離婚後、痛烈な孤独に苦しむ40代男性
離婚した女性はおおむね活動的になるものだが、男性はそうはいかない。初めて知る痛烈な孤独感にさいなまれ、子どもたちに会いたいと涙目になる人も多い。
何がいけなかったのかわからない
大学時代からつきあい、28歳で結婚して18年たったところでいきなり妻から離婚届をつきつけられたのはマサカズさん(48歳)。離婚して2年がたつ。
「理由はいまだによくわかりません。ただ、もうあなたとはやっていけない、と。確かに家庭は妻任せの部分が大きかった。子育てだってちゃんとやったとは言えません。でも、私は一生懸命働いてきた。イヤなこともたくさんあったけど、会社を辞めずにがんばってきたのは家族がいたからです」
この言い分、一昔前なら通用しただろう。だが今はそうはいかなくなっている。夫も家庭の一員、家庭にきちんと参加しない夫は「家族ではない」も同然なのだ。
「子どもたちの学校行事には極力、行ってましたよ。妻や子どもに横暴な言動をとったこともないと思うんです」
それでも妻は、夫から抑圧されていたと言った。当時17歳になっていた長男、15歳の長女も母親の味方だった。
「私はもともと口数が多いほうではありません。それが妻には、いつも不機嫌なように映っていたんでしょうか」
サービス業という仕事がら、週末に休むことがなかなかできなかったから、確かに家族にとって「いいおとうさん」ではなかったのかもしれない。だがサービス業についている父親が、みんな妻から三行半をつきつけられるわけでもない。
子どもたちに会えないつらさ
妻は4年前、実父からの遺産を受け継いだ。そのころから妻の態度が変わってきたとマサカズさんは言う。
「これで離婚しても食べていけると思ったのかもしれません。ただ、私は私なりに子どもたちを愛しています。たまには子どもたちに会いたい。だけど妻は、子どもたちが会いたがっていないという理由で会わせてくれないんです」
小さな子ではない。彼らに意志があれば、父親に会いに来ることも可能だ。
「そうですよね。結局、私は子どもたちに愛されていない父親だったということなんです。それがわかったのもせつなくてつらくて」
ただ、絶望するにはまだ早い。今後、子どもたちがもう少し大人になったとき、一方的に離婚をつきつけた母親に不信感を抱くこともあるだろう。あるいは両親を客観的に見られるようになるかもしれない。
マサカズさんに話を聞いてから数ヶ月後、息子から連絡があったと報せがきた。
「今度、息子と夕飯を一緒に食べることになりました。息子も19歳。今後のことを相談したい、と」
彼からのメールはこんな言葉で結ばれていた。
「ようやく生きる希望がわいてきました」
離婚後の男性とひとくくりにすることはできない。離婚後、何をどう考えるかは個人差が大きい。ただ、マサカズさんは離れた子どもと連絡がとれたことによって、ようやく少し前向きになれたようだ。