「近寄らないで!」コロナ禍、妻に居場所を“奪われた”男たちの悲劇

ようやく終焉の兆しが見え始めたコロナ禍。平穏な暮らしが戻りつつありますが、生活が戻ったからといって、戻らないものもあるようで……。今回は男性の目から見た「コロナ禍」をお届けします。

ようやく終焉の兆しが見え始めたコロナ禍。特定都府県以外の県では徐々に自粛解除が始まり、平穏な暮らしが戻りつつあるようにも思えます。しかし、生活が戻ったからといって、戻らないものもあるようで……。今回は男性の目から見た「コロナ禍」をお届けします。

部屋に入るな……それが、家族に対する言葉なのか?

東京都心の薬局で働く薬剤師の正雄さん(仮名・43歳)。開店の2時間前から店に入り、深夜遅くまで、品出しに発注にと忙しい毎日を送っているといいます。心ない客から罵声を浴び、マスクやトイレットペーパーを奪い合う場面に心が削られる日々。しかし、唯一安心できるはずだった家庭にすら、正雄さんの居場所はありませんでした。
 

「まったくひどいものですよ。妻が、『家に帰ってくるな』って言ったんです」
 

昨年の春、家を新築したばかりだという正雄さん。専業主婦で料理好きな奥様の要望で日当たりの良い2階にLDKを設え、1階が風呂、トイレ、納戸。3階には夫婦の寝室と、小学3年生になるお子さんの部屋。都会にありがちな狭小住宅ではあるものの、快適に暮らしていたといいます。
 

「コロナ禍がひどくなった3月末。仕事を終えて家に帰った途端、階段の上に立っていた妻から『もう家に帰ってこないで! それができないなら、せめて2階に上がってこないで!』って怒鳴られたんです」
 

驚いた正雄さんがその場で理由を尋ねると、「コロナが怖いから近寄らないでほしい。家族にうつさないでほしい」とのこと。職場ではきちんと消毒やマスクで対応しているし、帰宅の際も必ず消毒し、手洗いも行っている。そもそも自分には感染の兆候もない。そうしたことを説明しても奥様は「NO!」の一点張り。
 

途方に暮れていると、奥様は階上から正雄さんの衣類をバラバラと投げ落とし「悪いけど、家を出ていけないのであれば、しばらくは納戸で生活してちょうだい」と言い放ったといいます。
 

「食事はどうするんだよ?と聞いたら『リモートワークもできないような情けない仕事に就いているあなたに、食べさせる食事なんかない。コンビニでおにぎりでも買って食べたら?』なんて言われて、そのときはじめて、悲しみではなく怒りを覚えました。
 

俺、けっこうがんばって働いて、金貯めて、妻子を食わせてきたんですけどね。小遣いだってわずかしかもらわず、学生時代から続けてきた趣味も全部やめて妻子に尽くしてきたんですけど。なんだったんですかね、俺の努力って。がんばってがんばって妻子を養ってきた結果が、冷たい納戸の床の上での寝袋生活ですよ。悔しくて情けなくて涙出ましたよ」
 

妻の自己満足に、どこまで付き合うべきか?

同じく東京都在住の剛士さん(仮名・34歳)。現在はテレワークとなり、週に1度、会社に行く生活を余儀なくされているといいます。
 

「最初のうちこそ気を遣ってくれた妻ですが、日を追うごとに要求が厳しくなってきたんですよ。リビングでノートパソコンを開いていたら『テレワークをするなら部屋でしろ』と言われ、部屋で仕事をするようになると今度は、『掃除の邪魔だから別の場所に行け』。仕方なくベランダにキャンプ用のチェアとテーブルを置き、そこで仕事をしていたのですが、『私が家事しているときに、よくそんな風に遊び気分でいられるわね!』だそうで。
 

こっちも、決して遊んでるわけじゃないんですけど。めちゃくちゃ仕事してるんですけどね。専業主婦の妻には、それが理解できないんでしょうか。仕方ないので『じゃぁ、公園のベンチにでも行って仕事してくるよ』って言ったら『まるで私が追い出すみたいじゃない! 私のことを鬼嫁みたいに言わないで!』と(笑)。『違うのか?』って言いたい気持ちがのど元までせりあがってきました」
 

剛士さんは6年前に奥様と結婚。3歳になる息子さんと3人で、現在は会社が借り上げているアパート住まい。仕方なくノートパソコンとスマホを持って公園に向かうと、そこには同じアパートに住む同僚がいて、お互い、顔を見合わせて苦笑してしまったのだとか。
 

「思わず『お前もか!』ってふたりで笑いあっちゃいました。それからは、公園の中の東屋が、俺たちの仕事場になっています。雨の日でも屋根があってしのげるんで、かれこれ2週間は通ってますね。キャンプ用のギアを持っていって、コーヒーを沸かしたり、昼飯作ったり。ネットで、座り心地が良くなるクッションも買っちゃいました。おかげで、すっかりアウトドアテレワークを楽しんでます。妻から『何やってんの? もう戻ってきてもいいわよ!』なんてLINEが来ることもありますが、ぶっちゃけ無視しています。
 

働く大変さも知らずに俺の居場所を奪ったのは妻自身。これ以上、アイツのわがままに振り回されるのは勘弁って感じです。だいたい『戻ってきて“も”いい』って、妻が上から目線なのもイラつきますしね。それに、アイツの小言を聞かずにいられる公園のほうが、よほど仕事もはかどりますから」
 

今回お話を伺った正雄さんも剛士さんも、「子どもがいる以上、離婚とまでは思わないけれど、妻に対する愛情は完全に失った」とのこと。
 

「妻の不安な気持ちはよく分かります。でも、だからといって家族をないがしろにしていいわけではないと思うんです。子どもがある程度大きくなったら、とっとと離婚しますよ」と正雄さん。
 

剛士さんも「テレワークが解除されたとしても、家に帰りたくない、家にいたくない、そんな気持ちのほうが大きくなっちゃいました。いっそのこと転勤願いを出して単身赴任でもしようか、なんて、同僚と語り合っています」と、ふたりとも“妻から離れる道”を模索しているといいます。
 

コロナ禍により、会社にも家庭にもいられなくなった男性は増加傾向にある模様。居場所を失くした男たちの反乱が始まるのは……そう遠い未来ではないのかもしれません。

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