「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」「今夜は簡単なものでいいよ、トンカツとか」などと、妻や他人が作った料理に対する理解に苦しむ発言でおなじみの“料理警察”。とくに男性にこうした傾向が多く見られるため、イライラを募らせる奥様も多いようです。料理警察状態の夫に、思わず妻がぶつけた言葉とは……? 今回はそんな赤裸々な実話をお届けします。
突然の冷凍食品・惣菜禁止令。そのとき妻は……
中学生と高校生、3人のお子様を持つ東京都在住の成田晴恵さん(仮名・46歳)は、ご主人が昨今話題の料理警察に豹変してしまい、フラストレーションをためていたおひとり。
「主人が働く小さな会社の社長夫人は、地元では有名な料理研究家さんなんです。年に2~3回、社長宅に集まって社長夫人の手料理を食べる慰労会のようなものが行われるのですが、昨年秋に行われた会で『冷凍食品や市販の惣菜を使うなんて手抜きだし、健康に良くない、ありえない』と社長夫人に言われたらしく、突然、私に対して『冷凍食品&惣菜禁止令』を発布してきたんです」
以来、家に帰って来るや否や冷蔵庫の中を覗き込み、「これ市販のコロッケ? ありえねぇ~」「冷凍のカット油揚げ? そんな手抜きをするなよ!」などと取り締まりを続けるご主人に、専業主婦をさせてもらっているし……と従っていた晴恵さんでした。けれども、コロナ禍で朝昼晩と3食の用意が必要な状態にあっても頑なに冷凍食品を許さないご主人に対し、キレてしまったといいます。
「我が家は元気いっぱいで育ち盛りの男児が3人。彼らの面倒を見ながら冷凍食品や総菜を使わずに料理をすることがどんなに大変か、主人にはまるで分かっていないと気づいたんです。冷凍ほうれん草があれば、朝は手早く巣ごもり玉子が作れるし、惣菜のコロッケだって餃子だって十分に美味しく役立ってくれます。あまりに腹が立ったので『どれだけ大変なのか、あなたは分かっていない。一度、自分の手でゼロから作ってみて』と。離婚を覚悟で、夫にそう言ったんです」
一食分の夕ご飯を、夫に作らせてみた
「家にあるものは調味料以外一切使わず、すべて手作りで、家族5人分の夕飯をまるっと作ってみて!」
そうご主人にお願いし、買い物に行くところから全てご主人にまかせてみた晴恵さん。結婚前までひとり暮らしをしていたご主人は「家族分の料理くらい、余裕!」とばかりにスーパーに出かけ、野菜や肉類を買い込んできたといいます。
晴恵さんが指定したメニューは、ご主人が惣菜利用を禁止したコロッケと、具沢山のお味噌汁、そして白ごはん。さらに2品の副菜をプラスした一汁三菜を作ってもらうことになりました。
夕方5時。意気揚々と作り始めたご主人でしたが、いつしか台所の物音がピタリと止んだといいます。どうしたんだろう。そう思って晴恵さんが台所に行くと、そこには、じゃがいもを手にして固まったままのご主人が……。
「あの瞬間を写メっておけばよかった!って後悔するくらい、主人はものすごく情けない顔をして冷めたじゃがいもを握りしめていました。『あれ? 余裕だったんだよね?』と声をかけると、茹でたじゃがいもの皮を剥こうとして手を火傷した、冷めるまで待つ間に玉ねぎのみじん切りをしようとしたけど、玉ねぎ4個分で30分もかかってしまった。でも、いざじゃがいもの皮を剥こうとしたら、冷めてしまったせいか皮が剥きにくい。どうすればいいのか分からない。まだ、みじん切りしか終わっていないのに……って、ポロポロ涙を流し始めて。
ええ? もう6時になるのに、まさかそれしか済んでないの?って声をかけたら『コロッケを30個も作れなんて、無理難題すぎるだろ……』ですって。中高生の体育会系男子の食欲をナメないでよね!ひとり何個食べると思ってるのよ! でも、主人の情けない顔を見たらもう、怒りたいのに笑いが止まらなくて、フヒャ、フヒャヒャ、ってヘンな声しか出なくて」
ご主人に対し、「冷凍食品をうまく使うことで、子どもたちの食欲を満たしているし、育児や家事をしながらも食卓を華やかにすることができているの。手を抜こうと思っているわけでも、健康を害したいわけでもなくて、冷凍食品を時短の道具として活用することで、家事を回しているの。それから、今回のことで理解できたと思うけど、お惣菜のコロッケなら1個30円で買えるけど、家で30個分のコロッケを作ろうとしたら、とても900円じゃ作れないんからね」と晴恵さんが説明をすると、ご主人はうなだれて「ごめんなさい」と謝罪してきたといいます。
以後、料理警察は終わりを告げ、晴恵さんのつくる食事に一切文句を言わなくなったというご主人。晴恵さんも「ようやく幸せな食生活が戻ってきました!」とご満悦の様子でした。
迷惑この上ない料理警察には、実際に大変さを体感させ、心の底から理解させることがなによりの特効薬かもしれません。もしもあなたの家にも料理警察がいるようなら――晴恵さんのように「ゼロから作らせる」ことをおすすめします。