新型コロナウイルス感染症支援対策でシングルマザー家計を立て直す
新型コロナウイルス感染症の影響は様々な業種に広がり、収入が減少している世帯が増えてきています。インバウンド需要を期待していた業種等は、緊急事態宣言が出される以前の2月から厳しいものがありました。今後の見通しも立たず、不安を余儀なくされていることと思います。
国や自治体のコロナ救済措置でどのくらい家計が保てるのかを、今回はシングルマザーを例に見ていきましょう。
シングルマザーの現状は
シングルマザーは働き手が一人しかいませんので、自分でどうにか立て直さないといけないのが辛いところです。また非正規で働かれている方が多いのが現状ですので、企業の業績が悪くなれば収入減少や解雇も考えなければなりません。
まずは家計を把握しましょう
今回シミュレーションするのは、田原さん(仮名)の家計です。
- 田原さん(仮名)
- 35歳、契約社員、年収240万円(手取り)
- 家族:長男10歳、長女7歳
「現在契約社員で仕事をしているのですが、子どもの小学校の休校を受けて、3月は子どもたちが慣れるまで有給休暇を相当日数使ってしまいました。今後もこのようことがあれば有給休暇がなくなってしまうのではと心配していましたが、実は4月から会社が1カ月休業することが決まりました。今度はその間、収入がどうなるのか、会社も存続できるのか、いつ再開するのかがはっきりしていないので、とても不安で仕方がないです」
田原さんは契約社員として働いていますが、収入が不安定な分、この状況では輪をかけて不安が募ってきます。
まずは影響がなかった2月と影響があった3月の家計簿を比較していきましょう。子どもたちの休校によって、生活がどのように変化をしたのかを家計簿で可視化していきます。
給与は50%減でしたが、児童手当や養育費は金額が変わらなかったので、収入としては40%減でした。固定費は変わりませんでしたが、子どもたちが家にいたため、意外と食費や雑費がかかってしまい変動費は増加しました。収支は▲8.5万円となりました。
マイナス収支をどう埋め合わせる? 節約するべきは……
今後はこの▲8.5万円を埋め合わせるために、どのように支出項目を節約していくか、考えなければなりません。節約対象項目は、変動費のうち食費や雑費、固定費の保険料です。
教育費は支出の割合が高いですが、養育費を学資保険への支払いとしているため、それを教育費項目に入れているとのことでした。
保険料は収入保障と生命保険に入られているとのことで、どちらも母親に万が一のことがあった場合を考えると、こちらもそのままが良いと思われます。
結果、食費・雑費を少し削ることになりました。しかし、3月はまだ給与があったものの、4月からの勤め先企業の休業でどうなるか分かりません。もし収支が毎月赤字ならば、少しずつ貯蓄を取り崩すことになります。
節約するにも限度が……活用できる支援制度は?
今後の生活を考慮すると節約にも限度がありそうですので、新型コロウイルスナ感染症関連の支援策や、ひとり親家庭の支援制度をもう一度見直してみましょう。
▼新型コロナウイルス感染症関連の給付金・助成金
新型コロナウイルス感染症の影響で、収入が減った分を補えるような制度があります。
まず、3月に子どもたちの世話のための休業時の補填には、下記の「小学校休業対応助成金」の制度が利用できます。会社の年休有無に関わらず取得できるように、国が企業を支援する目的がありますので、有給扱いとならない可能性があります(※必ず勤め先企業へご確認ください)。
■小学校休業対応助成金
- 対象:子どもを世話するために契約した仕事ができなくなった保護者
- 内容:有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額×10/10(1日あたり8,330円が上限)
- 必要書類:企業が申請
田原さんは現在パート社員ということでしたので、勤め先企業が休業とした場合は下記の制度も利用できます。
■雇用調整助成金の特例の拡充
- 対象:新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主
- 内容:休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額の助成。助成率は中小企業は4/5、大企業は2/3(かつ、解雇等をしていないなど要件を満たせばさらに上乗せがある)※対象労働者1人1日当たり8,330円が上限
- 補足:
通常期に設定されている支給限度日数100日(年間)にかかわらず利用可能
雇用保険被保険者でない労働者や新規学卒採用者等も対象
教育訓練を実施した場合の加算引き上げ
上記の制度は事業主が雇用者を解雇しないよう存続させるための助成金です(※制度の利用には様々な要件が必要となります。必ず勤め先企業へお問い合わせください)。
▼ひとり親世帯への支援
田原さんは児童手当が毎月2万円でしたが、ひとり親家庭はこの制度に加えて、児童扶養手当も利用できます。お住まいの自治体によって所得制限が異なってきますが、田原さんの場合は児童扶養手当、およそ2.4万円(※横浜市の児童扶養手当を参考)をもらえることになりました。
救済措置と支援金を家計に盛り込むと、家計はどう変化する?
ではこの救済措置と支援金を家計に盛り込んで4月の家計簿を見ていきましょう。
支援制度を利用することで、家計は3月の収支赤字から一転し黒字に。今後の家計に関する不安が少し払拭されたのではと思います。
増加した収入の内訳は以下の通りです。
▼給与
休業したが勤め先が「雇用調整助成金の特例の拡充」を利用したので、勤務日数×8,330円が給与になりました。
▼児童手当
児童扶養手当を申請することで2.4万円加算されました。
▼3月の小学校休業の助成金
勤め先が助成金の申請をしたので、年休の有給休暇とは日数に関して別の扱いとなりましたが、支給額は有給休暇と同等とされました。
まとめ
新型コロナ支援策にはお住まいの自治体によっても異なりますし、国の支援制度も日々変わっていきます。必ず最新の情報を各省のHPなどでチェックしていきましょう。MILIZEでも今後は、最新の新型コロナ支援策情報をお届けできるように努めてまいります。
この記事を執筆したのは……
荻野 奈緒美
株式会社MILIZE所属のCFP認定者。フリーアナウンサー。WOWOWアナウンサーを経て、その後フリーに転身。NHKBS「週刊シティ情報」などを担当し、講演会・イベントでのMCなど多方面で活躍。経済番組に出演したのをきっかけにFP資格を取得。 現在はFPとして相談業務や執筆活動も行っている。
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