アジア初開催となるラグビーW杯が9月20日に開幕する。日本代表の強化は、どのように進んでいるのか。中心選手は誰? そもそも、実力はどの程度なのか。W杯でどこまで勝ち上がれば、成功と言えるのか。W杯にまつわる基礎知識を整理しておこう。
ベスト8入りなら「成功」
ラグビーW杯は1987年から4年に一度開催され、今回が9回目となる。過去8大会の優勝国はニュージーランドが3回、南アフリカとオーストラリアが2回、イングランドが1回となっている。
4年前のW杯で、日本は南アフリカを初戦で破る大番狂わせを演じた。W杯では91年の第2大会以来、実に24年ぶりの勝利だった。その後もサモアとアメリカを下して3勝をあげたが、南アフリカ、スコットランドに次いでプール3位に終わった。サッカーなどのグループリーグに相当する組み分けを、ラグビーではプールと言う。
アジア初の開催となる今回は9月20日に開幕し、国内12会場で全48試合が行われる。サッカーでおなじみの札幌ドーム、東京スタジアム(味の素スタジアム)、横浜国際総合競技場、小笠山総合運動公園エコパスタジアム、神戸市御崎公園球技場、東平尾公園博多の森球技場などに加え、釜石鵜住居復興スタジアム、花園ラグビー場などが熱戦の舞台となる。
参加国は20で、5カ国ずつ4つのプールに分かれて総当たりで争う。各プールの上位2カ国が、決勝トーナメントへ進出する。
開催国の日本はプールAに属し、アイルランド(ワールドランキング3位、以下同)、スコットランド(7位)、サモア(17位)、ロシア(20位)と対戦する。11位の日本はサモアとロシアから勝利を奪い、アイルランドかスコットランドのいずれかを下して2位以内を確保したい。
スコットランドとは16年に、アイルランドとは17年にテストマッチを2試合戦い、いずれも連敗に終わった。しかし、11年と15年のW杯に出場した堀江翔太は、「プール戦の全試合に勝って準々決勝へ進みたい」と話す。彼だけでなく選手たちは、「アイルランドかスコットランドのどちらかに勝つのではなく、両方倒したい」と口を揃える。
日本代表の薫田真広強化委員長は、史上初の「トップ8以上」を目標に掲げる。準々決勝まで勝ち上がれば、日本は国際的にも評価される成功を収めたと言えるだろう。
6月から8月末まで継続的に強化
日本代表は2月から合宿などを行ない、6月の時点で42人に絞られている。6月からは国内で合宿を続け、その間にパシフィックネーションズカップ(※)でフィジー、トンガ、アメリカと対戦し、8月下旬までほぼ休みなしで強化を図っていく。
W杯に出場するチームは31人で構成され、8月下旬に決定する見込みだ。その後は9月6日に南アフリカとテストマッチを戦い、同20日の開幕に備えることになっている。
42名のメンバーで、中心となるのは15年W杯の経験者たちだ。PR(プロップ)の山下裕史、HO(フッカー)の堀江翔太、LO(ロック)のトンプソン ルーク、FL(フランカー)のリーチ マイケル、No.8のアマナキ・レレイ・マフィ、SH(スクラムハーフ)の田中史朗、SO(スタンドオフ)の田村優、WTB(ウイング)の福岡堅樹、FBの松島幸太朗らだ。
4年前のW杯で時の人となった五郎丸歩は、日本代表に選ばれていない。16年から17年春まで海外でプレーしていたこともあり、日本代表のジェイミー・ジョセフ監督の構想には含まれていないのだ。ちなみに、トップリーグのヤマハ発動機ジュビロの選手として、33歳の現在も現役は続けている。
ラグビーの各国代表には、その国の国籍を取得していなくても、3年間継続して居住していれば代表資格を有する。ラグビー日本代表に、カタカナ表記の選手が多いのはこのためだ。
ラグビーW杯の大会公式キャッチコピーは、「4年に一度じゃない、一生に一度だ。ONCE IN A LIFETIME」である。W杯は4年に一度ずつ開催されているが、日本がすぐにまたホスト国になるとは考えにくい。
選手にとっても、観客にとっても、「一生に一度」と成り得る興奮と感動が、9月20日から11月2日の決勝戦まで、日本を包んでいくのだ。
※環太平洋の世界ランキング第2グループによる国際大会。フィジー、サモア、トンガ、カナダ、アメリカ、日本が属しており、19年は各国が3試合ずつを戦う。