「また、泣くの……」双子育児の過酷な日々で、膀胱炎の危機に?

昨今、双子育児の過酷さに注目が集まっています。エンドレス寝かしつけ、一日20回以上のおむつ替え、同時授乳、徹夜での夜泣き対応と、双子育児は不眠不休の戦いです。この記事では一双子親の立場から、多胎児育児の現状を紹介します。

不妊治療の末に、私が双子を授かったのはおよそ4年前のこと。不安そうな私に、産婦人科の先生は「わっ双子だ。でも、きっと大丈夫! 背も高いしお腹にちゃんと入る。ね、大丈夫だよ!」と声をかけてくれました。
 

たしかに、トラブルの多い双子妊婦とは思えないほどの順調さで出産に至ることができました。が、そこから始まった双子育児は想像以上に過酷なものでした……。


 

トイレにすら行けない日々で膀胱炎の危機?

生後3カ月までの私の睡眠時間は、1日分すべて足してもわずか1~2時間程度。そのせいか、当時の記憶は断片的にしか残っていません。

記録によれば、新生児期(生後28日まで)の授乳は1日12回×2人分(双子に同時授乳です)とミルク作り、飲んだあとは毎回げっぷが出るまで背中をトントン。それから、2人合わせて20回以上に及ぶおむつ替え。加えて、この時期特有のゆるゆるうんちやおしっこが漏れ出すたびに発生する汚れ物の洗濯と、息つく暇もありませんでした。

睡眠のリズムができ始める生後2カ月ごろの昼寝は1日4回×2人分で計8回。授乳中に寝てくれるラッキーな展開は3回ほどで、残り5回は、1回につき40分ほどを要する寝かしつけのために抱っこし続ける(単純計算で200分!)日々。夜も交互に泣くため連日の徹夜。双子の世話に追われて、自分のトイレにすらなかなかたどり着けず、

「赤ちゃんに泣かれようが喚かれようが、一にトイレ、二にトイレ! このままじゃ膀胱炎になっちゃうよ!」

と、新生児訪問で来てくれた保健師さんに心配されたものです。
 

家族総出のサポートも足りない! ギリギリの双子育児

出産後は里帰りして育児以外の家事を実母にサポートしてもらえたので、その点では、私は恵まれていました。手が空けば汚れ物の洗濯をして孫をあやしてくれる母の存在に、どれほど助けられたことでしょう。ただ、当時の母は双子育児に翻弄される私の世話と同時に、父の介護にも追われる多忙ぶりでした。

自宅に戻ってからも、もともと子煩悩な夫が、家にいる時間の全部を育児に当てておむつ替えに寝かしつけ、離乳食作りと頼もしく動いてくれましたが、一方で、夫は育休まではとれませんでした。店長職である夫は長時間残業がザラで、朝7時台に出勤し、日付が変わってから帰宅なんてケースも珍しくありません。双子の夜泣きにも気付かず、疲れ果てた顔で寝ている夫を見ると夜中に起こすのも憚られ、私がワンオペに陥る時間は必然的に長くなっていきました。闇の中で、ゆら、ゆら……夜泣きする子供をなんとか抱きかかえます。重みで限界を迎えた指や手首には痛み止めの湿布。子守歌を口ずさむ声は枯れ果てて、我ながらホラーです。やりきれなさに泣けてくる夜もありました。
 

「育児に疲れています……」
 

市の7カ月児教室でそう打ち明けると、多胎児家庭のサークルを案内されました。しかし、集まりに参加しようにも当時住んでいたマンションのエレベーターには双子用ベビーカーを載せることすらできません。散らかった部屋に引きこもり、双子の泣き声ばかりの日々で次第に頭がおかしくなってきます。「私がちゃんとしないと」「ちゃんとできない」「ちゃんとできないのは私じゃなくてこの子たちのせいなのに……」。
 

93.2%の家庭が抱えるネガティブな感情

これは私に限った話ではありません。多胎児親の多くが精神的に追い詰められています。
 

多胎児育児のサポートを考える会が双子以上の多胎家庭の保護者を対象に実施した「多胎児家庭の育児の困りごとに関するアンケート調査」(2019年9月~10月、n=1591)からもそれは明らかです。「ふさぎ込んだり、落ち込んだり、子どもに対してネガティブな感情を持ったことはあるか」の質問に、93.2%が「ある」と回答。辛いと感じる場面についての質問では89.1%が「外出・移動が困難である」ことを挙げています(以下、調査結果より一部抜粋)。

「とにかく外出が大変で市の保健士さんや職員さんによく児童館や保育園の園開放などに積極的に参加するよう言われますが、私1人の時はなかなか連れ出せません」

「(バスに)乗車拒否されたことがある。畳むことを条件にされると、荷物と子供2人とベビーカー全部を抱えることはできず、諦めてしまう」

誰もが公平に使えるはずの育児支援サービスについても、

「ファミサポもシッターも2人見れる人に出会えない」

「無料での一時保育やファミサポの利用ができる回数券などがあるといい。2人預けると料金が高く、結局1度も利用したことがありません」

など厳しい現実を嘆く声も。こうした実態のなかで、専業主婦の場合は保育園に入れることすらできません。

「日中、保育園に通わせられたら幾らかは楽になるのに、専業主婦だから保育園に入園できない。多胎家庭が希望すればみんな入園できる制度が欲しい」

「私は仕事を持っていたので保育園に入れましたが、専業主婦で多胎児を生んだ場合、幼稚園に入るまで預け先がない状態は親子ともにほんとうに危険だと思います。家事支援より預け先が欲しい」

逃げ場のない環境下で、母子だけの時間が長く続くのは厳しいものです。不妊治療を経て双子を産んだ私自身は、「望んだ子供なのだから、私がちゃんとしなければ」と自分を追い詰めがちでしたし、不妊治療が珍しくなくなってきた今、同様に苦悩する多胎児親は少なくないはずです。
 

上記のように日常生活に支障をきたすケースや、平等に提供されているはずの育児支援を本当に必要としている人たちが利用できていない実態もあります。私自身が育児を通して強く必要性を感じているのは、男性の育休取得率の向上や訪問型のサポートです。これは多胎児家庭に限ったことではありませんが、残念ながらあまり進んでいない現状のなかで、双子親の一人として、より育児しやすい社会の到来を願ってやみません。

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