いない。