別れた不倫相手が亡くなったと知ったとき
2016年、上方落語界の重鎮である桂文枝に、演歌歌手との不倫騒動が巻き起こった。演歌歌手は20年間、愛人関係にあったと告白したが、あれから3年、41歳となった彼女が3月に自室でひとり病死していたとFRIDAYが報じた。それを記者から聞かされた文枝は絶句したという。
悔いは残るけれど
別れた不倫相手が亡くなったと知ったとき、「なんとも言えない気持ちでした」と話すのは、ミホさん(40歳)だ。20代後半から30代にかけて6年間、同じ会社の既婚男性とつきあっていた。
「結局、妻にバレたということであっさり関係を解消されました。子どもが成人したら結婚しようと言っていたのに……。当時は彼を恨みましたよ。会社の人事部あてに手紙を出して事情を説明、慰謝料を請求したりもしました。だけど結局、彼に逃げ切られました」
33歳で別れ、気持ちが落ち込んで精神科にもかかった。会社を辞めざるを得なくなり、事情を知った友だちには非難された。住んでいたマンションの家賃も払えなくなって、一時期は生活保護も受けていたという。
「自分だけが転落していく。そんな気持ちでした。彼への恨みの手紙はときどき自宅や会社に出していましたが、反応はなし。せめてひとこと、『ごめん』という言葉がほしかっただけなんですが」
実家の両親には話せなかった。その後、彼女はとあるNPOとつながり、自分の他にもいろいろな生きづらさを抱えている人がいると知って、少しずつ立ち直っていった。
やっと仕事も見つかって
38歳のとき、ようやく心身ともに「ひとりでがんばれそう」な気がしてきた。仕事も見つかり、新たに引っ越した先の大家である高齢女性とも親しくなって助けてもらうことができた。
「ここから再スタートを切ろうと思ったとき、前の会社の知り合いから、彼が亡くなったと聞いたんです。私は彼の“その後”をまったく知らなかったけど、彼は結局、離婚して財産も根こそぎ失い、会社も辞めたんだそうです。小さな会社に転職してアパート住まいだったけど、急病で亡くなった。週末に亡くなったようで、発見されたのは3日後だったとか」
そんなことなら連絡をくれればよかったのにとミホさんは思った。同時に、別れた彼を追いつめたのは自分かもしれないとも感じた。
「私はひとりで苦しんでいたと思っていたけど、彼は彼でその後は大変だったんだと知って、なんとも言えない気持ちでした。15歳年上だったんですが、健康が取り柄みたいな人だったはずなのに」
とたんに精神的に不安定になり、カウンセリングを受けるようになったが、仕事だけはなんとか続けている。
「不倫なんかするからいけないんだというのはわかっています。ただ、あのときの彼と私の関係は本当に愛情で結ばれていたと信じたい。一方で、やはり愛した人が亡くなった事実は重いです。しかも私が原因かもしれないと思うとよけいに……」
手ひどくフラれて彼女自身も人生が狂った。そして彼も。不倫に限らず、恋愛にはこうした非情な側面もある。