日本代表でチームの象徴的存在と言ってもいい背番号「10」を着けたことのある香川真司、中島翔哉、乾貴士の3人が、ヨーロッパの冬の移籍市場で揃って新天地を求めた。彼らは何を思い、何を目ざすのか。
最高のデビューを飾った香川
昨年のロシアW杯で日本代表の背番号10を背負った香川真司が、1月末にドイツのドルトムントからトルコのベシクタシュへ半年間の期限付きで移籍した。直後の2月3日にいきなりリーグ戦に途中出場すると、2ゴールの鮮烈なデビューを飾ったのである。
前所属のドルトムントでは、事実上の戦力外となっていた。とはいえ、まだ29歳である。キャリアの円熟期に差し掛かっているなかで、これ以上の停滞は避けたかったのだろう。スペインやフランスのクラブへの移籍も噂されたなかで、香川はトルコへ進路を取った。
イスタンブールに本拠地を置くクラブでは、熱烈な歓迎を受けている。ドイツにはトルコ系の移民が多く、ドルトムントでの活躍が当地にも響いていたのだろう。
デビュー戦後もリーグ戦に出場している。復活への足音は、確実に大きくなっているようだ。
10年の南アフリカW杯後から、香川は日本代表の背番号10を背負ってきた。エースの称号とも言うべき番号の重みと責任は、その胸に深く強く刻まれている。昨夏のロシアW杯を最後に遠ざかっている日本代表のために戦う決意を、ベシクタシュで育んでいるに違いない。
周囲を驚かせた中島の選択
香川が不在の日本代表では、中島翔哉が背番号10を背負ってきた。ロシアW杯後の森保一監督の就任とともに定位置をつかんだ彼は、今冬に周囲が驚く選択をする。ポルトガル1部のポルティモネンセから、カタール1部のアル・ドゥハイルへ4年契約で移籍したのだ。
先日のアジアカップで、カタール代表は初優勝を成し遂げた。2年後のW杯開催へ向けて強化を進めているが、イングランドやドイツへの移籍も噂された中島である。ヨーロッパよりレベルの落ちるカタールへなぜ移籍したのか、との指摘は絶えなかった。
他でもない中島自身は、努めて前向きだ。リーグについては「アル・ドゥハイルも含めてていねいにパスをつなぐ攻撃的なチームが多く、日本的な要素とヨーロッパ的な要素がうまく融合されています」と話しており、新天地でのプレーに意欲的である。
カタールリーグはアジアカップ開催に伴う中断を経て、2月14日から再開された。中島は16日のリーグ戦に先発出場し、後半終了間際までプレーしている。背番号10を着ける24歳の日本人選手は、カタールでも成長し続ける姿を見せていくだろう。
乾はアラベスから捲土重来を期す
中島がケガで出場を辞退したアジアカップで、日本代表の背番号10を背負ったのは乾貴士だった。スペインのベティスで出場機会の限られていた彼も、今冬の移籍期間に同じスペインのアラベスへ期限付きで移籍した。
アジアカップ期間中に取材に応じた乾は、「ベティスに半年しかいなかったのは、周りの人から見たら、何て言うんですか、批判される方も多いと思います。それもしかたないと思います。ただ自分自身にとっては、アラベスからの話はホントに有り難かった」と話していた。
日本代表が決勝で敗れた直後には、自分を責めた。そして、決意を新たにした。
「チームにまったく貢献できなかった。追加招集で呼んでもらって、10番を着けさせてもらって、不甲斐ない結果で大会を終えてしまった。すごく責任を感じていますし、申し訳ない思いがあります。でも、この悔しさを味わったことで、チームでまた頑張って呼ばれたい思いが強くなった。新しいチームでしっかり試合に出て、レベルアップして、日本代表に戻ってポジション争いができるように頑張りたいです」
スペインで3チーム目となるアラベスでは、2月11日、17日と2試合連続で先発出場している。このまま定位置をつかめば、アジアカップの悔しさを日本代表で晴らすチャンスも巡ってくるに違いない。
日本代表は3月にテストマッチを予定している。その時、森保監督は誰をメンバーに選び、誰が背番号10を着けるのか。新天地で申し分ないスタートを切った3人のチャレンジは、ここから熱を帯びていく。