大物の退所が続く、ジャニーズ事務所…その原因は

写真提供:ピクスタ

9月20日、少年隊の錦織一清さんと植草克秀さんが今年いっぱいで所属事務所のジャニーズ事務所を退所することが発表された。以後もグループ自体は存続するということだが、1985年のデビュー以来35年にわたってジャニーズ事務所の看板として活躍してきた少年隊に起こったこの異変に衝撃を受けた方は多いと思う。

ジャニーズ事務所の創業者であるジャニ―喜多川さんが亡くなったのは昨年の7月9日。あれからまだ1年と少しだが、その間に退所した大物は数多い。元・関ジャニ∞の錦戸亮元さんに始まり元・SMAPの中居正広さん、NEWSの手越祐也さん、そしてTOKIOの長瀬智也さん……。円満から不祥事まで理由や背景はそれぞれ違うが、錚々たる面子が櫛の歯が抜けるように退所してゆくのはいったいどういうわけだろうか。
 

芸能界の価値観をゆるがす「環境の変化」

大きな原因は2つある。芸能界をとりまく「環境の変化」と長年男性アイドルシーンを独占してきたことによる「飽き」だ。

まず1つ目の「環境の変化」とは、おそらく読者のみなさんも感じ取っているエンターテインメントのオンライン化、CtoC化だ。現代では資金やコネクションを持たない個人やグループでも、YouTubeやTwitter、TikTokなどのSNSを利用すれば多くのファンを獲得できる。大手芸能事務所やレコード会社など、既存の芸能界のシステムを経由する必要性が薄れているのだ。

既存の芸能界の価値観では「ユーチューバー≠芸能人」だろうが、先入観のない子供や10代の若者からしてみればスマホを通して楽しさや感動を提供してくれる存在こそが芸能人に他ならない。ジャニーズ事務所はタレントの画像をインターネット上に掲載することを長く禁じてきたこともあり、こういった変化への対応はまだまだ遅れていると感じる。
 

タレント自身にも影響をおよぼす「飽き」

そして2つ目の「飽き」だが、これは1960年代~1970年代にかけてザ・ドリフターズや布施明さんや沢田研二さんなど人気歌手、人気タレントを多数輩出し、テレビ番組を独占した渡辺プロダクションがホリプロダクションやジャニーズ事務所の台頭で衰退したように、トップに立ち、あまりにも市場を独占しすぎた芸能事務所は遅かれ早かれ飽きられる。自然の理というわけだ。

この飽きはファン層だけでなく、所属タレント自身にも起こるから恐ろしい。そこに所属していることがなんだか格好悪く、不自由なことのように感じられるのだ。タレントという人種はそもそも自立心が強く、時流の移り変わりに敏感なもの。それでもジャニーズ事務所におけるジャニーさんのように、自分を芸能界にいざなってくれた恩人が現役の間はどうにか抑えがきくものだが、その制約がなくなってしまえば、後はいかんともしがたいものである。おそらく今後もジャニーズ事務所からの退所組は加速度的に増えてゆくことだろう。
 

ジャニーズ事務所が取るべき解決策は?

いささか厳しい見解となってしまったが、僕はけっしてジャニーズ事務所が嫌いではない。むしろ、世界中どこにもない日本ならではのエンターテインメント文化の母体として、今後も長く続いてほしいと願っている。そのために今後のジャニーズ事務所が取るべき道はなにか?それは手広く芸能界を独占するアイドル事務所から、一代の天才芸能プロデューサーだったジャニーさんが創りだした独特の様式美を伝えるアイドル劇団へとソフトランディングしてゆくことだと思う。先例ならある。宝塚歌劇団だ。

晩年のジャニーさんは若手のジャニーズJr.によるミュージカルの演出、プロデュースに熱心だったという。ジャニーさんが芸能ビジネスに打って出たきっかけはブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド物語」のように歌って踊れるグループを作るというものだった。ジャニーズ事務所自体は時代の変化に応じ、大衆音楽、ドラマ、バラエティーと幅を広げて大成功をおさめたのだが、高齢になり自分が手がけてきた仕事の原点を見つめ直していたのだろう。そして、そこへの回帰、集約こそが今後の激変の時代においてジャニーズ事務所がその名誉を損なわず、長く芸能界に残り続ける術だと思っていたのではないだろうか。

ジャニーズ事務所は今後どのような方向に舵をきってゆくのだろうか。愛をこめてその行方を見つめてゆきたいと思う。