新型コロナウイルスの影響は、個人家計にも広がっています。
休業要請により収入が減ってしまった方や、在宅ワークにより食費や水道光熱費が増えている家庭も多いのではないでしょうか。
今回のような収入減・支出増が同時に起きるような状況が発生したことで、緊急時の予備資金を含め、貯蓄の重要性を感じた方が多いと思われます。
そこで今回は、貯蓄の悩みを抱えるAさんを例に、今後不測の事態が起きた場合に困らないように、いざという時の資金を準備し、またこの機会に老後に向けて備えておく方法についても考えてみましょう。
【モデルケース】
・Aさん(28歳、男性、独身、会社員、年収400万円)
<貯蓄について>
・毎月余った分3~5万円を口座にストック(毎月変動、余らない月あり)
・引っ越しや車の車検、旅行等により残高が減り、中々貯まらない
・最近口座残高が少なく、コロナの影響による減収で冷や汗をかいた
・将来的には結婚や住宅購入もしたい
・車は購入して間もないため、次の購入は5年以上先
貯蓄の鉄則は「先取り」! 自動引落しを活用しよう
毎月最後に余った分を貯蓄とみなすのではなく、決めた金額を使う前に「先取り」して毎月の貯蓄額を一定にしましょう。毎月の給料日直後に自動引落しで先取り貯蓄をしていくのが理想的です。
Aさんの勤務先に財形貯蓄があれば、ぜひ活用してください。無い場合は自動積立定期預金などを活用し、毎月一定の金額を貯めていきます。
Aさんは毎月3~5万円が余ることが多いようなので、頑張って毎月5万円を先取り貯蓄できるといいですね。
備えたい・使いたい時期に合わせて「お金の色分け」をしよう
例えば、貯めるお金を「短期資金」「中期資金」「長期(老後)資金」のように使う時期に合わせて3つに分け、口座や貯め方を変えてみましょう。
▼「短期資金」はどう貯める?
「短期資金」は1年から5年以内の備えのお金です。今回のように、不測の事態で収入が減った場合や支出が増えた場合に充てる資金です。緊急時の予備資金としてまずは毎月の生活費の3カ月分を目安に貯めていきましょう。
短期資金はすぐに引き出して使えることが大切なので、財形貯蓄か自動積立定期預金で貯めていくといいですね。
▼「中期資金」はどう貯める?
「中期資金」は将来の結婚資金や住宅資金、車の買替資金など、中期的なイベントで使うお金です。期間の目安は5年以上先です。結婚や住宅購入、車の購入などのライフイベントが訪れた時に使えるよう、今から貯めておきたい部分です。
使う時期まで時間があり、長い期間積立てられるので、資産運用をしながら貯めていくのも1つの方法です。
使う時期に解約できることも大切なので、投資信託で運用しつつ、いつでも解約ができる「つみたてNISA」がおすすめです。今は超低金利のため、定期預金だけではなく資産運用で利回りを高められれば将来的に大きな差が付きます。
仮に、年0.01%の銀行の積立定期で毎月1万円貯蓄していったとします。20年積み立てても、積立元本240万円に対して利息は2299円です。そこから税金が約20%引かれます。
一方、積立投資で年3%の利回りで運用できると、10年で19万7850円の運用益、20年だと87万6441円の運用益が期待できます。しかもつみたてNISAの場合、運用益は非課税でメリットも大きいです。
Aさんの場合、毎月1万円で始めて徐々に金額を増やしていけるといいですね。
▼「長期(老後)資金」はどう貯める?
「長期(老後)資金」は、基本的には老後まで使わず貯めておくお金なので、最低60歳までは解約できない代わりに税制メリットが大きい「iDeCo」をおすすめします。
メリットは掛金全額が所得控除となり、所得税・住民税が節税できる、運用益が非課税など。原則60歳までは引き出せないので、投資信託で長期投資をすることでリスクを抑えながら収益を期待できます。
Aさんの場合、勤務先に企業年金制度がなければ2万3000円まで掛けられます。仮に掛金を毎月2万円、年3.0%の利回りで運用できたとすると年間3万6000円、30年で108万円の節税になり、運用益の非課税メリットは90万4979円にもなります。
節税できるつみたてNISAやiDeCoを活用しながら貯蓄のスピードを高めよう
緊急時の予備資金を作ることも、将来のための資産を作ることも、できるだけ早いスタートが大切です。加えて、資産運用でお金に働いてもらいつつ、節税できる仕組みを上手に活用することで貯蓄のスピードアップを図っていきましょう。
この記事を執筆したのは……
羽鳥 緑
株式会社MILIZE所属の1級ファイナンシャル・プランニング技能士。銀行に10年以上勤務し貯蓄・資産運用・相続対策などお金の相談業務や、資産形成セミナー講師、研修講師を経験。2020年4月より現職。
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