44歳で結婚したとたん、目標が見えなくなった
「結婚したい」と強烈に願い、「願えば叶う」「がんばれば思い通りになるはず」と一生懸命に生きてきた女性がいる。彼女の願いは叶い、ついに44歳で結婚した。ところが結婚したとたん、目標が見えなくなってしまったとか。今の彼女の心境とは。
結婚しない人生なんてあり得ないと思っていた
「みんな結婚していくのに私はできない。子どもの頃から、おそらく誰よりも結婚したいと願っていたのに。それが叶えられないのは自分の努力が足りないからだと思い込んできました」
トモミさん(45歳)は小さな声でそう話した。表情も暗い。有名私大卒、大手企業に勤めている彼女だが、思いとは裏腹になぜか縁遠かったのだという。
「就職してすぐはいい男がいないかなとキョロキョロしていました。でもそんなことが許される会社でもなく、仕事でかなりしごかれて。そのおかげで仕事がおもしろくなっていった。でもずっと結婚のチャンスは狙っていましたよ。合コンやら結婚相談所やら友だちの紹介やら。いろんな機会があったし、つきあうところまではいくのに結婚には至らない。35歳になったときはもう絶望的な気持ちでした。私の人生に“結婚”は必要不可欠だったから」
つきあって3ヶ月もたつとすぐに結婚という言葉を男性にぶつけていたという。結婚が前提でなければもうやめると自分から別れたこともある。彼女はなぜそこまで結婚にこだわっていたのだろうか。
「ひと言でいうと、みんながするから。親からも『仕事もいいけど結婚しないと一人前じゃないからね』とずっと言われてきました。私もそうだと思ってた。だけど現実は、私が結婚の話を出すと逃げていく男ばかりでした」
自分の努力が足りない。彼女はジムに行ってプロポーションを保ち、エステで肌を磨き、習字や英会話も学び続けた。
44歳でついに「既婚者」に
30代後半、偶然出会った男性と恋に落ちた。彼はぐいぐいと押してくるタイプ。男として魅力的だった。彼女が自分の中のオンナを強烈に意識した瞬間でもあった。この人は運命の人だと思ったという。ところが婚約するなり、彼が借金を申し込んできた。彼女は理由も聞かずに婚約を解消した。
「そんな男はろくでもない。恋に浮かれた自分がバカだったと反省しました。やはり結婚は勢いでするものではない。そこで再び結婚相談所に入会、じっくり相手を選び始めたんです」
お見合いやらパーティーやら、彼女はせっせと足を運んだ。そしてようやく出会ったのが、結婚した彼だ。5歳年上、バツイチだがひとり息子ももう成人していて結婚に支障はない。
「ある程度社会的地位もあるし経済的にも余裕がある。バツイチではあるけど、誰からも結婚してよかったねと言ってもらえるような人だなと思ったんです。私の意見もきちんと聞き入れてくれるし。遜色ない相手だと思いました」
盛大な結婚式を挙げた。周りも祝福してくれた。それなのに彼女は今、毎日が楽しくないのだという。最初はマリッジブルーかと思っていたが、1年たっても気持ちは上がらない。
「私にとっては結婚が人生の目標になっていたんでしょうね。それが達成されてしまったから、すべてが終わりみたいな気分なんです。子どもをもてる可能性も限りなく低いし、彼との関係でも楽しいことがあるわけではない。常識的な人だから信頼はできるけど、常識的な人だからこそ予想外の楽しさはないんです。彼のほうもそんなに楽しくないんじゃないでしょうか」
結婚さえすればすべてよしというわけにはいかないのだ。あれほど望んでいたのに。人間の気持ちは一筋縄ではいかないものらしい。