キムタクが“キムタク過ぎ”ても…『グランメゾン東京』が好調な理由

10月20日に放送を開始した「キムタク」こと木村拓哉さんが主演しているドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)が、なかなかに好調な視聴率をキープしているようです……10%前半の数字を「好調」と鵜呑みにしてしまって良いのかどうかは、若干の疑問がよぎるものの(笑)、同業者である各々のメディアさんが、こぞって「好調」と報じているので、まあ良しとしておきましょう。

10月20日に放送を開始した「キムタク」こと木村拓哉さん(46)が主演しているドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)が、なかなかに好調な視聴率をキープしているようです。

キムタクがキムタク過ぎても「高評価」?

20日の初回は、プロ野球日本シリーズの巨人×ソフトバンク第2戦の延長によって50分遅れの放送になったにもかかわらず、平均視聴率は12.4%。10月27日に放送された第2話が13.2%、11月3日に放送された第3話も11.8%(※ともにビデオリサーチ調べ。関東地区)をマーク──この10%前半の数字を「好調」と鵜呑みにしてしまって良いのかどうかは、若干の疑問がよぎるものの(笑)、同業者である各々のメディアさんが、こぞって「好調」と報じているので、まあ良しとしておきましょう。

キムタクがこれまで演じてきた職業は23にも及ぶと聞きますが、今度は「シェフ」です。フランスのパリにあるレストラン『エスコフィユ』でミシュランの二つ星を獲得するも、ある事件によって表舞台から姿を消した主人公の凄腕シェフ・尾花夏樹(木村)が、絶対味覚の持ち主・早見倫子(鈴木京香)と出会い、東京で三つ星を目指して悪戦苦闘しながら『グランメゾン東京』をオープンさせる……といったあらすじであります。

ぼくも、キムタクドラマは「キムタクがキムタク過ぎる」のがつらくて本来はわりと敬遠しがちだったのですが、なぜかこの『グランメゾン東京』にかぎっては「けっこう面白いな」と、苦手意識に苛まれもせず初回からすんなり観ることができました。一応、最終回まで全話の録画予約も済ませておきました。

『メディアゴン』で、エッセイストの物部尚さんが、『グランメゾン東京』が(おおむね)高評価を得ている要因は、

「漫画(や小説)から原作を持ってきて脚色するよりも、テレビドラマのために漫画のようなオリジナルの原作を書いてもらえばいいと(制作側=TBSが)気づいたからである」

……と指摘しています。じつに鋭い分析です。

たしかに、「なにをどう演じてもキムタクになる」とまで評されているドラマや映画でのキムタクの存在感は、すでに漫画の域に達しており、その漫画チックなキャラクターに、ワンクッションとして漫画原作のキャラクターを被せると、逆にキムタクの魅力は半減してしまうのではないでしょうか。たとえば、お好み焼きに塗ったソースの上にマヨネーズをかけたような味付けになってしまいそうで……。「お好みソースにマヨネーズ」は、いまや定番のマリアージュですが、ソース自体の味は良い意味でも悪い意味でもまろやか、無難になりますから。
 

「少年ジャンプ的」な漫画っぽさ

そんな濃厚な「キムタク」という名のお好みソースを、よりいっそう引き立てる“お膳立て”も、王道なまでに「漫画的」です。漫画的なアイコン(※今回のキムタクは、美味しいと感じたとき、必ず無言になって上を向く)、漫画(のコマ割り)的なテンポの良さ、漫画的に憎々しい悪役の登場、漫画的に結束していく仲間たち、毎回の感極まったラストシーンをジャストミートなタイミングで盛り上げる山下達郎さんのミラクルボイス……ここまでの開き直りにも近い「わかりやすさ」のオンパレードは、もはや「友情・努力・勝利」を創刊以来から揺るぎないスローガンとして掲げる「少年ジャンプ的」とすらいえるのかもしれません。

キムタク主演ドラマだけに、脇を固めている役者さんの面々もゴージャスで、とてもいい味を出しているのも特筆すべきポイントです。「熱(あつ)」を担当する沢村一樹さん(キムタクとは険悪な関係から仲間に)、「冷(ひや)」を担当する「ミッチー」こと及川光博さん(キムタクとは険悪な関係から仲間に)、「女子萌え」を担当する玉森裕太さん(Kis-My-Ft2)、「粘着質なライバル役」を担当する尾上菊之助さん……と、単発のドラマなら主役を張れるクラスが勢揃い。あと、ヒロイン役の鈴木京香さん(51)がなんといっても絶妙な抜擢で、「素材は美人なのにおめかしもせず、どこか諦観がただよう独身アラフィフ女性が、恋愛(めいたもの)に目覚めていくさま」を見事に演じきっています。
 

個人的に期待したい「アノ人」との共演

40〜50代の女優のなかでは圧倒的な人気を誇る石田ゆり子さんや井川遥さんだと、「諦観」の部分の疲れ果てた雰囲気や、「諦観」から抜け出したばかりの人にありがちな空回り感をこうも完璧に表現するのは、たぶん無理──「あわよくば女優からも男性ファン層を取り込めたら……」といったヤマっ気を潔く切り捨てた配役、まさに適材適所というヤツです。

それにしても、老けちゃいましたね……キムタク。40代半ばの男性としては、まだ充分「カッコイイ」の部類に区分できるとは思いますけど、いかんせん素材が“童顔系”ゆえ、劣化が悪目立ちし始めている。そろそろ“在りし日のキムタク路線”を延命し続けるのは厳しい時期に差しかかっているのでは? そして、裏を返せば、こうした“転換期”のさなかにあるからこそ、ぼくみたいな「本来はキムタクドラマを敬遠しがち」な人間でも比較的この『グランメゾン東京』を、拒絶感なく受け入れることができるのです。

個人的には、『相棒』(テレビ朝日系)の反町隆史さん(45)の次の次くらいで、“準主役のキムタク”を観てみたい気もするのですが、いかがでしょう?

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