むしろ「別居婚」を楽しんでいる⁉
婚姻届を出したものの、その直後に夫が転勤。以来10数年、別居したままの結婚生活を続けている女性がいる。「寂しくないの?」と10人中9人が聞いてくると彼女は笑う。
たまに会うから新鮮
ノゾミさん(45歳)が結婚したのは33歳のとき。相手は学生時代の友人で、30歳の時に再会してから友だちづきあいが復活、その1年後に交際に発展した。
「私はあまり結婚願望もなかったんですよね。当時、仕事がおもしろくなっていたし、両親も姉も離婚しているので、結婚に対していい印象をもっていなかった」
だが、彼は結婚を望んでいた。好きなら結婚したいと思うのが当然だというのが彼の持論だった。彼女も自分の気持ちを伝えた。
「それでも彼が熱心なので、じゃあ一度くらい結婚してもいいかな、と思って」
ところが結婚した直後、彼が転勤となった。彼女は少し慌てたが、彼は「いいじゃん、別居で」と言い放つ。
「彼のほうが結婚したがっていたのに、別居でもいいってどういうこと、と今度はこちらが妙に一般的な感覚を持ち出したりして。混乱しましたね。ふたりで話し合った結果、私が仕事をやめて彼についていくことに意味がないということに落ち着きました。一緒に暮らせるようになるまで別居でいいということに」
別居婚の始まりだった。
「最初は私が東京、彼が九州だったので遠かった。月に1回くらいしか会えませんでしたけど、会うとドキドキするのが新鮮でした」
子どもが生まれても
34歳のとき、別居のまま出産。ノゾミさんは都内に母も姉もいるので、どちらかが手伝ってくれる体制をとった。
「それぞれひとり暮らしなんですよ。うちは同居を嫌う家系なのかしらと思うくらい(笑)。子どもを保育園に預けるようになってからも、母か姉がフォローしてくれました。夫もけっこう頻繁に帰ってきていました。2歳になるころ長野県に転勤になったので、毎週末帰宅して」
だがその後も、夫は大阪、札幌などに転勤。現在はまた大阪にいる。
「子どもと夫は毎日、スマホで顔を見ながら話していますし、月に2、3回は会えますからね。今度、おとうさんと会うときは何をしよう、と一生懸命考えている。夫もいつも一緒にいるわけではないから逆に濃密な時間を過ごそうとしています。別居婚だからってそんなに問題があるとは思っていません」
逆に今後、一緒に暮らすようになったらどうなるのだろうと考えることもある。
「子どもと私とふたりだけの生活ができあがっていますからね、ここにうまく夫を組み込むことができるんだろうか……。夫にそう言ったら『オレも不安だよ』って(笑)。そのときはそのとき、また新たに考えようと話しています」
毎日同じ家に暮らせば、それで家族という形が完成するわけではない。時間は短くても、彼女が言うように「濃密な関係」を築ければ、それがその家のスタイルとして定着していくのではないだろうか。