6月のキリンチャレンジカップとコパ・アメリカに日本代表は別々のチームで臨む。前者は海外クラブ所属の主力が、後者は東京五輪世代が中心。どちらのチームにも選ばれているのが冨安健洋だ。20歳のセンターバックは日本代表に欠かせない存在となりつつある。
ベルギー移籍で急成長
1998年11月生まれの冨安は、アビスパ福岡の育成組織からプロデビューを果たした。2017年には堂安律(フローニンゲン/オランダ)や久保建英(FC東京)らとともに、U-20(20歳以下)W杯に出場する。センターバック(CB)のレギュラーとして、チームのベスト16入りに貢献した。
2018年1月には、ベルギー1部リーグのシントトロイデンへ移籍する。ロシアW杯後の2018-19シーズンでは、開幕戦からスタメンに名を連ねる。188センチのサイズを生かしたハードかつクリーンな守備と、攻撃の起点となるパス能力を評価され、日本代表には昨年9月に初選出された。
日本代表の森保一監督は、ロシアW杯レギュラーの吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)を最終ラインの中心とし、そのパートナーに冨安を指名する。冨安は指揮官の期待に応え、今年早々のアジアカップでは吉田とともに最終ライン中央を支えた。
南米選手権では守備のリーダーに
もっとも、アジアカップには昌子源が招集されていなかった。ロシアW杯で吉田のパートナーを務めた彼は、鹿島アントラーズからトゥールーズ(フランス)へ移籍したばかりだったため、クラブでの活動に専念できる配慮がなされた。
南米最強の代表チームを決めるコパ・アメリカに、日本は20年ぶりに招待参加する。しかし、この大会には吉田も昌子も招集されていない。冨安はロシアW杯のメンバーだった24歳の植田直通(セルクル・ブルージュ/ベルギー)とともに、守備を統率する立場になる。日本代表での出場経験がない22歳のGK小島亨介(大分トリニータ)や19歳の大迫敬介(サンフレッチェ広島)が出場すれば、彼らにも目配せをしていかなければならない。
ブラジルを舞台とするコパ・アメリカでは、日本時間6月18日午前8時からチリと、同21日午前8時にウルグアイと、25日午前8時にエクアドルと対戦する。チリにはアレクシス・サンチェス(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)、ウルグアイにはルイス・スアレス(バルセロナ/スペイン)とエディンソン・カバーニ(パリ・サンジェルマン/フランス)がいる。3人ともにヨーロッパのビッグクラブに所属する世界的なFW(フォワード)だ。エクアドルにはヨーロッパのクラブでプレーするFWがいないものの、個人のクオリティが高いのは間違いない。
南米の強豪国のストライカーを封じ、日本を勝利へ導くことができたら──冨安の評価は確実に上がる。推定900万ユーロ(およそ10億9千万円)の市場価値は跳ね上がり、それでもシントトロイデンに獲得を打診する連絡が届くだろう。まだ20歳の冨安は、投資する価値の高い“優良銘柄”だからだ。
冨安にはすでにドイツ・ブンデスリーガの複数クラブが、興味を示していると報じられている。6月の日本代表でのパフォーマンス次第では、誰もが知っているビッグクラブからもオファーが届くかもしれない。