背番号は選手にとってもうひとつの顔
プロ野球選手にとってステイタスのひとつと言えるのが背番号。一流選手の証とも言える一桁番号を背負うことがプライドという選手がいるのはもちろんのこと、プロ入り当時から付けていた番号から買えずにこだわりを持ってつけ続ける選手もいるように選手にとってはもう一つの顔と言ってもいいくらいの大切なもの。
それだけに背番号を変更するというのは選手にとっては一大事な出来事。憧れの番号をもらって奮起する選手もいれば、逆に一桁番号を剥奪されて悔しさに涙を濡らす選手もいるなど、背番号ひとつで数多くの物語があります。
そこで今回は今季から新しい背番号を背負い、注目すべき選手を紹介します!
その1:甲斐拓也(ソフトバンク)背番号62→19
今年の背番号変更選手で最も注目すべき選手と言えば、62番から変更となる甲斐拓也でしょう。2010年ドラフト会議で育成選手として入団した際は130番という背番号を背負っていましたが、後に「甲斐キャノン」と称される強肩を武器に台頭して、入団4年目には支配下選手登録を果たして背番号は62番に変更。そして2017年からレギュラーに定着してソフトバンクのV3を女房役として支えてきました。
そんな甲斐が憧れの選手としてきたのが同じホークスの大先輩である野村克也。母子家庭で育ったこと、そして同じ捕手だった野村に対して甲斐は尊敬の念を抱き、高校時代から野村の著書を読み漁っていたほどの大ファン。野村も生前「(自分が付けていた)背番号19を今度は付けてもらいたい」と語っていましたが、それが今季、ついに実現する形になりました。
残念ながら野村は2月に亡くなってしまったため、背番号19でのプレー姿を見せることはできませんでしたが、常勝ホークスの正捕手として甲斐のさらなる進化が期待されます。
その2:山川穂高(西武)背番号33→3
西武の3番と言えば、球団創立当時に付けていた土井正博に始まり、以降も清原和博、中島裕之、浅村栄斗と右のスラッガーが付ける番号として定着したいわゆる伝統の背番号。文字通りチームの顔としての大役を担うことになる偉大な番号ですが、今季から栄光の背番号3を背負うことになったのが山川穂高です。
プロ入り以来、33番を付けてプレーしていた山川穂高ですが、レギュラーに定着したのはプロ入り5年目の2018年。ホームランか三振かを地で行くプレースタイルでなんと本塁打王のタイトルを獲得。辻発彦監督の期待に応える成績を残しました。
そして他球団の投手たちのマークが厳しくなった昨季も43本塁打を放って2年連続となる本塁打王に。西武伝統の右のスラッガーの系譜となる背番号3を背負うにふさわしい選手へと成長しました。今季は新背番号とともに「3」年連続となる本塁打王獲得を目指します。
その3:山本由伸(オリックス)背番号43→18
かつての堀内恒夫(巨人)や三浦大輔(DeNA)のように投手のエースナンバーと言えば18番。その番号を背負った投手はもれなくエースとして注目されますが、今季からその栄光の18番を背負うことになったのがオリックスの山本由伸です。
高校時代は無名の存在で、オリックスに2016年のドラフト会議で指名されたのは4巡目という低評価でしたが、多彩な変化球と常時150キロを超える速球を武器に1年目から一軍で勝利するなど早くも頭角を現し、入団3年目となった昨季から先発ローテーション入りを果たします。
チーム事情によってなかなか勝ち星が付かなかったため、8勝止まりではありましたが、防御率は堂々の1.95。見事にパ・リーグ最優秀防御率のタイトルを獲得しました。その功績をたたえて、今季からエースナンバーである18番を背負うことに。背番号同様、18勝を挙げるような好成績を期待しましょう。
その4:増田大輝(巨人)背番号63→0
チームによって背番号はいろいろな系譜がありますが、巨人の背番号0の場合はバントの世界記録保持者である川相昌弘から始まるいぶし銀の系譜。派手さはなくともチームの屋台骨を支える大切な存在の選手が付けることが多かった番号ですが、それを考えると増田大輝が付けるのはふさわしい番号だと言えるでしょう。
もともと育成選手として入団した増田ですが、プロ入り当時から俊足と堅実な守備が評価され、当時三軍の監督を務めていた川相昌弘からも「成長株」として挙げるほど注目されていました。
プロ入り4年目となる昨季は一軍デビューを果たすと代走&守備固めでチームに大きく貢献し、盗塁数はチームトップの15盗塁。9月21日の対DeNA戦では延長10回に優勝を決定づける、勝ち越しタイムリーを放つという活躍を収めました。
いぶし銀の系譜となる背番号0を付けて臨む今季はスーパーサブとしてはもちろん、空きポジションとなっているセカンドのレギュラー奪取に向けて奮起が期待されます。
その5:石川雄洋(DeNA)背番号7→42
ここまで紹介した選手たちはもともとつけていた番号よりも小さな番号になっていわゆる「出世」した形ですが、背番号を変更した選手の中には反対に大きな番号へと変わることになった選手もいます。その中の代表的な選手と言えば、石川雄洋でしょう。
DeNAとしてチームが生まれ変わった当時の初代キャプテンとしてプレーしてきたチームの顔ともいうべき選手ですが、2016年以降は出場試合数が年々減少し、昨季はわずか50試合、113打席にしか出場できませんでした。しかも打撃成績はキャリアワーストクラスの打率.208に終わるなど成績も低迷してしまったことで背番号7から42へと変更。それも本人たっての希望でこの番号へとなりました。
42(死に)をイメージする番号だけに多くの選手が付けるのを嫌う傾向がある番号を敢えて選んだ理由は自身が尊敬しているという坂口智隆(ヤクルト)にあやかってのもの。
その坂口もオリックス時代は背番号9を付けて俊足巧打をウリにした主力選手でしたが、故障が原因で2015年に退団して翌年からヤクルトへ移籍した際に背番号42を付けて見事に復活したという経緯があります。先輩同様、不死鳥の如く石川も復活することができるでしょうか?
選手それぞれのドラマから目が離せない!?
いかがでしたか? 背番号ひとつとっても様々なエピソードや人間模様が出てくるので非常に興味深いですよね。心機一転、奮起を期する選手たちに今季は注目してみましょう。