パート主婦の微妙な立場……
今や共働きが6割を超えているが、特に40代半ば以降は子どもの成長もあって仕事をする主婦は7割以上。そんな中、友人の発言をきっかけに「私は仕事をしていると言ってはいけないのか」と困惑する女性もいる。
「配偶者控除に非課税って、無職と一緒でしょ」
学生時代の友人たちと会おうと日程を調整しいているとき、ナミさん(47歳)は、思わぬ言葉を浴びせられたという。
「みんな仕事をしているから、なかなか日程を合わせるのがむずかしいね、とグループメッセージで書いたら、バツイチ正社員の友人が個別のメッセージで『あんたはパートでしょ。しかも夫に養われている身。仕事をしているって言い方はどうなんだろ』と送ってきて。パートだって仕事でしょと思わず返したけど、それ以来、彼女とはぎくしゃくしています。うちはまだ学費がかかるし、少しでも家計の足しにとがんばって働いているのに、あんな言われ方をすると傷つきます」
時給だろうか月給だろうが、報酬を得ているならそれは仕事であると考えるのか。夫が配偶者控除を受けていて本人が非課税であれば、「無職」なのか。ここは「自分自身の認識やプライド」も絡む問題なのかもしれない。
「昔は専業主婦がパートに出れば、エライわね、がんばっているわねと言われたかもしれませんが、今はパート程度の仕事でエラそうにするなと言われてしまう。うちの夫も、身勝手な用を頼んでくるので私が『明日は仕事があるから』というと、『パートのくせに』と言ったことがあるんです。それ以来、夫のことはまったく信頼できなくなった。フルタイムで働いて税金をおさめないと“仕事をしている人間として認めない”風潮はなんとかならないんでしょうか」
ナミさんの怒りはよくわかる。
とことん話し合うか、気にせず無視するか
現実的な問題として、こういう差別的な発言をする友人がいる場合、どう対処すればいいのだろうか。
「私だったらその友人、そういうことを言う夫ととことん話し合いますね」
そう言うのは、やはりパートで働くシホコさん(44歳)。正社員と同じような仕事内容なのに時間を区切って働いているだけで下に見られるのは看過できないし、そういう人を友人とは言えない。せめて認識を改めてもらうよう働きかけたいと彼女は思っている。
ただ、前出のナミさんは、友人や夫との話し合いは避けた。
「パート先の友人とも話したんですが、みんなそんな理不尽なことを言われたことがあるみたいなんです。いちいち反応してたら身がもたないわよ、ただでさえ忙しいのにストレスを抱えちゃダメ、と言われました。それも一理あるな、と。誰かが認めてくれなくても、私が仕事をしているのは真実なんだから、他人がどう思おうと関係ないと開き直るしかないのかも、と今は思っています」
パートで働く主婦に対する周囲の評価は、当事者がどんなにがんばっても変えられないのかと言われれば、そんなことはないだろう。ただ、そこに当事者が他者の認識を変えるために注がなければならないエネルギーを考えれば、誰もがそれほどヒマではないはず。
「ただ、夫の認識だけは変えたいですね。夫だって会社でパートさんと一緒に仕事をしている立場なんですから」
ナミさんは、少し暗い表情でそう言った。「仕事」を巡る考え方は千差万別。ただ、そこに差別的な感覚があるとしたら、それは当事者にとっても周囲にとっても不幸なことではないだろうか。