最近なにかと話題に上るのが「行き過ぎた」人のおはなし。コロナ対策として過剰な消毒を行い手がボロボロになってしまった、ロックダウンジェラシーが行き過ぎてSNSで毒を吐きまくってしまった、ゲームにのめり込み過ぎて給料のほとんどを課金してしまった……そんな、歯止めが効かなくなってしまった人が増えています。
今回は、そんな経験を持つ男性のお話をば。はてさて。彼らは何を“行き過ぎ”てしまったのでしょうか。
埼玉県在住・俊雄さん(52歳)の場合
長引く自粛生活により、趣味だった登山に行くことができなくなったという俊雄さん。体を動かすことができる趣味を探そう。そう考えていた矢先、農業を営む知人から小さな畑を借りたことから、小さな家庭菜園を手掛けることになりました。
トマト、ナス、きゅうり、ピーマン、オクラ、とうもろこし……と、思いつく限りの苗をその畑に植えた俊雄さんでしたが、梅雨明けから晴天が続いたおかげで、驚くほど収穫があり、家庭菜園の沼にハマってしまったといいます。
「自分で育てる喜びっていうんですかね。もともと登山が趣味で、野草とかそういうのには興味を持っていたんですが、育ててみると野菜にも種類や品種によって個性があって、それに合わせて育ててあげるのがものすごく楽しいんですよ。なので、もうちょっと本格的にやってみようと思い、知人のアドバイスの元、家から車で20分ほどのところにある休耕田を購入。今はちょっとしたサイズの農園づくりに勤しんでいます」
しかし、あまりにも畑に時間を割いてしまうため、奥様は猛反対。また、食べきれないほどの野菜を収穫して帰ると「こんなにあっても、腐らせるだけなのに!」と奥様から苦情が絶えません。そのため喧嘩が絶えず、今、俊雄さんは離婚の危機にあるといいます。
「自分が悪いのはよくわかっているんです。朝4時に起きて畑に行き、そこから会社へ。夜も定時で上がってから畑に行き、懐中電灯の灯りを頼りに畑を耕す毎日。土日はほぼ1日中畑にいるので、妻や子供たちとの会話がほぼゼロになってしまったんですよ……」
現在は休耕田の半分ほどを耕し終え、白菜やカリフラワー、玉ねぎ、ごぼうといった野菜の植え付けを行っている真っ最中。奥様の反対を後目に、こっそりと家を出て、少しずつ葉を伸ばしゆく野菜たちを愛でるのが日課になっているといいます。
「もうね、妻が本気で離婚したいなら、それもいいかな、って思うようになってきました。ま、悪いのはコロナですから! そうですね、もしも離婚したら……畑の隅に小さな掘立小屋でも立てて、そこに住んでもいいかな。今の夢は、道の駅に僕の作った野菜を並べてもらうことですから!」
愛知県在住・孝弘さん(44歳)の場合
「娘への干渉が止められないんです……」
コロナ禍により家族と一緒に過ごす時間が増えたことから、これまでほどよい距離を保っていた中学生の娘さんに対し、何かと世話を焼いてしまうのだと孝弘さん。
「3月末からテレワークになったのですが、目の前に娘がいたので、その一挙手一投足までが気になるようになってしまいました。家から中学校までは歩いて15分ほど。授業が終わってまっすぐ帰ってくれば、毎日、同じ時間に家に着くはずですよね。それが、5分でも遅れたらもう、いてもたってもいられなくて……つい、中学校まで娘を迎えに行っちゃうんですよ」
「恥ずかしいからやめて!」と。何度となく娘さんから注意されているという孝弘さんですが、どうしても自分自身を止めることができず、その行為はエスカレートするばかり。
「娘がお風呂に入っている間に、カバンとスマホをすべてチェック。娘の制服のポケットの中も探り、危ない目にあっていないか、いじめられていないか、彼氏ができていないか、そうしたことをチェックしています。妻にバレないよう、トイレに行くフリをして娘の部屋をガサ入れしているんですが、バレたらたぶん、怒られるだけじゃすまないでしょうね。
実は……先日、娘が友達と一緒に名古屋に買い物に行ったときに、後ろからこっそりついて行ってしまったんです。残念ながら途中で見失ってしまったのですが……そのときは、本当に気が狂いそうになりました。慌ててあちこち探しまわったのですが、見つけることができなくてとぼとぼと家に帰りました」
そんな孝弘さんの最大の悩みは、10月からテレワークが終了し、通常出勤に戻るということ。これまでのように娘さんに干渉することができなくなる。そう思うだけで、キリキリと心臓が締め付けられるような思いがするといいます。
「俺、きっと、頭がおかしいんだと思います。コロナがなければこんなことにならなかったのに……って、今はただただ、コロナが憎いです。メンタル系の病院に行ったほうがいいんですかね……」
東京の医療情報提供サービス会社「eヘルスケア」が全国の医師に行った調査によると、コロナ禍による生活環境の変化を受け、精神疾患を訴える人が増えているとのこと。今回お話をお聞きしたおふたりも「コロナのせい」と強調していましたが……果たして、原因は本当にコロナなのやら……。