厳しい気象条件の中で勝ち抜いた選手は?東京マラソン2019を振り返る

3月3日、東京マラソン2019が開催され、37,951人のランナーが東京の街を駆け抜けました。その大会の様子を振り返ります

3月3日、東京マラソン2019が開催され、37,951人のランナーが東京の街を駆け抜けました。


3月1日のプレスカンファレンスでも選手たちが気にしていた気候ですが、予報通りの雨でした。気温はスタート時5.7℃、観戦者にとっては肌寒く、選手たちにとっても厳しい気候だったのではないでしょうか(バイクで並走していた早野レースディレクターによると、過去1番冷えた。自身も防寒をしっかりしたが、指先・足先から身体の芯まで冷えきったとのこと)。
 

浅草・雷門前で先頭集団に食らいつく大迫傑選手、佐藤悠基選手、中村匠吾選手(撮影:All About 編集部)

世界記録、日本記録の期待が高まった男子マラソンは、ペースメーカーが2時間3分台のペースで先頭集団を引っ張りました。MGC出場権獲得済の大迫傑選手(ナイキオレゴンプロジェクト)、佐藤悠基選手(日清食品グループ)、中村匠吾選手(富士通)はこのペースに果敢にチャレンジ。結果には繋がらなかったものの、尾方貢日本陸連専務理事は「気象条件は厳しかったが、国内で世界のペースに挑戦できたのは良かった」とのコメントも残しています。

 

銀座を走る第二集団には堀尾謙介選手や藤川拓也選手の姿が(撮影:All About 編集部)


レースは21kmすぎで先頭集団がばらけ始め、上述3選手はペースダウン。30km以降はビルハヌ・レゲセ選手(エチオピア)、ビタン・カロキ選手(ケニア/横浜DeNA)の争いとなりましたが、レゲセ選手が2時間4分48秒で優勝しました。


日本人トップ争いは、25km過ぎに第二集団から追い上げを見せた堀尾謙介選手(中央大学4年)が35km付近で佐藤選手をかわし、日本人トップへ浮上。終盤、今井正人選手(トヨタ自動車九州)が猛追するも、日本人トップの5位を死守しました。
 

なお、大迫選手は28km過ぎで棄権、「スタート地点から寒くなって、身体が動かなくなり、棄権せざるを得ない状況でした」と東京マラソン財団を通してコメントを発表しています。
 

各部門の優勝者は

各部門の優勝者は以下のとおりです。

  • マラソン男子優勝……ビルハヌ・レゲセ選手(エチオピア)
  • マラソン女子優勝……ルティ・アガ選手(エチオピア)
  • 車いすマラソン男子優勝……マルセル・フグ選手(スイス)
  • 車いすマラソン女子優勝……マニュエラ・シャー選手(スイス)
  • 10kmマラソン男子優勝……佐藤樹選手(福島県)
  • 10kmマラソン女子優勝……佐藤華ルイーズ選手(福島県)
車いす男子マラソンの入賞者。左から2位ダニエル・ロマンチュク選手、1位のマルセル・フグ選手、3位のエレンスト・バンダイク選手(撮影:All About 編集部)
車いすマラソン女子で入賞した選手。左から2位のタチアナ・マクファーデン選手、1位のマニュエラ・シャー選手、3位のスザンナ・スカロニ選手(撮影:All About 編集部)
男子マラソンの表彰式の様子。左から2位のビダン・カロキ選手、1位のビルハヌ・レゲセ選手、3位のディクソン・チュンバ選手(撮影:All About 編集部)
女子マラソンの表彰式の様子。左から、2位のヘレン・トラ選手、1位のルティ・アガ選手、3位のシュレ・デミセ選手。エチオピア勢が表彰台を占めました(撮影:All About 編集部)

 

大学生がMGC出場権を獲得!

(左から)MGCを取得した今井正人選手、堀尾謙介選手、藤川拓也選手、神野大地選手(撮影:All About 編集部)

東京マラソン2019は、2020年の東京五輪の出場選手を決めるための大会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」(2019年9月15日開催)の出場権がかかるレースでもありました。今回は新たに、堀尾謙介選手(中央大学4年)、今井正人選手(トヨタ自動車九州)、藤川拓也選手(中国電力)、神野大地選手(セルソース)の4人がMGCへの出場権を獲得しました。なお、現役の大学生がMGC出場権を獲得したのは初めてのことです。


日本人トップでゴールした堀尾選手だけでなく、東京マラソンでは学生ランナーの奮闘も目立ちました。
 

サイモン・カリウキ選手(日本薬科大学)は2年連続の学生1位でフィニッシュ(タイムは2時間9分41秒でした)。國司寛人選手(名古屋大学)は2時間15分59秒、初マラソンの堀合大輔選手(駒澤大学)は2時間18分00秒でした。女子も川戸希望選手(京都産業大学)が2時間38分43秒と健闘しました。未来のマラソンランナーとして期待が高まります。
 

東京駅前にてゴールする市民ランナー(写真 ©東京マラソン財団)

東京マラソンには、倍率12.1倍を勝ち抜いた多くの市民ランナーも参加しており、東京マラソン財団によると出走者は37,951人で、完走したのは率は94.3%の35,794人だったとのことでした。
 

世界との差はまだまだある……

今回の東京マラソン2019では、気象条件が厳しく、タイムは期待されていたものではなかったかもしれませんが、堀尾選手のような若手が台頭し、今井選手と神野選手の復調。さらには好調と言われていた藤川選手の躍進もありました。


ただし、前述の通り、表彰台を占めたのは海外勢。「トップはこの条件でも1km3分を切っている。寒い中でああいう走りをするのは世界トップ。2分台の選手だと思っている。2時間2分台の力がなければ4分、5分のタイムは出ない」と瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーが語っていたように、世界との差はまだまだあるなと実感させられた大会でした。
 

来年はどのようなドラマが生まれるのでしょうか? 注目してみてみると良いかもしれません。

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