世代ナンバーワンのスケール!? 甲子園未出場の大物投手たち

夏の甲子園大会、WBSC U18を終え、高校球児たちの運命を決める秋のドラフト会議が近づいてきました。プロのスカウトたちが最も注目する夏の甲子園大会に出場できなかった選手もいますが……甲子園出場者と惜しくも出場はならなかった選手がドラフト会議で競合した際、どうなっているでしょうか。

注目度ナンバーワン投手・佐々木朗希の進路は?

U18代表にも選ばれた佐々木朗希(写真:BFP/アフロ)


大阪の履正社が悲願の初優勝を遂げた夏の甲子園大会、まさかの5位に終わったWBSC U18を終え、ひと段落着いた感のある高校野球。今年の夏を沸かせた選手たちがこの秋に開催されるドラフト会議で指名されるかが野球ファンにとっては興味深いところです。特に、今年の注目選手と言えば、大船渡の佐々木朗希を置いて他にはいないでしょう。

WBSC U18では血マメの影響でわずか1イニングのみの登板となりましたが、高校生史上最速となる163キロの速球は何よりも魅力。190センチという長身から投げられるとプロの打者でも手こずることは必至で、春先から“令和の怪物”として多くのプロ野球ファンの注目を集めてきました。この秋のドラフト会議でも1位指名が競合することはほぼ間違いないとされています。

ところが、佐々木が在籍した大船渡高校はこの夏、県大会決勝で花巻東に惨敗。佐々木は在学3年間、甲子園には縁のないまま高校生活を終えることになりました。いくらすごい球を投げられるという投手でも全国大会で投げたことがないというのは大きなマイナスになるでしょう。

しかし、プロ野球の歴史を紐解くと、甲子園未出場でドラフト1位指名を受けた高校生投手は数多く、しかも競合指名を受けた選手も2名いるほど。そんな未完の大器ともいうべき選手とはいったいどんな選手だったのでしょう。
 

江夏豊(大阪学院大学高-阪神ほか)

プロ野球史上シーズン最多奪三振の記録を持つ江夏豊。中学時代は野球のほかに砲丸投げや相撲などをしていたという異色の経歴の持ち主でしたが、高校入学後は野球に専念。制球力に乏しいところがあったために変化球を一切教わらなかったという現在では考えられないプロセスを踏んでいますが、エースとして成長。しかし、高校野球界屈指の激戦区である大阪府において決して強豪ではない高校にいたことでなかなか勝ちに恵まれず、最高成績は高校3年生時に出場した府大会のベスト4でした。

ところがプロのスカウトたちは江夏の砲丸投げ仕込みの重いストレートと打者との駆け引きに長けた投球術を高く評価。結果的にドラフト会議時は阪神のほかに巨人など合わせて4球団が競合しました。

阪神に入団後の江夏はストレートしか投げられなかった1年目からいきなり12勝を挙げて主戦投手の仲間入りを果たすと、カーブを覚えた2年目の68年には25勝を挙げて最多勝を獲得。この年に記録したシーズン奪三振記録401はいまだに更新されていない大記録として燦然と輝いています。

河内貴哉(国学院久我山-広島)

1999年に史上2人目となる指名を受けたのが国学院久我山のエース・河内貴哉。ずんぐりむっくりの体型だった江夏とは異なり、河内は180センチ代後半の細身な投手でした。

スリークォーター気味のフォームから放たれるコンスタントに140キロ台を出すストレートと、切れ味抜群のスライダーを組み合わせることで三振を量産。いつしか「和製ランディ・ジョンソン」と称された河内でしたが、東東京都大会決勝では日大三高と対戦した際は味方のミスに足を引っ張られる形で敗れ、とうとう甲子園大会には無縁のまま高校3年間を終えました。

迎えたドラフト会議で河内は広島、中日、近鉄との3球団競合での1位指名。広島が交渉権を獲得してそのまま入団します。当然未来のエースとして大きな期待を寄せられましたが、04年に8勝を挙げてオールスターゲームに出場した以外は慢性的に故障に見舞われ、プロ入り通算で16勝しか挙げられずに15年に現役を引退しました。
 

佐々木朗希は史上3人目の選手になるか!?

いかがでしたか? 片や名球会入り投手、そして故障に泣かされた苦労人と両極端な成績が出ていますが、いずれもオールスターゲームに出場した経験を持つなど、一定の成績を残したとも考えられます。

ドラフト会議では1位指名で競合となることが必至と予想される佐々木朗希。まだまだ気の早い話ですが、プロ入り後にどんな成績を残すか…佐々木の今後に注目しましょう。

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