インターネットやセルフプロデュースが加速し、SNSでつながる時代、平成。コンプライアンスや視聴者ニーズ、視聴スタイルの変化によってドラマが描くテーマや描き方は多様化してきた。ここでは平成ドラマの特徴をひも解いていこう。
1.変化する働き方と闘う女性を描くドラマ
恋愛、結婚、そして仕事を通して自分探しをテーマとした昭和から、働く環境が大きく変化し、女性たちの視点が社会全体へと広がったのが平成。
初期のドラマは幸せを恋愛にのせる傾向にあるが、『きらきらひかる』(平成10年)では強気な監察医たちが個性豊かに人生を謳歌、『カバチタレ』(平成13年)では正義感と活きのよさで社会に切り込み、2010年代から女性の働き方は大きく変わる。憧れから共感へ、登場人物への思いも変化していくのだ。
後半にかけて、常に何かと闘っている彼女たち。その相手も様々だ。最高視聴率27.4%をマークした『Doctor‐X~外科医大門未知子〜』(平成24年〜)は、「vs.男社会」のわかりやすい設定。働き方の多様化とプロ意識を実感できた『ハケンの品格』(平成19年)では既成概念と闘い、登場人物をヒーロー化しない『アンナチュラル』(平成30年)ではとして不自然死と闘っている。
2.リアリティを追求して新しいエンタメへと昇華した刑事ドラマ
事件捜査への熱い想いとチームワークで事件を追った昭和の刑事ドラマから、平成はネゴシエーター、プロファイラーといった専門家の活躍をリアルに描くものへと進化した。主人公の推理をじっくり堪能できる『古畑任三郎』(平成6年〜)で描かれたチームの結束力と情熱に頼らないクールな視点や、組織のあつれきを新鮮に描きスペシャリストが登場した『踊る大捜査線』(平成9年〜)における働く現場のリアリティやスピンオフ、映画化といったエンターテインメントしてのテレビドラマのあり方は、以降の刑事ドラマに影響を与えている。
インターネットの普及で犯罪は複雑化し、劇場型も増加。それに伴い『緊急取調室』(平成26年)や『CRISIS~公安機動特捜隊捜査班~』(平成29年)など警察組織における少数精鋭の現場が描かれるようになった。時代性の強い問題に挑む『相棒』(連ドラは平成14年〜)など社会性の強いドラマも奮闘している。
『ガリレオ』(平成19年〜)や『99.9-刑事専門弁護士-』(平成28年〜)といった刑事ドラマではない謎解きの作品が科学の視点を重視しているところも特徴的。リアリティを取り入れながらスリリングに仕上げる手腕は平成流と言えるだろう。
3.大躍進した個性派深夜ドラマ
チープな印象があった深夜ドラマは、今や快作ぞろい。本格的なアクションで深夜ドラマを変えた『SP 警視庁警備部警備課第四係』(平成19年)、ゆるさが心地いい『バイプレイヤーズ』(平成29年)、男性の恋心を明るく見せた『おっさんずラブ』(平成30年)など深夜ドラマは文化と呼んでいいだろう。
4.パワーアップした大河、朝ドラ、月9、日曜劇場
1話完結の名作が並ぶ日曜夜9時のTBSは「日曜劇場」として平成14年に連続ドラマをスタート。勧善懲悪の世界観と現代社会をマッチングさせた池井戸潤原作の『半沢直樹』(平成25年)は「倍返し」の名文句や圧倒的なヒールの登場で大人気に。
平成初期、恋愛ドラマの王道だったフジテレビの「月9」は、時代劇やミステリーなどテーマを広げることで、再注目され、宮藤官九郎のコミカルな脚本が新鮮だった『あまちゃん』(平成25年)や俳優陣の個性が光った三谷幸喜脚本の『真田丸』(平成28年)など、「朝の連続テレビ小説」や「大河ドラマ」も時代を加味し、みごとにブラッシュアップしている。
令和時代のドラマがはじまる!
ドラマは誰もが人生を省み、希望や勇気を受け取れる身近な存在である。人間を描くドラマが衰退することはないだろう。またインターネットが進化するものの、リモコン操作の簡易性は高齢者社会において需要が高いこと、一度に群衆を巻き込みうねりを生むテレビ瞬発力や爆発力はまだ代替えがきかないことから、テレビドラマには、まだまだ可能性がある。新しい時代も期待したい。