地獄の入り口と思いきや…同居義母が「スーパーおばあちゃん」だった

結婚して世帯を持った夫婦は自分たち家族のみで暮らし、同居を避ける傾向にあります。ところが、いざ同居を始めてみたら意外にも生活が快適になったというケースもあるようです。

厚生労働省政策統括官が発表した「グラフでみる世帯の状況」(平成30年発表)によれば、昭和61年には子世帯と同居している65歳以上の割合が46.7%と圧倒的多数だったのに対し、平成28年には11.4%と大幅に減少。結婚して世帯を持った夫婦は自分たち家族のみで暮らし、同居を避ける傾向にあります。

政府はこうした風潮に危機感を抱き、三世代同居や近居を支援する制度を打ち出していますが、嫁姑問題など人間関係の煩わしさから同居を望む声は年々減少を続けています。
 

いまどき同居? 結婚10年目に起きた青天の霹靂

栃木県にお住まいの桑田咲都子さん(仮名・42歳)は、友人の紹介で出会ったご主人と今から10年ほど前に結婚。現在は専業主婦となり、早朝から夜遅くまで働くご主人と、小学校1年生になったやんちゃな長男、幼稚園に通うおっとり長女、3人の世話に明け暮れる毎日でした。
 

「ある日夫が、神妙な顔つきで『今日の夜、大事な話があるから……』って、仕事に出掛けていったんです。何の話!?と思って私は1日中ドキドキ。戻ってきた夫から『実家をリフォームして、母さんと同居したい』と言われ、青天の霹靂でした」
 

お姑さんとの仲は決して悪くはありませんでしたが(お舅さんはすでに鬼籍)、結婚してからは年に1~2度しか顔を合わせることもなかった咲都子さん。(お姑さんにとっての)孫が生まれてからもその回数は増えることなく、咲都子さん自身は、義母さんは冷たい人なのかな?それとも淡泊な付き合いが好きなのかな?と、なんとはなしに違和感を感じていたといいます。

それだけに同居生活を想像することがまるでできず、また、周囲にも同居しているママ友が誰もいなかったため「同居なんかしても絶対にうまくいくわけがない!」と、ご主人に正直な気持ちを打ち明けました。
 

「でも、夫は『同居は俺が決めたこと。無理だというなら離婚してもらうしかない』とけんもほろろでした。子どもがいるので離婚はしたくありませんでしたし、夫がそこまで言うのなら……と、渋々ながらに同居を始めることになったんです」
 

そうして始まった同居生活は……地獄ではなく天国だった!?

義実家のリフォーム(予算が足りず、水回りは共同)が終わり、いよいよ同居生活初日。玄関先でお姑さんにあいさつをするも、小さな声で「よろしくね」というひと言をかけられたのみ。最初のうちは不安でいっぱいだった咲都子さんでしたが、だんだん「あれ?」と思うことが増えていきました。
 

「なんていうか……私、義母のことを誤解していたことに気付いたんです。義母は言葉が少なく表情も豊かではありませんが、こちらの気持ちをそっと汲み取って、先手を打ってあれこれ手をまわしてくれる、社会人だったらものすごい優秀な人なんじゃないの!?っていうタイプだったんです。
 

私が家族の引っ越し荷物を片付けながら、肩が凝って首をコキコキ言わせているとコーヒーを淹れて無言でマグを手渡してくれたり、夕飯やお風呂の準備をいつの間にか済ませていてくれたり。夫のお弁当の用意や、子どもたちの面倒まで、私が引っ越し荷物の片付けだけに専念できるように様々なことを“こっそり”と助けてくれたんですよ」
 

同居が進むにつれ、さらにお姑さんのありがたみが分かるできごとがありました。
 

「同居からひと月ふた月経ったある日、ふと気付いたんです。義母は何か用事があると、すべて、息子である夫に対して申し付けるんですよ。『買い物に行きたいから、週末は車を出してちょうだい』『栗ご飯が食べたいわねぇ。でも手が動かないから、はい、皮剥きよろしくね』『このごろ夜、トイレに起きることが増えたのよね。悪いけど今すぐホームセンターに行って、センサーで灯る明かりを買ってきてちょうだい』『お母さんね、孫の勉強を見てあげたいんだけど、よく分からないところがあるのよね。だから、ハイ、この教科書を読んで要点を聞かせてちょうだい!』って」
 

今や、お姑さんナシでは成り立たない家族に……!

咲都子さんのご主人は、実はこれまであまり家事を手伝うことなく、育児にもほとんど手を出すことなく過ごしてきたといいます。子どものおむつを1日に1度替えただけで「俺ってイクメン♪」とふんぞり返るようなタイプだったため、咲都子さんもご主人の協力はとうに諦めており、今回の同居にあたっても「ああ、どうせ私の負担が増えるだけなんだろうな」と思っていたのだとか。
 

「栗を剥けと言われた夫が『栗ごはんいいね~。分かったよ。はい、やっといてね!』と、そのまま私に手渡すと、義母はサッと私の手から栗の入ったザルを取り上げ『私は、おまえに頼んでるんだよ』と、夫に再び手渡すんです。
 

息子の教科書を読めと言ってきたときも、夫が面倒くさがって私に丸投げしようとしたのですが『私は、おまえに聞いてるんだよ』と。一事が万事そういう感じで、義母がうまく采配して、夫にあれこれと家事や育児を割り振ってくれたんです」
 

お姑さんから用事をあれこれ言いつけられるため、のんびりする時間がなくなり、はじめはイヤイヤながらにやっていたというご主人。しかし、自分から同居を言い出したため逃げることもできず、今では家事・育児に慣れ、すっかりいい夫・よき父になってきているのだとか。
 

「義母との同居生活が天国過ぎて、世間一般のネガティブなイメージに怯えすぎていたことを反省しています。もっと早く同居していれば……という後悔すら浮かんでくるほど。お義母さんの性格にもよるのでしょうけれど、『同居してラクがしたい』と思っていないお義母さんであれば、進んで同居を選択してもいいんじゃない?と今は思います」
 

嫁と姑の壮絶なバトルなど、“負”の側面ばかりが取り沙汰され、なぜか疎まれるばかりの同居生活ですが、良いお姑さんに当たれば、快適な生活が待っている模様。咲都子さんの例は特殊な事例かもしれませんが……“ご主人を教育し直す”という意味合いでみれば、同居も悪いものではないかもしれません。

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