昭和から平成、平成から令和に変わり、「結婚」という制度が形骸化。結婚生活が恋愛関係の延長となりつつあり、結婚そのものはHAPPYだと考えている人も多いことでしょう。しかし、問題となるのは結婚とともにくっついてくる「義実家」との関係なのです……。

早朝4時。枕元で響いた義母の声

「玲子さん、アンタ、いつまで寝てるつもり?」
 

結婚して初めての夏。関東から飛行機の距離にある夫の実家に行った前田玲子さん(29歳・仮名)は、そんな言葉で起こされたといいます。
 

ビクッとして目を覚ますと、目の前にいたのは、すでに割烹着に着替えた姑でした。たぶん玲子さん用なのでしょう。くたびれたエプロンを持つ手が、やけに黒く見えたといいます。
 

「とにかくびっくりしました。というのも、前日に、家から空港まで3時間、飛行機で2時間30分、さらに空港から義実家まで3時間の道のりを丸一日かけて移動したのでクタクタで……そんな夫と私を見て、姑は『疲れたでしょうから、明日はゆっくり寝てらっしゃいな』って、そう言ってくれていたんです。それなのに、起こされたのは早朝4時。あれ?私、まさか一晩以上寝てた?って。そう思ったくらいで……」
 

しかし、昨晩の姑の言葉は「夫」だけに向けられたものであったと、すぐに分かったという玲子さん。
 

その後、姑の指示によって、薪割りから始まり、家庭菜園で大根やにんじん、きゅうりなどを収穫。古臭い薪釜を使ってのごはん炊き、土鍋でのみそ汁&煮物作り……まるで江戸時代のような調理をやらされててんてこまい。気づいたときには朝9時を過ぎていたといいます。
 

その間、同居している義理の祖父母、夫姉弟、離れに住んでいる舅の兄弟など、総勢10人以上の食事の準備をしたという玲子さん。さすがにお腹が空いたので「私もごはんをいただいちゃいますね」と言って席につこうとすると、
 

「は? 夫がまだ寝ているのに、妻が先にごはんを食べるなんて……そんな恥知らずな嫁をもらった覚えはありませんよ!」
 

と、斬って捨てられてしまったといいます。
 

しかし、決して気が弱いほうではない玲子さん。姑がトイレに行ったすきに素早く部屋に戻り、夫を叩き起こしました。ザッと経緯を説明をすると、夫は顔面蒼白。慌てて起きだし、一緒に朝食を取ってくれたといいます。
 

しかし、姑は夫がいる前では常にニコニコモード。いそいそと夫の味噌汁とごはんをよそい、
 

「夫婦そろって帰省してきてくれてありがとうねぇ。本当にうれしいわ~。こんなに良い嫁ちゃんをもらってきたなんて、ご近所で鼻が高いわ~。嫁ちゃん、美人だし優しいものねぇ。私は果報者だわ」
 

と言ってのけたそうです。そのためか、夫は玲子さんの話に半信半疑状態。
 

「母さん……ちょっと聞くけど、今日、玲子を何時に起こしにきた? 昼まで寝てていいって、昨日、言ってたよね?」
 

そう訊ねると、
 

「さぁ、何時だったかしら。8時くらい? でも、私が起こしたんじゃなくて、玲子さんが起きてきたのよねぇ?」
 

と笑顔のまま答えた姑。玲子さんが思わず驚いて何も言えずにいると、姑は慌てたように席を立ち、
 

「あら、私、病院の予約があったんだったわ。ちょっと出かけてくるわね。玲子さん、悪いんだけど、ここに書いてあるメモの買い物を済ませておいてくれないかしら~。駅前の商店街なら、ひとりで行けるでしょう?」
 

と。お金を置いていくこともせず、いなくなったといいます。
 

夫が味方になってくれたこと。それが帰省の収穫だった

普段は朝6時に起きて夫婦のお弁当を作り、きれいに掃除をしてから会社に出かけるという玲子さん。その姿をいつも見ている夫は、玲子さんに対していつも「感謝」をしていたといいます。この日、玲子さんの言葉と、慌てて出かけて行った母の姿を天秤にかけたときに、さすがに「母がおかしい」と思ったのでしょう。一もニも無く玲子さんの話を信じてくれたといいます。
 

買い物にも夫が付き合い、支払いは夫が行い、レシートをすべて保存。家に帰ったところで、
 

「はい、これ。レシートね。滞在中の食事の分のお金は俺が払うよ。でも、伯母さん用のシャンプーとか、妹用の生理用品とか、弟の文房具とか、叔父さんの増毛剤とか、家族がプライベートで使うものに関して、俺たちが払う必要はないだろ? だから、ちゃんとお金は払ってね」
 

と姑に詰め寄ってくれたといいます。
 

ワナワナと手を震わせ、玲子さんを睨み付ける姑でしたが、畳みかけるように夫が言葉をかけました。
 

「それからさ。母さん、なんで玲子に『駅前の商店街に行け』って言ったの? あそこはもう何年も前からシャッター商店街になってて、買い物なんかできないの知ってるでしょ。車で10分のところにイオンがあるんだから、そこを指定しろよ。まさかと思うけど、ボケたわけじゃないよな?」
 

「ああ、この人と結婚してよかった~!って、心の底から思いました。それからも毎年、子どもが生まれてからも夏休みには義実家に帰省しているのですが、やはり朝4時に起こされるし、風呂もいちばん最後じゃないと入れてもらえません。ハゲるんじゃ…?って思うくらい辛いこともありましたが、夫がかばってくれるし、義実家から戻った後にとても優しくしてくれるので、“アメとムチ”って感じで楽しむようにしています。
 

姑とは、人間的に合わないんだろうなぁ~って思ってます。それでも、私にとっては大切な夫の親。大事にしよう、という気持ちはあるので、これからも付かず離れずで、夫に間に入ってもらいながら付き合う予定です。ただ、子どもたちも中学生になり、姑が何をしているのかそろそろ理解するようになってきています。『お母さんをいじめるおばあちゃんがいるところは、行きたくない!』と言い始めたので……来年は、のどかに家族だけで過ごすかもしれません」と玲子さん。


なるほど、嫁姑戦争を平和に収める鍵は、やはり「夫」の存在にかかっている様子。夫が妻を疑ったりせず、どんなときも妻を信じていられるよう、日ごろから「良き妻」であることを夫に感じさせ、互いに愛情をもって接していたこと――これが、玲子さんの勝因かもしれません。