サッカー海外組。そう言われると華々しい代表選手達の姿が頭に浮かぶだろう。しかしJリーグや日本代表で活躍したわけではなく、身体1つでアジアや東欧などに飛び、テストを受けて海外で契約を勝ち取る選手も数多くいる。久保木優もその1人。大学卒業後Jリーグ入りは叶わず、タイリーグを経て2017年、オーストラリア2部に移籍した。
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オーストラリア2部ってどんなリーグ?
オーストラリア2部はいわばセミプロ。他で仕事をしながらプレーしている選手も多い。単年契約ではあるが年俸のようなものはなく、出場給、勝利給で生計を立てる。試合に出なければ無給だ。
移籍した年、シーズン22試合で12得点を挙げた久保木も1年で契約満了となり、シーズンオフの間にまた新たなチームを探すことになる。これもローカル海外組の宿命の闘いだ。
日本人がいない、その国のトップリーグを求めて
タイ3部、オーストラリア2部でプレーする中で久保木は「日本人がいない、その国のトップリーグでプレーしたい。」と考えるようになった。そこで挙がったのがウズベキスタンだ。
現地に飛べるか?との連絡をもらい即座に航空券を予約。なのに、その半日後「見るに値しない選手だ」と話は立ち消えになった。それでも何かチャンスがあるかもしれないとウズベキスタンに飛んだ久保木に対し、着いて早々代理人が告げた言葉は「明日、試合だよ」。そこから5日で3試合をこなした。
ここが本当にトップリーグ?
ウズベキスタンでは契約を勝ち取ることはできず、新たなチャンスを求めてインドネシアへ。ここでも契約には至らず、さらに流浪の末契約を勝ち取ったのがインド1部リーグのミネルヴァパンジャブFCだった。インド1部であるIリーグ王者で、アジア王者を決めるACL出場も狙えるチーム。ただトレーニング環境は過酷なものだった。
オフは2ヶ月で1日ほど。4時起きで朝練の日があったり、グラウンドではなく、車、犬、猿、蛇、牛に気をつけろと言われて田舎道を延々走らされたりした。毎日の食事は3食ともクラブの食堂で食べることを義務付けられており、遠征の日は夜7時出発にも関わらず午前中に集まりチームで3食食べてから向かうそう(もちろん3食カレー)。もちろん個人の時間もない。ヨーロッパ系のプレーヤーはその環境に耐えかねて数日で帰国してしまったそうだ。
インドでも起こった誤診
そんな中久保木は膝を負傷。医者の診断は靭帯損傷で全治3ヶ月だった。ただ過去に靭帯を断裂した経験があるだけに診断結果が腑に落ちない。チームメートから「あのドクターはクラブの息がかかっている可能性がある。他の医者にも診てもらった方がいい」との進言を受け、他の医者にも診てもらう。
診断を受けた6人の医師全てから靭帯は切れてないと聞かされた。チームからも靭帯は切れてないのだから2ヶ月で復帰しろ、と迫られ両足共にまともに蹴れない状態で復帰。結果的にパフォーマンス不良を理由に解雇、帰国することになった。その後日本で診察を受けた結果、靭帯断裂、全治8ヶ月の重症だった。6人の医師全員が誤診をしていたのだ。
これからの展望
2019年5月、久保木は靭帯の手術を受けて復帰を目指している。またそれと同時に、セカンドキャリアに向けても動き出し、個人レッスンや海外での経験を生かした講演会を行うなど精力的に活動。今後、自分のように実績はなくとも海外に挑戦したい日本人プレーヤーを応援する仕事をしていきたいそうだ。