新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全世界的に、テレワークの推奨をはじめとする外出自粛を求める動きが主流に。平日昼間は仕事で留守にしていた夫や、学校に行っていたはずの子どもたちが家にいることで、これまでにないストレスを抱える女性が増加。「コロナ離婚」の危機に陥っている家庭が増えているといいます。
「亭主元気で留守がいい」は、平和な時にこそ成り立つ
東京都在住の多香子さん(仮名・32歳)のご主人は、3月の上旬からテレワークとなり、自宅で仕事をするようになりました。最初の数日間こそ家の中でメールや電話の対処につきっきりのご主人に同情を覚えていたという多香子さんでしたが、次第にストレスがたまっていったといいます。
「お昼にパスタを作って出したら『は? こんだけ? サラダとかスープとかつかないの?』って言われて……殺意が芽生える瞬間っていうんですかね。脳の中に苦いような酸っぱいような、そういう何かが分泌されるのを感じました。ほかにも、お風呂に入れば『隅っこのほう、カビ生えてない? もっと細かいところまで掃除しなよ』。いつも使っているトイレットペーパーが品薄で買えなくて、別のものを買ってきたら『なんかさー、俺の稼ぎが悪いみたいじゃん。こういうのやめてくれない?』ですって。私が専業主婦だったら100歩譲って『ごめん』って言いますけどね。普通にフルタイムで働いてるんですよ。だから言いました。『文句があるなら、おまえがやれ!』って(笑)」
テレワークが長期にわたり、もはや仕事らしい仕事がなくなっているという多香子さんのご主人。朝10時にメールチェックをしたら、その後はソファでテレビを見ながらダラダラするだけ。ロックダウンが噂されているから買い物に付き合ってほしいとお願いしても「俺、テレワーク中なんだけど」のひとことで却下するご主人に、
「もういいや。離婚届けもらってこよう!」
そう決意したといいます。
埼玉県在住の江里菜さん(仮名・45歳)は、発達障害を持つ子どもを育てるパート主婦。ご主人は自営業で飲食店を経営していましたが、コロナショックにより臨時閉店を余儀なくされてしまったといいます。
「ある程度の貯蓄があるので今すぐどうこうということはないのですが、夫がアレコレと子どもにダメ出しをするようになってしまい、泣き叫ぶ子どもをなだめるだけで手いっぱいの毎日になってきました。私がパートから戻るやいなや、涙でぐしょぐしょになった子どもが抱きついてきて『パパ、怖い』って繰り返すんです。障害を持つ子どもに叱ったり怒鳴ったりしても意味がないのだと繰り返し伝えているのですが、どうも夫にはそれが理解できないらしくて……ああそうか、そういうことなのかって。それでも、子どもへの暴力的な言動を見ていると気持ちが冷めていくのを感じています」
ご主人もきっと、仕事に出られない辛さ、もどかしさ、そうしたものを抱えているのでしょうが、
「私の堪忍袋の緒が切れるまで、秒読み段階に入っている気がします。早くコロナが収まってくれればいいのですが……」
悪影響は男性にも……!?
こうした不満の声は、男性からも上がっていることを忘れてはなりません。
神奈川県在住の達夫さん(仮名・52歳)は、イベント関連の会社に勤めていましたが、コロナ禍により仕事が全滅。2月中旬から全ての仕事がなくなりました。
「今はただ、家で、そのうち会社から届くであろう解雇通知を待つばかりです。残念ながら中小企業なんで……ここまでイベントがなくなったら経営がもたないでしょうからね。それにしても辛いのは、そうした先行きの不安感からか、妻(専業主婦)の小言が増えたこと。私が何をしても気に入らないらしく、朝からず~っと怒られています」
転職しろ、アルバイトでもして金を稼いでこい――奥様からのそうした言葉に、苦笑するばかりだという達夫さん。
「私ももう50代。そう簡単に転職できませんし、副業禁止の会社なので、今後の方針が決まるまでは、アルバイトをするわけにもいきません。妻は私のことを『無職のクセに!』と罵りますが、給料は補償されています。もちろん、自分なりに葛藤はあるんです。でも、イベント業界にずっといたので、残念ながら私の仕事はつぶしがききません。それなのに……
朝起きるなり『洗面所に髪が1本落ちてた! ちゃんと拾えよ、無職だろ!』って怒鳴られ、買い物を頼まれてスーパーに行き、目当ての品がなかったので別のものを――このときは頼まれた豚バラが売り切れだったので豚ロースを――買って帰ったら『ロクに買い物もできない無職ジジイ!』と言われ……。妻のあまりの剣幕に、子どもたちもビクビクしながら暮らしています。こんな状態が続いたら、自分だけでなく、家族そのものがダメになると思うので……子どもと相談して妻との離婚を考えています」
欧米では家庭内暴力が大きな問題に……
外出規制が行われているフランスでは、家庭内における暴力の通報が相次ぎ、パートナー間の暴力がなんと32~36%も増加したと発表されています。しかし、夫や子どもが在宅する中で第三者に電話等でDV被害を訴えることができない状況があることも考えると、実際のDV被害はもっと多いのでは?という見方もあるようです。
外出禁止令下のスペインはもっと深刻で、加害者がDVを表面化させないよう被害者を見張ることで、被害者は通報もままならない事態に陥っているといいます。そこで発案されたのが“暗号”を使った通報システム。どうにかして薬局まで行き、被害者が「19マスクが欲しいんですけど……」という“暗号”を口にすると薬局側が警察に通報。DV被害者をサポートしてくれるといいます。
アジアでも、ウイルスの発生源とされている武漢では、外出禁止令が解かれた今、離婚者が続出。日本ではまだ新型コロナによるDV被害の増加は報告されていないようですが、このまま外出自粛が続けば……世界中で巻き起こっている「コロナ離婚」騒動が波及するのは間違いないでしょう。
「コロナ離婚」を避けたいのであれば……お互いに仕事が無いからといって腐らず、自分が家庭内でできることをきちんと探し、お互いを思いやって生活することが大切です。男女ともに、自ら動きもせず文句だけを言うのは愚かな行為であることを自覚すべきでしょうし、手を出すなどもってのほかであることを認識するべきでしょう。お互いに、相手に対して口うるさく指示をするのでなく、今がどういう状況なのか、正しく判断し、理解する必要があります。
非常時にこそ、人間の本質が出るといわれています。つまり、ここが踏ん張りどき。お互いにわがままを抑え……ウイルスに勝つその日まで、正しく家庭を維持してみませんか!