慣れないテレワークによるストレスや、パーソナルスペースが取れないことによるフラストレーションなどから派生する「コロナ離婚」が騒がれる現在。しかし「これまで以上に仲が良くなった!」という夫婦も、実は存在しているのです。今回はまさにコロナ禍で夫婦の絆が深まったという30代夫婦のお話をお届けします。
鬼のような姑との同居の日々
「最近、すべてが順風満帆すぎて怖いくらいなんですよ」
千葉県在住の早川千奈津(仮名・33歳)さんは、とても素敵な笑顔で語りはじめました。
「夫とは5年前に結婚しました。夫の仕事の都合があり、結婚当初から義実家で同居しています。でも、義母が本当にキツい人で(笑)。お箸を並べるとき、手近なところから並べようとすると『家長の分から並べるのが当たり前』、香り付きのトイレットペーパーを買ってくると『働いてもいない人が贅沢するな』、煮物を作ると『こんな薄味のもの、食べられない』(私、奈良の出身なんです)って、なんでもかんでも口を出してくる人なんですよ。口を出すだけならまだマシなんですけど、洗濯物をわざと落としたり、玄関に靴を置いておくと、私の靴だけ、わざと踏んづけたり。辛いというよりは『めんどくさい』と思うことが多くなり、別居したいなぁ……って漠然と考えていたんです」
しかし、コロナ禍のせいでご主人の収入が激減。別居は夢のまた夢となってしまったという千奈津さん。
「最初のうちは、この状況を本当に憎みました。なんでこんなときに! 別居したかったのにどうして?って。でも、面白いことが起こったんです」
自ら墓穴を掘った姑、ついに……
「夫は飲食店勤務なのですが、時短営業を余儀なくされ、家にいる時間が増えたんです。これまで義母は夫の前で私に対して文句を言うことはなかったのですが、夫が昼間に在宅するようになったことに慣れてなかったんでしょうね。夫がいる目の前で、これまでのようにチクチク嫌みを言ったり、わざと物を落としたり壊したり、そういうことをするようになったんですよ」
それを見たご主人は、夜、千奈津さんに「まさかと思うけど、今までずっと、おふくろはあんなふうにお前のことをいじめていたのか?」
と尋ねてきたといいます。
「だから、正直に素直に、『そうだよ』って答えました。すでに何度かは夫に訴えていたんですけどね。自分の目で見て、耳で聞いて、初めて実感したみたいで(笑)。夫はすぐさまキッチンにいた義母の元に向かうと、『ふざけるな! 態度を改めないのであれば、すぐにでも別居だ!』って叫んでいました」
しかし義母は「私は嫁をしつけていただけ。何も間違ったことはしていない。こんなことで別居だなんて、恥ずかしいと思わないの?」とシレッとした顔で別居に反対してきたといいます。そんな義母を見て、余計に頭に血をのぼらせたご主人は、目を血走らせて口をパクパク。このままじゃ泥沼になりそうだと思った千奈津さんが「もういいから」とご主人に声をかけようとした瞬間……。
「おまえ、俺の母さんと同じこと、千奈津さん(嫁)にしてたのか……?」
絶望に打ちひしがれたような切ない声が、キッチンに響いたといいます。
“憑き物”が落ちて姑が良い人に?
「声の主は舅でした。『おまえが母さんにいじめられているって知ったとき、俺はすぐに別居したよな? なんで同じことをしようとしている息子に対して、反対してるんだ? そもそも、自分がされてイヤだったことじゃないのか? なぜ、同じことをしてるんだ?』って、舅が今にも泣きだしそうな声で言ったんです。そう言われた義母は、きっと、過去のことを思い出したんでしょうね。こう、愕然としたっていうか、茫然としてるっていうか、そんな表情になって、その後、無言のまま部屋に戻っていったんです」
翌朝、ご主人と千奈津さんのふたりに対し、義母さんは平身低頭。これまでの所業を心から詫び、申し訳なかったと何度も何度も繰り返したといいます。
「本当に、“憑き物が落ちた”ってこういう感じ?というほど、姑が別人になりました(笑)。あれからは、私の家事にケチを付けることもなく、くだらないいじめを仕掛けてくることもなくなりました。まぁまだ2週間ほどしか経っていないので、今後は分からないですけどね」
と、千奈津さん。
「姑のことはさておき、今回のことで夫に惚れ直したので、コロナはまだまだ怖いし夫の仕事の先行きも不透明ですが、とりあえず子づくりに励むことにします! 今、夫婦仲が最高に良いので、万々歳です」
と。最後の最後にちゃっかりノロケてくれました。コロナ禍により縁を絶たれる夫婦もあれば、絆を強くする夫婦もあり。それぞれに様々なドラマを生んでいるようです。