ジャニヲタ、つまりジャニーズに所属するアイドルが好きすぎる女性(まれに男性も)の間で耳にする言葉「担降り(たんおり)」。担当を降りる、という言葉の省略語で、好きだったアイドルのファンを辞める、という意味で用いられています。
 

熱愛が発覚したり、結婚報道が流れたり、その他不祥事やスキャンダルが起きた際に「担降り」する女性が増えるのが常。ずっと好きでいたかった。でも、気持ちが付いていかなくなってしまった――好きだったはずなのに。愛していたはずなのに。でも、もう、彼のことだけを愛せない。だけど「ジャニーズそのものは好き♡」 そんな気持ちを端的に表した「担降り」という言葉が、今、男女関係の間にも浸透しつつあります。

盲目的に愛してしまった夫。永遠に続くと思っていた、幸せな生活

「すっごい大恋愛だったんですよ」
 

杉村加菜さん(仮名・39歳)は、晴れやかな笑顔を向けました。
 

「出会ったのは、学生時代のアルバイト先でした。私の実家は神奈川、大学は東京都内にあったのですが、学校帰りに寄りやすいからと、大学の最寄り駅にある飲食店でアルバイトを始めたんです。夫は当時すでに社会人で、その店のマネージャーをしていました。夫はいつも笑顔を絶やさない人で、一緒に働くうちに、ああ、この人は優しいし頼りになるし、こんな人と暮していけたら、きっと一生幸せだろうなぁって。そう思っていたんです。そうこうするうちに夫のほうから告白されて、付き合い始めました。すごく大事にしてくれたし、私も夫のことが大好きで大好きで、デートの日はずっと手をつないで歩いていたし、夜は寝るまで電話やLINE。友達からも『アンタたち仲良すぎてウザいw 今すぐ結婚しちゃいなよ!』って言われるほどで……今思えば、かなり恥ずかしいくらいベタベタしてたと思います(笑)」
 

大学を卒業し、加菜さんは都内の企業に就職。ふたりの甘い関係は長く続き、加菜さんが社会人2年目になったとき、ご主人が自身の飲食店を開いて独立したのをきっかけに入籍したといいます。
 

「夫の仕事はとても順調でした。看板メニューのじゃがいもを使った料理が人気で、美味しかったからと言ってリピートしてくれるお客様が多く、忙しい時には私も店に立ち手伝っていました。どんなに疲れていても、どんなに大変でも、夫の笑顔だけが私にとって最大のご褒美でした。夫が休みの日は週に1度程度しかなかったのですが、私はそれでも満足でした。でも、コロナ禍でそんな生活が激変してしまったんです」
 

収入が激減。ご主人の顔から笑顔が消えた……

「3月の初旬頃から、コロナ禍で客の入りは目に見えて減っていたんです。そこに加えて、4月7日に緊急事態宣言が出され、夜間の営業ができなくなりました。すぐにお弁当を作って売るようになりましたが……一般の人がランチにかけられるお金なんて、たかが知れています。仕方なく600~700円と、ある程度安価に売ることになり、売り切れたとしても経費はトントンになればいい程度。夫はそれでも『ここに俺の店があることを、忘れずにいてもらうことが大切だと思う!』と、笑顔で弁当の販売を続けたんです。『これもGWが空けるまでの辛抱だから!』って。でも、現実はそこまで甘くはなくて、3月末には『4月分の家賃が払えない!』と泣きつく夫のために、私の親がお金を貸しました。『給付金が出たら返すから』そう夫は言っていましたが、一向に出る気配がないままGWが終わり、緊急事態宣言が延長されることになってしまったんです……」
 

加菜さんいわく、ご主人の様子がおかしくなったのは、この少し前くらいだったといいます。
 

「GWの半ばくらいに、急に『しばらく店を閉めて休む』って言いだしたんです。え? なんで? これまでがんばってきたのに? そう夫に聞いてみたのですが、理由は何も言いません。ランチだけでもいいじゃない。トントンでもいいじゃない。家賃を払うのは確かに大変かもしれないけど、あと少しの辛抱じゃないの?って何度も話をしようとしたのですが、夫は笑顔もなくだんまりを貫くだけ。疲れてしまったのかな?辛かったのかな?と思い、何も言わずに様子を見ていたのですが、休業してからの1週間は、家にいてもただ寝ているだけ。家事ひとつ手伝わず、料理もせず、牛乳とか重たいものを買いたいから買い物に付き合ってほしいと声をかけても『コロナ対策で、買い物は一家にひとりだろ』と聞く耳持たずで……」
 

これはヤバイ。加菜さんはそう感じ、せめて少しでも体を動かしてもらおうと、家事の分担を求めたといいます。加菜さんはテレワーク化できない特殊な仕事に就いており、出社する必要がありました。そこで、「心苦しいけれど、洗濯物の取り込みと、廊下や居間のフローリングを簡易モップで拭くこと、ランチは自身で作って食べること。この3つだけでいいからやってほしい」とお願いしたといいます。
 

「家に帰ってきて確認すると、ランチに食べたであろうインスタントラーメンの袋と麺のクズが散らばり、丼と鍋はシンクにそのまま突っ込んであり、ガビガビになっていました。洗濯物は取り込んであったけれど、ハンガーも外さずぐちゃっと丸めて床に置いてあるだけ。フローリングも、拭いたには拭いたんでしょうけど、明らかにムラがあって……。ちょっと難易度が高かったかな?と思って翌日は別の家事をお願いしたのですが、これもまたすべて中途半端な状態で……あれ? 私が好きだった、仕事バリバリで笑顔を絶やさなかったあの夫はどこにいったんだろう? 私の夫って、こんなにポンコツだったの?って……なんだかもう、悲しいやら悔しいやら……」
 

SNSで担降りを宣言。すると、気分が晴れやかに……!?

あんなに好きで好きでたまらなかったご主人の変貌ぶりに、加菜さんも一時、離婚を考えたといいます。
 

「実は私、学生時代から大のジャニヲタで、嵐の二宮くんが結婚したときに、担降りしたことがあったんです(笑)。それまで、好きで好きでたまらなかった二宮くんのことを、担降りしたとたんに『まぁ、二宮くんも、ひとりの男だからね。しょうがないよね』って、なんか俯瞰して見られるようになったというか(笑)。なので、いきなりの離婚ではなくまずは『夫の担降りをしよう!』って。そう思ったんです」
 

親しい友人だけがつながっているSNSで「夫から担降りします!」宣言をしたとたん、何やらスッと肩が軽くなったという加菜さん。ご主人が家事をしなくても、ダラダラしていても「こういう生き物なんだから仕方ない」と思えるようになり、逆に、自身からも厳しい言葉をかけられるようになったといいます。
 

「これまでは夫のことが好きすぎて、夫が決めたことやすることに、文句なんてひとつも言えなかったし、文句を思い浮かべることすらなかったんです。夫のことを神のように崇めていたというか。でも、担降りしたとたん、夫のことを冷静に分析できるようになったし、言いたいことはすべて突き付けられるようになりました。私の変化を感じた夫は、さすがに『あれ? これ、ヤバイ?』と思ったようで(笑)。家事を頼むと『わかった。まずはやり方を教えて』と聞いてくるようになりました」
 

5月19日現在。コロナ禍が収束に向かいつつあり、緊急事態宣言が撤回される日も近くなったことから、ご主人は以前のようにやる気を取り戻し始めているといいます(加菜さんいわく、軽い鬱状態になっていたのでは?とのこと)。また、「担降り」が効いたのか、ご主人と加菜さんとの関係も以前のような恋人関係の延長ではなく、「家族」としての絆が芽生えたように感じているのだとか。
 

「好きだから、愛しているから、言えないこと、できないことってたくさんあると思うんです。コロナ離婚になってしまうご夫婦って、きっと、相手を愛しすぎていたからこそ求めすぎてしまい、許せないことが多くなってしまったんじゃないでしょうか。私のように気持ち的にでも『担降り』してみると、互いの違いが許せるようになるし、別の人間なんだから仕方ないって、そう思えるようになります。『離婚だ!』ってなる前に一度、担降りしてみることをおすすめしますよ。あ、ちなみに今はSnow Manの向井康二くんが好きです」
 

ご主人の“今の状態”から「担降り」することで、コロナ離婚を回避した加菜さん。ジャニーズ好きな女性の愛の深さとともに、「担降り」により思考を変えることが家庭を変えるきっかけになるのだと納得。考え方ひとつで、人生は良くも悪くも進んでいくものなんですね。