年齢・世代の違いも手伝って、なにかと問題が多い義理実家との関係。お互いが心地よく暮らすために、それぞれに歩み寄りや努力が必要です。しかし、努力し、親密になっていたとしても壊れるときには壊れてしまうもの。“まさか”の理由で良好だったはずの関係が崩れてしまったという、なんども“切ない経験”を持つ女性からお話を伺いました。
問題なく築かれていたはずの義実家との関係
女友達と一緒に出掛けた首都圏の日帰り温泉。そこに、同様にたまたま訪れていた高校時代の同級生と再会。それがきっかけで付き合いが始まり、30代半ばで結婚した、小堀亜希子さん(仮名・42歳)。ご主人の実家にマメに通い、舅や姑、義理の弟との関係を良好に保ち、一緒に温泉旅行に行くなど、周囲からうらやましがられるほど仲良く過ごしていたといいます。
「結婚して2年くらい経った年の春、義実家に、夫の従妹が住むことになったんです。従妹といっても夫とは随分と年が離れていて、『都内にある料理の専門学校に通いたいけれど、都会での女の子の一人暮らしは不安だから、どうか同居させてほしい』と、舅のお姉さんから泣きつかれたようでした。この子がきっかけで、どうも、義実家がおかしくなっちゃって……」
男性陣が従妹の虜に?
従妹はふたりの結婚式には出席しなかったため、亜希子さんにとっては初対面。近所に住むのだから……と、従妹さんが引っ越してきてから1週間ほど経った頃。ご主人とともに義理実家に出向き、従妹さんに挨拶をしたそうです。
「背が小さくて、小動物系っていうのか癒し系っていうのか、とにかくとてもかわいらしい子だな、という印象でした。私は女にしては背が高く、男っぽい印象だとよく言われるのですが、その従妹は私とは真逆で、見るからにほんわかとした印象。そのためでしょうか。舅も義弟も、すでに従妹のとりこになっている印象でした」
従妹のために、かいがいしくお茶菓子を買いにいき、ご機嫌を取ろうとする舅。しつこいほどに従妹に話しかけ、気を引こうとする義弟。
亜希子さんの目に飛び込んできたのは、自分のときとは態度がまるで違う、義実家の男性陣の姿だったといいます。
「愛され慣れてる人って、すごいんですよね。従妹は、これくらいチヤホヤされるのが当たり前っていう感じで……なんかすごい子が来たなぁって、義実家の今後について、かなり不安になりました」
従妹に対して、悪い感情を抱きかけてしまった亜希子さんでしたが、夕飯の支度を始める段になり、その考えは吹き飛んだといいます。
「こういうチヤホヤされる系の女子って、家事みたいな面倒くさいことは何もしない印象を持っていたんです。でも彼女はまるで違って、夕飯の支度を進んでやってくれたんです。煮物を仕込んだら、すぐにまな板や包丁を洗ったり、手際もすごくよくて。姑や私よりよっぽど素早く、でも丁寧に、料理を仕上げていくんですよ。さすが、プロの料理人を目指す人は違うなって思いました。
話を聞くと、従妹の母親がとても厳しくしつけたようで。今日は私がやるからあなたは何もしなくて大丈夫だよって声をかけたのですが、『いえいえ、これからお世話になるんですから、私の得意料理をごちそうします!』って。もう抱きしめたくなるほど愛らしい笑顔で返されちゃいました」
家事万能な従妹。彼女の出現で姑に変化が……
その夜食卓に並んだのは、鶏肉と大根の甘煮、焼き魚、鶏皮せんべい、ほうれん草のナムル、イカを使った酢の物……という和食メインのメニューたち。従妹は高校時代に料理教室に通い、近所の小料理屋でアルバイトをしていたとのことで、味付けが完璧な上に盛り付けもとてもきれいだったといいます。
「いやー、本当にびっくりでしたよ。18歳くらいの女の子が、ササッと作っちゃうんですから。夫も私も思わず拍手しちゃいました。従妹をほめていると、舅と義弟がその後ろでニヤニヤ。まるで自分が褒められているかのように喜んでいて、それはそれは気持ち悪かったです」
まあでも、この子がここまでしっかりしているなら、うまく舅や義弟をいなすことだろう。姑ともうまくやれるだろう。そう信じていた亜希子さん夫妻。しかし、しばらくして問題が起きました。
「姑がまったく家事をやらなくなってしまったんです。まぁ、気持ちは分からなくもないんですけどね。姑が料理をしても、掃除をしても、洗濯をしても『従妹ちゃんにしてもらいたかった』って舅と義弟。夫がふたりを叱っても、悪びれもせず『ババァが作った料理なんか食べたくない! 従妹ちゃんが作ったほうが美味しい!』とか言うんですから」
「タダで下宿させてもらっているから、これくらいは私が……」と、お姑さんに代わって家事を引き受けてくれたという従妹さん。そのがんばりにより、お姑さんが家事をしなくなっても、義理実家はなんとか回っていたといいます。しかし従妹が通っている専門学校は2年で終了。卒業とともに従妹が地元に帰り、問題は急激に悪化したといいます。
従妹が去って、汚れ荒んだ義実家の今
「従妹が地元に戻ってからも、姑は頑なに家事をしないまま。自分の食事は自分で作ってね。洗濯も掃除も自分たちでやってね、って感じで舅と義弟を放置したんです。おかげで義実家は、足の踏み場がないほど汚れ、荒んでしまっています。それでも、私たち夫婦にはまったく関係ないことだと思っていたら……舅と義弟から、『家事をしにこい!』って連絡が来るようになってしまって。とんだとばっちりですよ」
従妹が去ってから丸1年。亜希子さん夫婦は現在、義理実家との付き合いを最低限に抑えているといいます。
「義理の家族って……なんていうんですか、紙一重っていうか、ごく小さな刺激で崩れてしまうほどもろいものなんだなって。まぁ、舅と義弟がバカなだけですけどね。ま、せっかく良好だった関係を壊したのは義理実家の人たちなので、私は一切、関知しません」
まさかのことで崩れてしまった、義理実家との良好な関係。
亜希子さんの言うとおり、人間と人間の関係は些細なことで壊れてしまう可能性があるもの。良好な関係を保ち続けるためには、お互いの努力だけでなく、“愛情”もまた、不可欠なのかもしれません。